前回の記事、ユーザー目線で解説。「ペレットストーブ」の仕組みや使い方、費用とは?
で、ぺレットストーブの基本について解説いただいたインテリアコーディネーターの本間純子さんは、ペレットストーブユーザーになる前の30年ほどは薪ストーブユーザーでした。
そこで今回は、両方を暮らしの中で使った経験のある本間さんに、薪ストーブとペレットストーブの「違い」と「共通点」を7つのポイントから解説していただきます。
「薪ストーブ」と「ペレットストーブ」は、いずれも木質バイオマス燃料の暖房ですが、実際に使ってみると、共通項もあれば、大きく違いを感じるところもあります。
一度設置すると長い付き合いになる暖房ですので、ちゃんと知って、暮らしに合う機種を選びたい。暖かさ、使い方、メンテナンスなど、さまざまな角度から薪ストーブとペレットストーブを比較します。
薪ストーブ | ペレットストーブ | |
暖まるスピード | ◯ | △ |
暖かさの質 | ◎ | ◎ |
炎の美しさ | ◎ | ◎ |
温度管理のしやすさ | △ | ◯ |
燃料の扱いやすさ | △ | ◯ |
お湯を沸かす・煮炊き | ◎ | △ |
炉壁 | 要 (機種による) | 不要 |
炉台 | 要 | あったほうがいい |
処分する灰の量 | 多 | 少 |
年に一度のメンテナンス | 要 (使用頻度による) | 要 (使用頻度による) |
※本間さんによる主な比較
ポイント1:暖かさ
部屋が暖まるのは「薪ストーブ」が早い
遠赤外線効果による良質な暖かさは共通
薪ストーブもペレットストーブも燃料は「木」ですが、暖まり方やその速度に違いを感じます。
今、わが家で使っているペレットストーブは、簡易ペチカの煙道を使って排気しています(一般的には、煙突(排気筒)を設置します)。煙道はレンガで出来ていて、排気の熱エネルギーをレンガに伝えながら煙突に向かいます。
薪ストーブのときは、手では触れないくらいにレンガが熱くなるのが普通でしたが、ペレットストーブになってからは、薪のときほどは熱くなりません。ペレットよりも、薪の方が排気温度が高いことが分かります。
また、薪ストーブは本体の全体から熱が放出されるので、簡易ペチカが温まる前に、薪ストーブの周囲が暖まります。近くの壁や床にも熱が伝わることで、部屋全体が温まるスピードが早かったように記憶しています。一方、ペレットストーブは前面からのみ熱を出す仕組みなので、部屋全体が温まるのに薪ストーブよりも時間がかかります。
ただ共通するのは、「遠赤外線効果」による質の良い暖かさ。包み込まれるような暖かさで、体の芯から温まる感覚は、どちらの暖房でも得られます。
ポイント2:炎や熾火
炎の美しさは共通。
熾火は、薪ストーブならではの楽しみ
薪ストーブやペレットストーブに特有の魅力、それは「炎」が見えること。火が見えると暖かな感じがしますし、なぜか火のまわりに人は集います。
薪ストーブの炎は、生きているような躍動感や静かな揺めきなど、薪が燃える段階によって様子が様変わりします。炎が収まり、ちりちりと光るオレンジ色の熾火(おきび)は、薪ストーブ独特の味わいです。
それに対してペレットストーブは、機器として炎が美しく見えるように設計されているそうで、燃える炎とときどき舞い上がる火の粉が、花火のようで楽しいです。
薪ストーブの炎も、ペレットストーブの炎も、それぞれが美しく、「見る暖かさ」と言えそうです。
ポイント3:温度管理
仕組みがアナログな「薪ストーブ」
家電要素がある「ペレットストーブ」
メーカーによってはスマホで温度管理ができる薪ストーブがラインナップされていますが、基本的に薪ストーブは電子制御ができません。私が薪ストーブユーザーだったときも、入れた薪の量が多すぎたり、思いのほか燃焼が進みすぎたりして、室温がどんどん上がり、温度調整のために真冬なのに窓を開ける、といったことがよくありました。
一方で電気式ペレットストーブは、機種はそれほど多くないですが、室温センサー付きのものがあります。私が自宅で使っている「ほのか」には、室温センサー機能は搭載されていませんが、火力は4段階で調節できます。
温度計を見ながら調節するのですが、何かに夢中になってうっかりすると、室温が30℃になることも…。状況を読まなければいけないアナログ感は、薪ストーブが上ですが、機械任せにしない(できない?)不自由さはペレットにもあり、ガスファンヒーターやエアコン暖房などに比べれば、ペレットも「手間がかかる」と言えるかもしれません。
消火の方法も異なります。薪ストーブは、薪が燃え尽きたら自然消火。スイッチ一つで火を消すことはできません。一方でペレットストーブは消火ボタンを押すと5分ほどで火が消え、30分後にはファンが止まって消火が完了します。
ポイント4:燃料
