将来の猛暑と大雨の激化に備えた 敷地選びと家づくりを
もちろん、人類が温暖化排出ガスをゼロにできた最善シナリオであるRCP2.6では、温度上昇や降水量の増加も穏やかな範囲に抑制できています。しかし大変悲しいことに、昨今の国際情勢を見ていると、この最善シナリオを人類が達成できるのか、とても楽観的にはなれません。
地球温暖化への取り組みをさらに進めるべく努力するのはもちろんですが、もはや将来の深刻な温暖化を前提として、敷地選びと家づくりによる「自己防衛」をせざるを得ない時代に入ってしまったといえるでしょう。
寒冷地こそ温暖化への備えを万全に
特に、従来は夏の気候が穏やかだった北海道・東北といった寒冷地では、猛暑や大雨への警戒が不可欠だと思います。従来、寒冷地では冬への備えは熱心に取り組まれていたものの、夏への備えは軽視されがちでした。それどころか「温暖化は北海道にはプラスだ」とか「暖かくなれば北海道が日本一のコメどころになる」などというトンデモ発言まで聞かれたものです。
しかし近年になり、毎年蝦夷梅雨が発生して湿度が上がり、従来は少なかった蚊やシロアリの被害が広がってくると、そうした冗談も聞かれなくなりました。前述の通り、寒冷地こそ温暖化の影響は深刻になると予測されています。現在の「夏ノーガード」を改め、夏の暑さと大雨にしっかり備えた敷地選びと家づくりが、寒冷地こそ求められているのです。
洪水への備えは敷地選びで 暑さと大雨は家づくりで
夏の暑さと大雨が厳しくなると仮定して、具体的にはどのように対応したらよいのでしょうか。
大雨で洪水や土砂崩れといった大規模な自然災害に対しては、建築的対策ではどうにもなりません。洪水や土砂崩れのリスクが少ない、安全な敷地選びがなにより肝心です。よい敷地を確保した上で、夏の暑さと大雨に備えた家づくりというのが王道です。
ハザードマップで安全な敷地を選ぶ
国土交通省では、自然災害リスクを地図上で分かりやすく表示してくれるハザードマップを、ネット上で無料で公開しています(図5)。洪水浸水や津波浸水・土砂災害のリスクが明確に分かりますし、土地条件や活断層、明治期の湿地帯・大規模盛土造成地の分布も確認できます。
昨今の自然災害は、従来からの住民が歴史的に避けてきた場所に新たに造成された住宅地で、多く発生しています。土地勘がない場所に敷地を求めるのであれば、不動産業者にまかせっきりにせず、自分でハザードマップを確認することが肝心です。
自然災害の激化により、現状の堤防などの治水では抑えきれない大雨が発生することを想定し、なるべく安全な敷地選びをすることが今後は必須となります。
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