先の記事「変形地だからできた!自分たちらしい家」でもお伝えしたように、一見難アリな変形地は、実は個性あふれる自分たちらしい家づくりにつながる可能性を秘めています。リプランでもこれまで、たくさんの変形地に建つ住宅を取材してきました。今回は、狭小だったり多角形だったりする変形地に建つ4つのお住まいをご紹介します。


【狭小】
敷地はたったの13坪ほど。
スキップフロアで連続する3階建て

■延床面積/71.92㎡(約21坪)
■家族構成/夫婦

Mさんご夫妻がインターネットで見つけたのは、落ち着いた住環境が人気のエリアにあるわずか約13坪の小さな土地。利便性が良く、このエリアの相場からすると割安な価格は申し分なかったものの、当初は「あまりにも小さすぎる」とスルーしていました。しかし試しに現場に行ってみると「意外と建てられるかも」と思えて、建築家に家づくりを相談しました。

見つけたのは約13坪ととても小さな土地。敷地いっぱいに建築し、3階建てにして床面積を確保した

そうしてでき上がったのが、この3階建てです。各階層をスキップフロアでつなぎ、階段の踊り場を部屋にするという無駄のない設計で、居住スペースを確保しました。限られた敷地面積ながら、光井戸を設計に取り入れて通風と採光を確保。プライバシーに配慮しつつも大きな窓があることで、心地よく明るい伸びやかな住まいになりました。

玄関から下がるとある半地下スペースには、洗濯室とクローゼットを。階段下空間に洗濯機を置き、干して、そのまま収納。換気設備も設けた
階段の踊り場を部屋にしたスキップフロアの住まい。壁から窓までの幅は2mほどというが、縦にも横にも視線が抜けるためか、コンパクトながらも圧迫感は感じられない

階段に沿うように設けた大きな窓の外を光井戸にしたことで、陽の光が入り風が遠る
スペースを有効利用して造作した浴室。使うときだけカーテンを引いて仕切る
屋上に設けたテラスは、視界を遮るものがないプライベート感あふれる空間
屋上に設けたテラスは、視界を遮るものがないプライベート感あふれる空間

■設計/アカサカシンイチロウアトリエ
■施工/S・建築製作所(株)
<Replan北海道 vol.106>

【狭小】
21坪の狭小地に建つ、快適でゆとりある住まい

■延床面積/79.75㎡(約24坪)
■家族構成/夫婦30代、子ども1人

Yさんご夫妻の建築地は、某遺跡の外堀沿い、準防火地域にある約21坪の狭小地でした。狭小で防火対策も必須と、設計的にもコスト的にもかなりの制限が強いられる状況。そこで建築家が考えたのは、自然光を採り入れ、防火袖壁をデザインして裏手を流れる外堀の水路からの涼やかな風を生かす住宅でした。

西側の外観は、窓のないソリッドなデザイン。形状のシンプルさが際立つ
東側は、敷地形状に沿って斜めにデザインされている。防火袖壁により、開口部は非防火設備となった。夏は用水路から心地よい風が流れ込む

屋上テラスのある2階建ては、スキップフロアでつながる縦長のつくり。1階から2階の天窓までの階段室を兼ねた吹き抜けがチムニー効果を呼び起こし、暑い夏も近くの水路をわたった涼やかな風が1階の掃き出し窓を通って上へと抜けます。家自体はコンパクトながら、リビングの窓辺の造作ベンチや眺望の良いテラスなど、日常を豊かにする仕掛けも随所に散りばめられています。

ダイニング・キッチンから東側を見る。吹き抜けを介してスキップフロアで連なる各階層に光が射し込む
天井からの明るい自然光が、吹き抜けを通して各空間を照らす
下から上までの縦長の吹き抜けは、チムニー効果で外からの涼しい風を室内に呼び込む
眺望のよい最上階のテラスは、物干しスペースとしても活用

■設計/一級建築士事務所SATO+
■施工/共栄ハウジング(株)
<Replan東北 vol.54>

【狭小】【多角形】
五角形の敷地を生かした都市型コートハウス

■延床面積/95.39㎡(約28坪)(小屋裏収納含まず)
■家族構成/夫婦30代、子ども1人

緑豊かな環境を望みつつも職場へのアクセスを考え、利便性を優先したNさんご夫妻が見つけたのは、変形五角形の土地でした。広さは約40坪。決して広くありませんがご夫妻は「小さくてもいいから庭がほしい」と熱望します。その想いを汲んでデザインされたのが、家の一部に中庭を取り込んだような五角形の住まいでした。

住宅密集地の一角にある土地は、変形五角形で広さは約40坪。庭までを外壁でぐるりと囲んで、外からの視線を遮っている

五角形という敷地の特徴を生かし、玄関からリビング方向、キッチンから庭方向など、対角へ向けて奥行きが感じられるよう視線をコントロールして設計。住宅密集地の一角とは思えないプライベート感と緑溢れる中庭、伸びやかな住空間が家族を心地よく包みます。広くなくても緑のある暮らしは楽しめる。そんな家づくりの好例でもあります。

玄関に入ると対角となる奥のリビングへ視線が抜ける。庭側は全面窓で空間が広々とした印象に
キッチンから庭の眺望にも対角を生かして奥行き感を持たせた。プライベート感と緑あふれる中庭が、ご家族を心地よく包む
五角形の土地形状に合わせて間取りも、中庭を含む変形に設計されている
2階は可変性のあるつくりに。可動式のユニット家具を置いてゾーニングしている。奥はご主人の書斎

■設計/(有)TAO建築設計
■施工/(株)藤井工務店
<Replan北海道 vol.114>

【多角形】
外に閉じ、内側に大きく開く。
光庭が心地よい住まい

■延床面積/132.18㎡(約40坪)(車庫含む)
■家族構成/夫婦40代、子ども1人

古い住宅が並ぶ地区ながら、最近は開発も進む利便性の高いエリア。その一角、交通量の多いT字路の角地にSさんの家は建っています。敷地面積は40坪弱と小さめなうえ、周囲からの視線にも配慮する必要がありましたが、奥さんの希望は「視界が遮られず、回遊性があって、カーテンなしで暮らせる家」でした。

五角形の敷地に合わせてデザインされた五角形の白い箱のような家。三面は道路、二面は住宅に接している

建築家が提案したのは、通りや住宅に面した外壁にはほどんど窓を設けない一方で、屋根を三角形にくり抜くように光庭をつくる設計。外からは閉じていますが、内側には大きく開いていて、カーテン要らずのリビング・ダイニングを実現しています。各ゾーンはスキップフロアで緩やかにつないで、空間を縦方向にも有効活用。街の中にありながら、静かな時間の流れと季節の移ろいを感じられる住まいとなりました。

勾配屋根の不規則さが、この家のかたちを物語る。家で囲むように設けた光庭が、室内に光と風を届ける
外からの視線を気にせず過ごせる光庭はウッドデッキで、さまざまに使える
室内空間はスキップフロアでつながる。最上階には家族のワークスペースと子ども室を配置した
唯一閉じた空間としてSさんが希望したキッチン。回遊動線で玄関・ダイニングとつながる

■設計/蟻塚学建築設計事務所
■施工/(有)長谷川工務店
<Replan青森 vol.4>

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(文/Replan編集部)

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2019年12月28日(土)発売

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