屋根断熱の丁寧さは、夏にこそ見える
2018年の夏、筆者も多くの住宅で屋根裏に入る機会がありました。同じように晴れた暑い昼間でも、入った瞬間にあまりの暑さに汗が噴き出る屋根裏と、暑さをあまり感じない快適な屋根裏があります。遠赤外線カメラを用いると、冬には分かりにくい屋根・天井断熱の丁寧さが、夏の昼間にはよく分かります。図5は、ある仮設住宅の冷房された部屋の天井面の熱画像です。
断熱材として天井にグラスウール100㎜が入っているので机上の性能自体はまあまあなのですが、天井の温度は見ての通り、かなりのマダラ模様です。点検口から見てみると、断熱材が隙間だらけで置かれており、屋根裏の熱が抜けてきてしまっているのがよく分かります。夏の日射遮蔽のためにも、屋根の断熱は隙間なく丁寧に施工しなければならないのです。
図6は、冷房ありの部屋と冷房なしの部屋の熱画像です。冷房ありの部屋では余計な日射熱が冷房負荷を増やし、冷房なしの部屋では天井の温度が高く極めて不快なことが分かります。
丁寧な断熱は夏も快適にする
一方で、入っても暑さを感じない屋根裏もあります。図7の屋根裏は、断熱が丁寧に行われているため、屋根の日射熱がほとんど抜けてこないので、屋根裏は快適に保たれています。屋根・天井はともすると雑に施工されがちなのですが、冬は室内からの暖気を封じ込め、夏は屋根からの日射熱を防ぐため、断熱・気密の丁寧な施工が不可欠なのです。
図8は、図7と同じ熊本の復興住宅の室内です。屋根の断熱された面が直接見えていますが、表面温度は低く保たれています。本連載でも繰り返し述べてきたように、快適な冷房のためには、室内への熱の侵入をできる限り防ぐことが絶対必要です。日射の強い夏を経て、屋根・天井の断熱の重要性を確認しておきましょう。
通風で快適に過ごすポイントとは
夏の本当に暑い時間帯には熱中症予防のため、冷房を用いることは躊躇しない方がよいでしょう。屋根や壁の断熱と窓の日射遮蔽をきちんと行っておけば、わずかな電力量で快適な室内環境をつくることは十分に可能です。一方で、窓を閉め切って冷房をつけ続けることに抵抗を感じる人もいるでしょう。
筆者は東京のマンションで暮らしていますが、外気がそれほど高温でない時は、窓を開けて通風を楽しんでいます。東北や北海道のように夏も涼しい地域では、冷房なしに通風で済ませたいと思うのは当然です。通風しやすい家(さらには街並み)の留意点を最後にお話ししたいと思います。
次のページ 窓を開けるなら、照り返しに注意!