あかあかとした薪ストーブの炎が、木づくりの暖かい小屋の中を不規則に照らし出し、ときおり爆ぜる薪の音が、夜の静寂に吸い込まれていく…。「薪ストーブ」という言葉からはそんな、しっとりと暗い山や森深くに佇む素朴な小屋の情景が連想されます。Replanの取材では、そのような薪ストーブのある暮らしの風情と、現代らしいスタイルが見事に融合した「小屋的」で素敵なお住まいにときどき出会います。今回はその中から、特に印象的な5事例をピックアップしてご紹介しましょう。
外観がまさに小屋!
見た目にカワイイ三角屋根の家
子どもがお絵かきする典型的な「お家」をそのままかたちにしたような、三角屋根のカワイイ小屋的外観が目を引く住宅。薪棚は家の側面に。玄関前のスペースが広いので、薪の搬入もスムーズ。薪割りするにも十分な広さです。
玄関ドアを開けると土間があり、そこにシンプルなデザインの薪ストーブが置かれています。玄関から薪棚までの動線が良いのも、薪ストーブ生活には大事なポイントです。キャンプやカヤックを楽しむアウトドア派のご夫妻ですが「冬は土間のストーブの前でのんびりと火を見て過ごすのが心地よくて、すっかりインドア派になりました(笑)」と、薪ストーブのある暮らしを満喫しています。
(Replan北海道vol.117 掲載)
薪ストーブを囲んで、ご近所さんと交流を。
50代ご夫婦の終の棲家
こちらは寄棟造りの三角屋根の家。ぽこっと飛び出た煙突と木の窓枠が外観をよりチャーミングな印象に演出しています。こちらも玄関のコンクリート土間に薪ストーブを置いたレイアウトです。
お施主さんは50代のご夫婦。地域の人たちとの交流を大切にしながら、最小限の好きなものに囲まれたシンプルな暮らしがしたいと思い、この家をつくったといいます。「昔おばあちゃんの家にだるまストーブのある土間があって、そこがご近所さんたちとの団らんの場であり、くつろぎの場でした」という幼い頃の記憶が、この薪ストーブのある暮らしにつながっています。
(Replan青森 vol.4掲載)
ヨーロッパアルプス山麓の
小さな山小屋のような家
木の外壁材で仕上げたシンプルで慎ましい佇まいに、質実剛健な香りが漂う平屋。緑の多い周りの景観に馴染むよう軒を低く設計していることが、「小屋感」をより際立たせています。この家も玄関に入ると広い土間があって、そこに薪ストーブが置かれています。
鋳物の薪ストーブに、深い落ち着いた茶色で塗装した木とせっこうの塗り壁、キッチンのレンガ壁…。本物の素材で仕上げられた空間は、さながらヨーロッパアルプス山麓の小さな山小屋のよう!薪ストーブを楽しむゆったりとした時間がとても似合うお住まいです。
(Replan北海道 vol.106掲載)
広さわずか19坪!
現代的なフォルムの小屋的住宅
北海道に惚れ込んで移住してきた、30代のご夫婦のための家です。広さはわずか19坪。限られたスペースが効果的にゾーニングされ、コンパクトながらも変化に富んだ伸びやかな住まいは、外観デザインも含め、まさに今の時代にぴったりの小屋的住宅といえるでしょう。
薪ストーブは玄関入ってすぐ横、キッチンの一角に設置されています。薪ストーブは調理にも重宝するので、キッチンのすぐそばに設置できると便利。北海道の長い冬も、薪ストーブ一台で十分に暖かく過ごしているそうです。
(Replan北海道 vol.114掲載)
広いピロティで薪割り。
藻岩山の麓の小屋的住宅
山を背負う敷地のため、湿気対策として1階の柱と倉庫の上に生活スペースを載せるピロティ形式でつくられた、まさに山小屋!な山麓の住まいです。そのつくりのおかげで薪のストックや薪割りの場所をたっぷり確保。しかもピロティは屋根付きの広い空間なので、天候を選ばずいつでも薪割り作業ができます。
お施主さんがこだわって採用したのは、建築家宅で見て気に入ったという鋼板製の薪ストーブ。長野県の中川村在住のイエルカさんがつくるこのストーブは、鋳物製とはまたひと味ちがったデザインと、燃やす薪の樹種を選ばない使いやすさが大きな魅力だといいます。木そのもののかたちを生かした窓枠など、クラフト感のある空間にもしっくり馴染んでいます。
(Replan北海道 vol.122掲載)
こうやって見ると、やっぱり「小屋的」住宅と薪ストーブって相性バツグンですね!緑に囲まれていなくても、住宅街の只中でも、家のつくりやデザインの仕方で「小屋的」な住まいはつくれます。それぞれの実例に散りばめられた工夫をヒントに、自分ならではの薪ストーブのある暮らしを、あれこれイメージしてみてくださいね。
(文/Replan編集部)
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