日本建築家協会(JIA)北海道支部主催の「暮らしの茶話会」へ。
「暮らしの茶話会」は、北海道支部内の住宅委員会で2019年度の取り組みとして企画されたもの。暮らしにまつわるワンテーマを用意して、建築家が自ら設計した作品のスライドレビューをしながら、参加者と自由に話し合う体験型の座談会だ。
この日はそのプレイベントとして、カンディハウス札幌ショールームで「家具と寸法」をテーマに行われた。ショールームの一角に設えられたスペースに、建築家と参加者10名ほどがランダムに座り、コーヒーを飲みながらゆるりとイベントスタート。
ヒノデザインアソシエイツの日野桂子氏は家具によって変わる部屋のイメージや、建築と同時に家具を考えることでより充実した空間になることなどをトーク。「丼ものを置いたときにちょうどいい高さになるようなテーブルの高さが、私は好きなんです」など、料理好きの日野氏ならではのエピソードも飛び出し、会場はなごやかなムードに。参加者が座っている椅子やテーブルもレビューの中にいくつも登場し、画面の中と外がクロスオーバーする体験がもたらされた。
ヒココニシアーキテクチュアの小西彦仁氏は、人間の身体のさまざまなサイズと心地よさを感じる物との距離や位置などの話から、家具のサイズや部屋の大きさなどについて解説。「部屋がどれだけ大きくても、ソファーやテーブルを置いて寛ぐスペースのサイズが比例して大きくなるわけではないので、必ずしも大きな部屋は必要ないんですよ」と説明し、氏が手がけたニセコの別荘や江別 蔦屋書店などを紹介しながら、軽妙なトークで場をなごませていた。
スライドレビューのあとは、ショールーム内をまわりながら家具を体験する時間が設けられ、説明を受けながら、各々が気になるソファに座って座面のサイズや高さによって変わる居心地を体感したり、ダイニングテーブルと椅子の高さの関係を確かめたり。建築家と一緒にソファに並んで腰掛ける参加者はリラックスした様子で、なにくれとなく話も弾んでいるようだった。
住宅委員会の委員長でこの企画の立案者である名古屋英紀氏は「『建築家』というとどうしても話しかけづらい、ハードルの高い存在に感じられるかも知れないのですが、実際にこうしてお茶を飲みながらなにげない話をすることで、身近な存在に感じてもらえるといいですね。続けていくうちに参加者の方から新たなテーマがもたらされるかもしれないし、楽しみにしています」と話す。
毎回テーマと会場を変えながら、年間4回〜5回の開催を予定。このあとのテーマとしては「キッチン」や「照明」など直接的に住宅と関係あるものから、「コーヒー」など住宅には直接関連しないけれど暮らしを楽しむ工夫につながるものまで、広く扱いながらユーザーと建築家との関係性を深めていくそう。
建築を通じて人々の「暮らし」を日々考えているプロに、お茶を飲みながら気軽に話を聞けるチャンス。年内にあと数回ありそうなので、注目したいところだ。
◎JIA北海道支部
http://www.jia-hok.org/
(文/Replan編集部)