同じ床レベルにリビングやダイニング、キッチンが配置されるのがプランとしては一般的ですが、敷地条件や家のつくりによっては、床に段差をつけて目線をコントロールしたり、空間にメリハリを出したりする手法が取られることがあります。
「ピットリビング(ダウンフロア)」もそのひとつ。他のスペースよりも床レベルを下げてつくったリビングのことで、リプランの取材先でもときどきピットリビングを素敵に取り入れたお住まいに出会います。
家族や友人たちとの団らんに最適
こちらの家に暮らすのは、Sさんご夫妻とお子さんとSさんのお母さん。親族が集まる機会も多いことから、リビングを囲むように段差に座ることができて団らんしやすいピットリビングを採用したといいます。ピットリビングは、一段下がることで生まれる空間の「こもり感」が心地よく、家族や友人などの大切な人たちとの距離を縮めてくれそうです。
天井が高く感じられて開放感UP
このリビングのために造作したソファの座面と、1階の床レベルを合わせて、リビングに集う人たちの目線が合うよう工夫しているのもポイント。また床の高さが低い分、天井がより高く感じられて開放感が増すというメリットがあります。ちなみにリビングの床はダイニング・キッチンよりも35cm下げているそう。ピットリビングの段差の高さは30cm前後が多いようです。
段差がベンチやソファ代わりに
Sさんの家のピットリビングの床には、毛足の短いグレーのじゅうたんが敷き込まれていましたが、こちらのMさん宅のピットリビングは、段差も含めてすべてじゅうたん敷き込みに。
アレルギーへの懸念から一時期敬遠されていたじゅうたんですが、最近は新素材の開発が進んで選択肢が増えていることや、やわらかくて足ざわりがいいことなどから、部分的に住まいに採用するケースもちょこちょこ見られます。
座ったときの感触はもちろん、寝転がっても気持ちよさそう。段差がベンチ代わりになるのは、大きな魅力ですね。特にじゅうたん敷きならソファのようにも使えて便利です。
空間にメリハリが出せる
札幌市の建築家、阿部直人さんの自邸もピットリビングを採用しています。「ダイニングやキッチンなど他のスペースよりも床レベルを下げて視線を意識的にずらし、コンパクトながらも広がりと奥行きが感じられるようにしました」と阿部さん。ピットリビングにしたことで、空間にメリハリが生まれました。
壁側はベンチのようなつくりで、その下は収納スペースにも。床レベルを下げたことで、階段下空間も有意義に使えます。
知っておきたいピットリビングの注意点
さまざまな魅力のあるピットリビングですが、注意しておきたいポイントがいくつかあります。
◎家づくりやメンテナンスの注意点
・建築コストが割高になる
・バリアフリーの観点から長期優良住宅に認定されない場合がある
・つくりによっては床下点検がしにくい構造になる
◎暮らしのなかでの注意点
・お掃除ロボットが使いにくい
・すみっこにホコリが溜まりやすい
・段差でのつまづきのリスク
・リビングの模様替えがしにくい
空間デザイン的にも、使い勝手の面でも特有の魅力があるピットリビング。メリットと注意点を自分たちのライフスタイルや性格、家づくりのなかの優先順位などに照らし合わせながら、検討してみてくださいね。
(文/Replan編集部)