住まいは、暮らしてみてから「ここが掃除しにくい」「こんなにホコリがたまるなんて」と気づいて後悔することも。そこで今回はホコリがたまりやすい家のつくりや場所と、その対策について、インテリアコーディネーターの本間純子さんに教えていただきましょう。


チリ、ホコリ、ハウスダストの違いとは?

毎日掃除をしていても、家族が1日家で過ごせばフローリングワイパーは汚れ、掃除機には大小の不要物がたまります。掃除の度に気になるこれらは、おおよそ次のように分類されます。

名称説明
ゴミ手でつまんでゴミ箱に入れるもの
チリ(塵)ほうきなどで掃いて、ちりとりでまとめられるもの
ホコリ(埃)チリよりも小さい、粉のようなもの
ハウスダスト目に見えない大きさのホコリ

例えば紙ゴミや切れた輪ゴム、菓子袋の切れ端などはゴミ箱や分別ボックスに直行しますが、気づかずに正体が分からなくなった小さなものは、チリやホコリとなって、掃除の対象となります。

ホコリ(埃)はなぜ出てくるのか?

部屋の隅にいつの間にかあるふわふわした「綿埃(わたぼこり)」。この正体は、私たちの衣類や寝具、タオルやラグなどから抜けたり切れたりした繊維のかたまりです。

家庭のホコリのおよそ60%が繊維で、そのあとに土砂、毛髪、食物、紙片と続きます。家族構成や季節、住環境の違いはありますが、どの調査でも同様の傾向です。

ホコリは、これを餌とするダニや菌類、カビの発生を促す原因になります。目に見えないハウスダストを抑えるためには、ホコリの段階で取り除くことが重要です。

床上30㎝の「ハウスダストゾーン」とは?

一般的に人の活動時間帯である昼間は、室温の変化や人の動きによって空気が動き、それに伴って軽いホコリは舞い上がって室内を浮遊します。

夜になって人の活動が収まると、ホコリは天井や壁に付着したり、家具や床の上、建具枠や桟、棚板の表面などに落ちてたまります。なので、できるだけ効率よくホコリを取る絶好のタイミングは「朝起きてすぐ」ということになります。

また床上30㎝までは、「ハウスダストゾーン(ホコリの滞留ゾーン)」と呼ばれます。ここは常に空気が動いてる領域で、ホコリが常に浮遊しています。人や動物が暮らしている以上、室内のホコリをすべて除去することはできませんが、毎日発生するホコリを効率よく掃除して、快適な住空間を維持したいものです。

家づくりで考えておきたい
ホコリがたまりやすくて、気になる場所とは?

①階段・スケルトン階段の下

階段がある家にお住まいの方は実感しているかもしれませんが、人の行き来が多く、空気の通り道になりやすい「階段まわり」は、家の中でも特にホコリがたまりやすい場所。両脇が壁で蹴込み板がある階段は、階段の踏み板の両端にホコリが滞留してたまります。

両脇に壁がある階段は、段板の両端にホコリがたまりやすい
両脇に壁がある階段は、段板の両端にホコリがたまりやすい

その点、透け感や軽やかさが魅力のスケルトン階段は、ホコリが止まる壁と蹴込み板がないので、たまるはずのホコリが階段にとどまらず、踏み板から下へ落ちてしまいます。結果、階段下にホコリがたまることになります。

「階段下空間の有効利用」にはさまざまなアイデアがありますが、スケルトン階段を採用する家では、ホコリが特にたまりやすい場所であることを踏まえて、掃除がしやすい状態にしておくのがおすすめです。
美しく存在感のあるスケルトン階段。下が土間仕様で掃除もしやすい

②吹き抜けから見える現しの梁や窓台、カーテンレールの上

吹き抜けの梁や窓台、カーテンレールの上は、下の階からは見えませんが、位置によっては上階からホコリがよく見えて気になるかもしれません。

梁の上面が滑らかなフラット形状であれば掃除は比較的容易ですが、照明器具や配線ケーブルがあると、そこがホコリのたまり場となって何かのタイミングで塊で落ちてくることも。梁は下階の天井より高い位置にあります。掃除の時は十分気をつけて行いましょう。

