東日本大震災の地震と停電を乗り切ったリフォームQ1.0住宅
ここで一つの事例をご紹介します。写真1~3は、仙台で2008年(平成20年)にマニュアルに沿ってリフォームされた住宅です。Q1.0住宅レベル3の性能です。工法の概略を図6に示します。かなり大規模な改修で工事費は1000万円を超えましたが、暖房の年間灯油消費量は200ℓぐらいになりました。
そして、2011年3月に東日本大震災に遭遇しました。周りの家は倒壊こそしなくてもさまざまな被害を受けましたが、この住宅は全く無傷でした。一番困ったのが震災直後からの停電で、暖房・給湯はストップしました。偶然竣工時からの温度測定器を設置したままになっていたため、暖房停止状態での温度測定ができました。図7がその温度グラフです。
停電は震災後3日間ぐらいでしたが、その後も暖房がないとどうなるかを知るために、暖房は運転しなかったそうです。震災直後、朝の最低気温が0℃の日が2日続き、その後は2日間暖かくなりましたが、その後4日間寒波が来たことが分かります。室温はこの寒波の時でも15℃前後を保ちそれほど寒さを感じないで過ごせたといいます。新住協では岩手、宮城の高断熱住宅の調査も行いましたが、これほど高性能な住宅ではなくとも似たような室温分布だったことが分かっています。Q1.0住宅は、大災害時も住人を守ってくれることが実証されているのです。
大災害時の、停電、断水から生活を守るにはどうするか
2018年の北海道胆振東部地震によるブラックアウトは記憶に新しいですが、北海道では、その後太陽光発電が注目されていると聞きます。当然、夜の電気も賄うためには蓄電池も必要ですが、合わせて200万円近くもかかり、誰でも設置できるとは限りません。停電と同時に断水も起こり、北海道全域で大変苦労されたようです。私はこれに対処する方法として次のようなことを考えています。
停電時、困ることは、まずテレビやスマホの充電、夜間の照明等ですが、次には冷蔵庫です。冬、夏の暖冷房は、Q1.0住宅ならなんとかしのぐことができます。これらの電力は意外に小さいのです。1kWh以下の太陽光発電と同じくらいの蓄電池ならかなり安く設置できます。また、太陽熱給湯を設置すれば、200ℓ以上の水がタンクに常時備蓄されます。給湯設備にエコキュートを使っていれば合わせて500ℓは確保されます。
これらの設備は、普段も省電力、給湯の省エネとして大きな効果を発揮します。このような設備がワンセットで購入できる日は意外に近いのではないかと思います。