窓を開けるなら、照り返しに注意!
通風を行うためには、当たり前ですが窓ガラスを開けないといけません。その窓を開けた時の温熱環境に注意をしてください。
窓ガラスの前をウッドデッキにする場合が多く見られますが、木は熱伝導率が小さいため、日射で加熱されるとアスファルトやコンクリートよりも高温になります。図9の熱画像ではウッドデッキ表面は60℃近くに達しており、ほぼ前述の「相当外気温度」になっているといえます。高温となったウッドデッキ表面からは強力に遠赤外線が放出され、いわゆる「照り返し」の原因となります。
窓ガラスを閉めている分には、遠赤外線がガラスに吸収されるため、照り返しはほとんど問題になりません。しかしガラスを開けてしまうと、網戸程度ではこの照り返しは防げません。このまま窓際に立つと、照り返しで体は過熱され、気温以上に暑さを感じてしまうのです。窓を開けて通風をしたいのであれば、窓まわりを慎重に設計する必要があります。
外構に関心を持ち、周辺環境を改善しよう
最近の街づくりでは、メンテナンスの容易さを意識してか、植栽などを少なくしてコンクリートとアスファルトで埋め尽くした外構が増えているように感じます。
図10は蒸暑地の代表で、沖縄の街並みの例です。台風を恐れてコンクリートで固められた街並みは一見清潔ですが、日射を遮るものがなく植栽も少ないこの環境では、屋外や半屋外で過ごそうという気には到底なりません。
図11は寒冷地の代表で、札幌の街並みです。こちらも積雪への配慮からか、道路が街の過半を埋め尽くし、植栽もほとんどありません。北海道といえど夏はそれなりに日射がありますから、道路の表面温度は45℃以上に達しています。涼しいはずの北海道も、これでは夏に屋外で過ごすことは難しくなります。
建物単体の高性能化・省エネ・ゼロエネは、相当なところまで到達しています。一方で、建物に閉じこもるのとは違う快適性を得ていくためには、街並みを含めたエリアでの価値を考えていくべき時代になってきているのかもしれません。
涼しさをつくり出すエリア全体での取り組み
最後に、建物と街並みを魅力的にする、野心的なプロジェクトを紹介しておきましょう(図12)。北海道南幌町で進められている、「みどり野きた住まいるヴィレッジ」です。北海道を代表する建築家と工務店がチームとなり、高性能で魅力的な住宅をつくるとともに、ゆったりと緑地を確保し緑にあふれたエリアの創設を目指しています。
図11と同じ時間、このヴィレッジのエリアは涼しく保たれたままでした。こうした周辺環境があれば、夏に冷房をつけて閉じこもるのはもったいない。テラスに出て北海道の夏を味わいたくなるというものです。建物単体ではできない、エリアとして取り組んでこそ可能となる贅沢な環境。こうした試みが全国に広がることを期待しましょう。
※次回のテーマは<WhとWで考える非常時のエネルギー>です。
【バックナンバー】
vol.001/断熱・気密の次の注目ポイント!蓄熱大研究
vol.002/暖房の歴史と科学
vol.003/太陽エネルギー活用、そのファイナルアンサーは?
vol.004/「湯水のごとく」なんてとんでもない!給湯こそ省エネ・健康のカギ
vol.005/私たちの家のミライ
vol.006/窓の進化
vol.007/断熱・気密はなぜ必要なのか?
vol.008/冬のいごこちを考える
vol.009/電力自由化! 電気の歴史を振り返ってみよう
vol.010/ゼロ・エネルギー住宅ZEHってすごい家?
vol.011/冷房を真面目に考えよう
vol.012/ゼロ・エネルギーハウスをもう一度考える
vol.013/冬の快適性を図る指標「PMV」を理解しよう!
vol.014/エネルギーと光熱費最新事情
vol.015/夏を涼しく暮らすコツを考えよう
vol.016/冬の乾燥感
vol.017/採暖をもう一度科学する
vol.018/ゼロエネルギー住宅ZEH、本格普及へ
vol.019/夏の快適性をエリアで考える
※この記事の最新話はReplan北海道&東北の本誌でチェック!
バックナンバーは下記URLでご覧になれます↓
http://web.replan.ne.jp/content/bookcart/