PMVゼロは当たり前 上下温度差を見逃すな

図12に低断熱・低気密住宅+ストーブ、図13・14に高断熱・高気密住宅+エアコン、図15は超高断熱・高気密住宅で無暖房の例を示しました。いずれもPMVはゼロで体全体の熱バランスはとれているわけですが、赤外線カメラで見た周辺の表面温度分布は全く違うことが分かります。また空気温度の分布から、低断熱・低気密では上下温度差が非常に大きく、足元が寒くて不快な空間であることと判断できます。逆に高断熱・高気密を極めると、あらゆる温度ムラがほとんどない異次元にノッペラな温熱環境が出現することをしっかり見ておいてくださいね。

図12 低断熱・低気密住宅×高温暖房の実例
図12 低断熱・低気密住宅×高温暖房の実例
高温暖房により放射温度が高いため、体全体の熱バランスであるPMVはゼロに近くなっています。しかし低断熱・低気密であるために漏気等が発生し、頭とくるぶしの上下温度差は6℃以上となっており、推奨の4℃を大きく超えて不快が残ってしまいます。
図13 高断熱・高気密が快適性のカギ
図13 高断熱・高気密が快適性のカギ
建物を高断熱・高気密にすることで、わずかな暖房で体全体の熱バランスを確保できるとともに、上下温度差などの局所の不快がない、本当に快適な環境を得ることができます。
図14 高断熱・高気密ならエアコン暖房も快適
図14 高断熱・高気密ならエアコン暖房も快適
温度ムラが起きやすいエアコン暖房ですが、建物の断熱・気密がしっかりしていれば、体全体の熱バランスをとりつつ局所の不快がない、十分に快適な環境をつくることが可能です。
図15 超高断熱住宅では暖房がいらなくなる
図15 超高断熱住宅では暖房がいらなくなる
ドイツのパッシブハウスレベルの断熱・気密を行うと、人体や家電の発熱だけで十分に快適な温熱環境を得ることが可能です。暖房がいらないため、温度ムラなどがほとんどない究極の快適環境が実現しています。

このようにPMVは重要な指標ですが、この指標が示す体全体の熱バランスだけで温熱環境の快適性は論じることはできません。他の局所不快も含めて、複合的に環境を評価することが肝心です。そして設備のチカラに初めから頼るのではなく、建物の断熱・気密をまずしっかり確保することが、真に快適な環境をつくる近道であることを、今一度しっかり理解しておきましょう。


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※次回のテーマは<エネルギーと光熱費 最新事情>です。

【バックナンバー】
vol.001/断熱・気密の次の注目ポイント!蓄熱大研究
vol.002/暖房の歴史と科学
vol.003/太陽エネルギー活用、そのファイナルアンサーは?
vol.004/「湯水のごとく」なんてとんでもない!給湯こそ省エネ・健康のカギ
vol.005/私たちの家のミライ
vol.006/窓の進化
vol.007/断熱・気密はなぜ必要なのか?
vol.008/冬のいごこちを考える
vol.009/電力自由化! 電気の歴史を振り返ってみよう
vol.010/ゼロ・エネルギー住宅ZEHってすごい家?
vol.011/冷房を真面目に考えよう
vol.012/ゼロ・エネルギーハウスをもう一度考える
vol.013/冬の快適性を図る指標「PMV」を理解しよう!

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