フィンランドは、6月の夏至の日の前に「夏至イブ」というのがあって3連休になります。なのでその連休には、みんなヘルシンキから消えてしまいました。サマーコテージで夏を楽しむのでしょう。カフェもデパートも休みです。暗い冬が長い分、太陽が出ているのが一番長い日である夏至が重要で、特別なのですね。

さて少し前になりますが、5月17日から19日に「オープンハウスヘルシンキ」という、いつもは公開されていない建築を一般公開するイベントに参加して、建物を見学してきました。なかには普段から一般公開されている建築もあるのですが、設計者本人が来て説明してくれるなど、このイベントならではの特別感があります。
▶2019年のプログラムはこちら。https://www.openhousehelsinki.fi/

「オープンハウスヘルシンキ」のウェブサイト

参加費は無料。予約は必要なくて、決められた時間に現地に行けばOKです。建築ファンだけでなく、一般市民が建築に親しめるいい機会にもなっています。ちなみにこれは、世界各国で開催されているイベントでもあります。
https://www.openhouseworldwide.org/ 

今年のテーマは「ユハ・レイヴィスカ」でした。ユハ・レイヴィスカは今年83歳の建築家で、フィンランド建築界の大御所(ボス?)といった存在。特に照明づかいの美しさで有名です。建築に合わせて自ら照明をデザインします。

たぶん一番知られているのが、ヘルシンキの隣の市、ヴァンターにある「ミュールマキ教会」。フィンランドで見た建築の中で5本の指に入る、私のイチオシ建築です!もう10回以上は行っています。

ヘルシンキの隣の市、ヴァンターにある「ミュールマキ教会」
ヘルシンキの隣の市、ヴァンターにある「ミュールマキ教会」

今回はここでユハ・レイヴィスカのレクチャーがあったのですが、都合が合わず残念ながら行けませんでした…。照明と光がとても美しいです。宗教行事がないときは、一般公開しています。

今回のオープンハウスで私がぜひ見学したかったのが、障害を持つ大人が住む集合住宅KIPPARINTALO(キッパリンタロ)でした。フィンランド語で「スキッパー(船長)ハウス」という意味です。実際に人が住んでいるので、普段は見学できません。でも以前この施設のインタビュー動画を見て、障害を持つ若者が親から自立して共同生活をしている場所ということでとても気になっていたので、絶好のチャンスでした。

参加者定員は15名。予約ができないので「せっかく行っても入れないかもしれない、、」とちょっと心配しながら行ってみましたが、ラッキーなことに実際に集まったのは6人のみ。みんな同じことを考えたのかもしれません。案内してくださったのは、実際にプロジェクトに関わった2名の建築家でした。

KIPPARINTALO(キッパリンタロ)があるのは、ヘルシンキ中心部から地下鉄で15分のカラサタマ地区。今人気の新しい集合住宅が次々と建設されているエリアです。外壁にレンガを使うのは、フィンランドでは一般的です。バルコニーからは、海と近くの島がよく見えてとてもいいロケーション。この海を望むバルコニー、そして狭小ながらも各部屋の2方向に窓がある設計は、ユハ・レイヴィスカの建築の特徴です。

図面を見ると、狭い土地を最大限に生かした設計なのがよく分かります。

1階の共有スペースには大きな吹き抜けがあって、2階の共有スペースとつながっています。少しみんなから離れたほうが安心する傾向の人への配慮です。

共同スペースの一角にあるキッチン。住人がみんなで使います。各部屋にもキッチンはあります。扉には絵の表示が貼られていて、障害を持つ人たちにも分かりやすくなっています。

Museum of Finnish Architecture(フィンランド建築博物館)が、ユハ・レイヴィスカへのインタビューとKIPPARINTALO(キッパリンタロ)を紹介した動画をYouTubeで公開しています(英語字幕付き)。これを見ると、施設内や居室の様子がよくわかります。

思わずここに住みたい、、、と思ってしまう、素敵な住宅でした。