このぐらいの距離感だと、梁や窓台の上を柄の長いフロアモップなどで掃除しやすい
このぐらいの距離感だと、梁や窓台の上を柄の長いフロアモップなどで掃除しやすい

カーテンレールの上は

  • カーテン
  • レール本体
  • レールを支えるブラケット

の組み合わせで複雑な形をしています。ここに光漏れを防ぐカバーをつけると、上部がフラットになり、掃除がしやすくなります。ただしレールの種類によっては、カバーがつけられない場合もあるので、確認しましょう。

基本的に吹き抜けの高い位置にある窓台や窓ガラスの掃除は、プロにお願いしましょう。ご自分での高所作業は危険です。

③ダイニングのペンダントライト

シンプルな形状のホーロー素材のランプシェードは掃除がしやすい
シンプルな形状のホーロー素材のランプシェードは掃除がしやすい

ダイニングのペンダントライトも、意外とホコリがたまりやすいです。しかもテーブルの上を照らすためにコードが長めで、シェードの表面がちょうど大人の目線付近にくることが多いので、ホコリが目立ちます。

またコードが長いからと束ねておくと、そこにもホコリがたまります。天井のシーリングソケットを隠すために付いている「シーリングカップ」の中に収めると見栄えも良く、ホコリ対策にもなります。

 
掃除のしやすさを優先するなら、
  • 形状がシンプル
  • ガラスやホーローなど表面がつるっとした素材

のシェードを選ぶと、化繊モップなどで気楽に手入れができておすすめです。

④オープンな棚

棚に適度な余白があると、掃除がしやすい
棚に適度な余白があると、掃除がしやすい
棚板の上は、お気に入りの飾りや本、日常づかいの雑貨など、こまごましたものを並べることが多いので、掃除がおろそかになりがちですが、余白があると、ものを避けながら掃除しやすいので、案外楽に手が動きます。
 
オープンな棚にはモップ掛けしやすいものだけを置き、繊細なものはガラス棚にディスプレイする、と置き場所を分けるのも、きれいに快適に暮らす方法の一つです。
 
また床に近い高さの棚のホコリ対策には「扉をつける」という方法もあります。オープン棚は、掃除のしやすさも考えながら心して設置しましょう。

⑤ダイニングテーブルやカウンターの下

ダイニングテーブルやカウンターの下は、家の中でも特にホコリがたまりやすい場所。空気の流れによって天板の下にホコリが滞って、すぐにホコリが目立ち始めます。人の動きがある使うチェアよりも、使わないチェアの周囲には特にホコリが集まります。

デザインの好みに加えて、背もたれに手がかかりやすく、軽くて持ち上げやすいチェアを選ぶと、掃除がしやすくストレスフリーです。

⑥家具の脚元、家具と壁の間

ソファやテーブル、キャビネットなどの家具の脚元にホコリはたまりがち。動かすことが難しい大物家具は、完全に床に接地するか、掃除機やお掃除ロボットが入っていける高さの脚の付いた商品を選ぶと掃除しやすいですね。

また壁と家具、家具と家具の間に隙間がなければ、ホコリが気になりません。ピッタリつけて隙間をなくす、前面合わせにして凸凹をなくすなど、家具を置く場所やサイズにも気をつけましょう。

家づくりの際のホコリ対策

①掃除しやすいつくりにする

掃除しやすいつくりにすること。これが、ホコリがたまりにくい家づくりの大前提です。次のような空間や状況をつくらないことがポイントです。

  • 狭くて掃除機がかけにくく、手が届きにくい

  • 形状が複雑で、ホコリがたまりやすい角が多い
  • 収納スペースが足りずに、物を床置きしている
  • 掃除機をかけるのに持ち上げる必要がある家具やインテリアが重い
  • こまごました雑貨をオープンな棚の上にたくさん飾る
  • テレビやパソコンまわりの配線ケーブルがたくさん露出している

