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Q 内装材からの松ヤニ

質問者/神奈川県・Swako
記事No.11246/カテゴリ:設備や内装一般

内装材からの松ヤニについて相談させてください。1年半ほど前に家を新築いたしました。完成直前から松ヤニが出始め、現在は玄関枠、窓枠、柱、クローゼット扉枠、天井、階段手すり等、あらゆるところから松ヤニが出ています。酷いところは汗のように松ヤニが噴出してベトベトです。蜜のように大きく垂れているところもあります。かなりの部分に米松が使われています。

ベンガラ塗装を特徴としている設計士に建築を依頼しました。木材の発注も設計士がしています。一年点検の時に対処を要望したところ、設計士は一度薬剤を持って来て一部分を拭き取りました。が、きれいに取れず、ベンガラも剥がれてしまったので、作業を止めてもらいました。その後は、作業を中止されたので、これ以上責任はないと回答してきました。また、松ヤニが出るのは自然なことだ、とも言ってます。

松ヤニの範囲はどんどん広がっており、手や服に触れるところもありますし、非常に困っています。天井にもたくさん松ヤニの粒が見えているので、そのうち垂れて来るのではと心配です。(天井は天井板がなく梁が見えるデザインです)

この様な内装材を使用することは、材木を発注した設計士、あるいは松ヤニ処理がされていない木材を仕上げ材として納品した材木屋の瑕疵には当たらないでしょうか? どの様に松ヤニの処理をすればよいのでしょうか?

また、ローコスト住宅の構造材に松ヤニ処理をしていない米松を使うこともあると聞いたのですが、我が家はそれなりの代金を支払っています。しかも松ヤニが出ているのは内装材からです。ご回答よろしくお願い申し上げます。

A:回答者/(株)福地建装/HQ住宅研究所 ファース本部 福地 脩悦

松ヤニ処理は、木材を高圧窯で蒸して乾燥させると殆ど出ません。しかし強度的なしなやかさなどを考慮して脱脂をしないで乾燥木材にしたものもあります。本件は脱脂していない木材だと思われますが、瑕疵責任を負わせる事案ではありません。

それにしても写真では、とてもダイナミックな松ヤニぶりです。この松ヤニは、場合によって垂れ落ちる事もありますので百均で販売している爪のマニキュア除光液が便利です。綺麗に拭き取ることができます。

松ヤニは松材の特性でもあり、その表情を楽しむ施主さんもおります。垂れ落ちる前に除光液で拭き取ることをお薦めします。

本住宅は松材の素材特性を活かした設計コンセプトになっているようです。施主にこのような松材の特性や設計コンセプトを充分に理解していただかなかったことは、提案者の大きな落ち度だったと思われます。心中はお察しいたしますが、活性する松材の特性であり2年過ぎると出てこなくなります。

質問者より

ご回答ありがとうございます。除光液で取れるということですね。ただ、松ヤニは広範囲に出てきておりまして、天井の梁などは高いので足場を組まなくてはなりません。業者に依頼しなくては無理だと思います。また、設計士が持ってきたヤニ除去剤ではベンガラ塗装もとれてしまいました。再度塗装も必要となってきます。除光液では塗装は取れずに松ヤニのみ取れますか?

a-1:回答者/現場監督A

少し重複しますが、ヤニをとるにはシンナーなどの溶剤で落とすとよく落ちやすいというか溶けやすいですが、木を傷めて退色させてしまう場合もあります。アルコールで拭くと退色はしにくいですがヤニを溶かす効果はシンナーほどではありません。除光液もアセトンという溶剤の入ったものとアルコール系のとあるので、たぶん百均のはアルコール系だと思いますが。何にしてもベンガラは取れたり薄くなったりしてしまうので再塗装は必要になるでしょうね。

写真を拝見するとかなりヘビーですね。オイルステイン塗装をされているんですかね? ウレタン系のクリア塗装をした方が少しは抑えられると思うのですが、艶具合などの意匠と、木の呼吸などの自然素材の部分を残したいという趣旨なんでしょうね。ちょっとソースは見つからなかったのですが、ヤニは乾燥が進むと出てきやすいです。乾燥材が多いのでここまでのものは見たことがありませんが、室内の環境によっても出てきやすいにくいがあると思います。室内が比較的湿度が高い状態ですとヤニは出てきやすくなるので、洗濯物の室内干しなどはできるだけ避けたり、洗面所などはどうしようもありませんが。

無垢材や自然素材は体に良いなどのメリット以外に、虫が出やすい、変形しやすい、などのデメリットがあるわけですから、その辺の事前説明が足りなかったのではと私も思います。

あ、すいません。オイルステインじゃなくベンガラですよね。失礼しました。意味合いは同じです。

質問者より

ご丁寧なご回答有難うございます。再塗装は必要となりそうですね。そうすると、家中養生もしなくてはなりませんし、簡単には行きそうもありません。困りました。

疑問に思うのは、なぜ松ヤニ処理をしていない米松を多量に内装材として使用したのかという点です。他の無垢材にはないメリットが米松にはあるのでしょうか? 価格でしょうか?

自然素材の日本伝統の家を造るというコンセプトの設計士で、材木も適切なものを選ぶのだと思っていました。 設計士の勧めに従い、ベンガラ塗装をする予定になっていましたから、ヤニがでてきたら、困った状況になると想定できたと思います。ベンガラも本物を使うということで、設計士が老舗塗料店に発注しました。

そこまでこだわったのに、その塗装をはがすようなことは避けたいはずだと思うのです。

ベンガラで黒く塗装するのですから、木目とか質感とか、こだわる必要も却ってなかったのではと思います。手や服が触れる窓枠、クローゼット枠、柱、階段手すりに至るまで、米松を使う理由はなかったと思いますし、むしろ使ってはいけなかったのではと思います。

松ヤニ処理をしていない米松を内装材に使うことは、べつに珍しいことではないのでしょうか? ご意見いただけましたら有難いです。

a-2:回答者/現場監督A

心中お察ししますが、作業をするしか方法はないと思います。そのためにも気持ちをどうにか納得させたいですよね。

米松は主にプレカット工場などは構造材の梁材に使われることが多いですね。その際にも福地先生の言われるような乾燥処理をしますが、それでも現場でヤニが出たり、完成後に小屋裏に行くとヤニがでていたりします。そういうものです。内装材に使う理由は様々だと思います。硬さだったり柾目の模様だったり。内装材に使う場合も乾燥材でしょうから、その辺は出荷証明で確認できます。価格なら栂とかスプルスを使うと思います。

原因はなんなのか? 同じコンセプトの他の家はどうなのか? そこに違いはないのか? 聞いてみては。自然素材、伝統、そして松ヤニ、どれを最優先するかですが、その辺の事前説明に不備があったのでは。


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