火災に弱い発泡断熱材による付加断熱工法

今から30年ほど前に、発泡断熱材による外張り工法が北海道で開発されました。GW断熱工法の住宅がなかなか計算どおりの性能が発揮できなかったのに対して、外張り工法はきちんと性能が出て、コストは高かったのですが、暖かい快適な住宅が可能になり普及し始めました。その後、私たちがGWの高断熱工法を発表し、コストが安く、同じ性能が実現することとなり、外張り工法は北海道から姿を消しました。

発泡断熱材メーカーは本州で断熱材の厚さを半分にして営業活動を展開し、本州ではかなり普及しています。図1に外壁の構成を示します。50㎜の断熱材を木材で挟み付ける構成になっています。この工法が不安定だと指摘し、また図2のように内外の火災にはとても弱いことを指摘しました。

図1 外張り工法の標準形
図1 外張り工法の標準形
図2 外張り工法は火災に弱い
図2 外張り工法は火災に弱い

やがては、火災で人が死ぬかもしれないと言ってきたのですが、2006年に秋田でとうとう起こってしまいました。図3に火災を報じる新聞記事と、図4に秋田のテレビニュースのビデオからキャプチャーした写真を示します。

(左)図3 外張り工法住宅の火災を報じる新聞記事(河北新報 2006.5.19)<br>(上)図4 秋田の火災のTVニュース
(左)図3 外張り工法住宅の火災を報じる新聞記事(河北新報 2006.5.19)
(上)図4 秋田の火災のTVニュース

私は火災の後、東京大学の菅原先生(日本の建築防耐火の第一人者)に報告し、現場調査に同行させていただきました。その時に撮った写真が図5~7です。住宅は、発泡断熱材の中で最も難燃性が高いとされるフェノール発泡の断熱材による住宅で、壁40㎜外張り、屋根60㎜外張りの構成です。

図5 火災後の外観(南面)
図5 火災後の外観(南面)
図6 火災後の外観(東面)
図6 火災後の外観(東面)
図7 外張り断熱材の燃焼の様子
図7 外張り断熱材の燃焼の様子

火災の原因は、深夜この家のご主人がリビングでテレビを見ながらタバコを吸って、その不始末ではないかと言われています。私たちが外張り工法住宅では、構造用面材を必ず張ってから断熱材を張るべきだと主張していましたが、この家は、壁の断熱材は室内側からは燃えず、火災後半の窓からのフラッシュオーバーの炎が通気層から入って、外から燃焼しています。内装が壁・天井ともパイン材の羽目板だったため、天井が燃え抜けて、二重板無しの構成だったため屋根の断熱材は全て燃え尽きていました。

3年前の全焼火災の時は、北側の隣家は延焼しなかったのですが、今回は猛烈な炎で屋根鉄板が過熱して延焼してしまいました。発泡断熱材という可燃性の断熱材が、大型トラック1台分も住宅には使われます。もともと火災には弱い木造住宅に、わざわざ可燃性の建材を大量に使うべきではないと、私は考えています。

100年住宅は、Q1.0住宅レベル3を実現しよう

住み始めて約40年後、地球はどうなっているでしょうか。なかなか想像できないのですが、それでもその段階で新たな住み手を迎えて、大規模改修が行われるときに、その時の最新技術で省エネレベルを更新することができます。私は、100年住宅には、Q1.0住宅レベル3を実現すれば問題ないだろうと考えています。