ちなみにケーブルにたまったホコリは、火災の誘因になることもあります。蓋付きのケースや扉付きのキャビネットに収めると、見た目がすっきりしてお掃除のストレスも減ります。新築であれば壁の中に配線を隠すよう依頼してもいいですね。

②掃除しやすい素材や仕上げを選ぶ

凹凸のない床材は掃除がしやすい
凹凸のない床材は掃除がしやすい

木でも石タイルでも、表面に凹凸がある床材はホコリや汚れがたまりやすいです。床材を選ぶときは、凹凸の形状に注意したいところです。

またよく使われる「クッションフロア」や「ビニル系のフロアタイル」は静電気が起きやすく、ホコリを引き寄せる性質があります。ただ掃除がしやすい素材なので、掃除機やフロアモップでの掃除に加え、定期的に固く絞った雑巾やモップで水拭きすると、楽にホコリを取り除けます。

壁・天井

表面の凹凸が少ないほうがホコリがたまりにくい

壁や天井は、気づくと意外とホコリが付いていたり、クモの巣がかかっていたりすることがあります。床と同じで、表面が滑らかなほうがホコリやクモの巣などがたまりにくく、掃除はしやすいです。

凹凸模様のある布クロスや、コテむらのある塗り壁、木製ブロックのアクセントウォールなどは、滑らかな壁・天井材と比べるとくぼみにホコリがたまりやすいので、定期的に確認して気になるホコリをつまんで取り除きましょう。強くこすって掃除するのはNGです。

棚板

シナベニアなどの合板を用いた造作の棚板は、表面の仕上げによってはハンディモップなどの繊維がひっかかりやすいので注意

造作の棚板は、質感を優先してマットな塗装にすることがありますが、その場合表面の仕上がり具合によっては、化繊モップや台拭きの繊維が引っかかって毛羽立つことも。見た目を気にしないところは、クリアのウレタン塗装仕上げにすると掃除がしやすくなります。

あえてダークな色味の床を選ぶ

「床が濃い色だとホコリが見えやすくて、こまめに掃除するようになる」との声も。なお髪の毛は見えにくい

「ホコリを見えやすくすることで、掃除しやすい環境をつくる」という発想から、「あえて暗い色の床や家具を選ぶ」という方もいます。

白っぽい色や明るい色は、ホコリがあまり目立ちません。しかしウォールナットのような黒っぽい色の床や家具は、ホコリがけっこう目立ちます。見えるのでホコリのたまり具合に気づきやすく、こまめな掃除できれいを保ちやすくなります。
 
とはいえ掃除が苦手だとストレスのもとになり、インテリアの方向性にも影響が大きいため、万民に受け入れられるアイデアではありませんが、有効なホコリ対策の一つです。

③ホコリが移動しにくいつくりにする

床の段差でホコリの移動が止まりやすい

ホコリは下へ落ちるため「段差」で移動が止まります。例えば玄関土間とリビングがフラットだと、玄関まわりのホコリがそのまま室内に入ってきますが、玄関とリビングの間に少し立ち上がりをつけると、ホコリの侵入を軽減できます。

またカーペットはホコリを吸着しやすく、舞い上がるホコリの量が少なめの床材です。毎日掃除機をかけるのが習慣化できれば、ハウスダスト対策にも効果的です。ただしあまり毛足が長い敷物だと、掃除がしにくいのでご注意を。

オープン棚に置くディスプレイ雑貨は、少ない方がたまったホコリを掃除しやすくなります。ただ何をどのくらい飾るかは住む人の楽しみであり個性で、家を居心地良くするために必要な要素です。

清潔を保って気持ちよく暮らすには、掃除が楽にできることが大切ですが、そのためにマイホームの楽しみを減らすのは本末転倒です。プランニングの段階で、自分たちが許容できる掃除のしやすさを検討し、家づくりに反映させたいところです。