「薪」の準備が大変で、ペレットストーブに切り替え
私は30年近く薪ストーブを使っていましたが、数年前にペレットストーブに切り替えました。その大きな理由は「薪の管理がキツくなったこと」でした。
薪ストーブユーザーだった頃、薪は秋にひと冬分(5〜6立米)を購入していました。室内への搬入時の重さを考慮して、細めに割ってもらっていましたが、それでもなかなかの重量でした。
また、ストックする薪は上手に積み上げなければなりません。一度、夜半にものすごい音がして「何事か!」と行ってみたところ、薪屋さんが積み上げてくれた薪が総崩れになっていたことがありました。幸い周囲に人はいなくて大事には至りませんでしたが、薪棚からすべての薪を出して、一から積み上げることに…。薪は重いので、年齢を重ねると、薪割りや積み上げ作業が難しくなります。
「ペレット」は薪よりも扱いやすく、省スペース
ペレットはひと冬分として10kg/1袋のものを200袋ほど用意しますが、薪のように積み方に慎重になる必要はありません。ストックを置くスペースも薪の1/3程度で済みます。
必要に応じて、近所のホームセンターなどで手軽に追加購入できるのも魅力です。ただ、10kgある袋を一気に持ち上げるのは私にとっては大変なので、今はあらかじめ小分けにしてから燃料タンクに入れるようにしています。おかげで扱いはとても楽になりました。
「薪」からは「虫」が出てくることがある
薪ストーブユーザーだったときに悩ましかったのが「虫問題」です。
薪は、樹皮と木部の間はいろいろな虫の卵や幼虫の居場所になっていたり、冬越ししようとする虫が休んでいたりします。その薪を屋内に持ち込むと、冬眠状態だった虫が目を覚まして、活発に動き出すのです。
薪は乾燥が進むと、自然に樹皮が剥がれてきます。そのタイミングが、虫をチェックする絶好のチャンス。薪を室内に持ち込む前に取り除くことでかなり減らせます。が、完全なシャットアウトは難しいです。意外と慣れるものでもありますが、これは「薪ストーブあるある」の一つです。
その点、ペレットは工場で加工され、袋詰めして出荷される商品なので、虫の心配はありません。ペレットストーブに変えてからは、わが家の冬の虫問題は解決されました。
ポイント5:お湯を沸かす、煮炊き
薪ストーブもペレットストーブも
煮炊きができる機種・できない機種がある
薪ストーブユーザーの頃は、常にヤカンがストーブの上にありました。いつもお湯が沸いている状態でしたから、冬の間はコンロの脇役として活躍してくれました。鍋も置けて、煮込み料理も美味しくできました。
ペレットストーブも機種によっては、ストーブトップにヤカンを置いてお湯を沸かせるものもあるようですが、今私が使っている「ほのか」は沸かせません。料理も不可です。水蒸気を発生させる仕組みがないので、加湿器を使用しています。
薪ストーブもペレットストーブも、ストーブトップで煮炊きができる機種・できない機種があるので、いずれにせよ、暮らし方や理想の使い方に合った機種を選びたいところです。
ポイント6:炉台・炉壁
薪ストーブは基本的に炉壁・炉台が必要
ただし例外も
一般的には、薪ストーブは上下左右前後すべてが高温になるため、炉壁も炉台も必要です。ただ機種によっては背面に断熱材が入っていたり、本体に「ヒートシールド」を付ければ壁への放熱を緩和できたりして、炉壁は必須ではないケースもあるので、個々に薪ストーブ専門店に確認しましょう。
ペレットストーブは、一般的に炉壁が不要
多くのペレットストーブは、熱が出るのは扉の前面と上部。両側面と背面からは熱が出ないので、この3面は燃焼中に触っても火傷をしたりしません。
そのためペレットストーブ周囲に、専用の炉壁を設ける必要はありません。床の炉台もなくても構いませんが、ペレットストーブ本体が非常に重いので、敷いたほうが安定します。また清掃時は灰で床が汚れやすいので、炉台があったほうがメンテナンスの面でもメリットが大きいです。
ポイント7:メンテナンス
薪ストーブもペレットストーブも
灰が完全に冷めてから処理をする
いずれのストーブも、木を燃やすので灰が残ります。この灰の中に火種が残っていると火災の原因になりますので、必ず蓋付きのバケツに入れて24時間以上放置し、灰が完全に冷めてからビニールのゴミ袋などに移すことが肝心です。
処分する灰の量は、薪ストーブが圧倒的に多い
薪ストーブは、1日薪を燃やしただけでもそれなりの量の灰が残ります。一方でペレットストーブから出る1日の灰の量は、ご飯茶碗1杯分程度です。札幌市の場合は、灰は「燃やせるゴミ」で処分しますが、地域によってゴミとしての扱いが異なる場合がありますので、確認が必要です。
安心・安全のため、炉内の様子は毎日確認
薪ストーブもペレットストーブも、灰の量や扉のガラスの汚れ具合など、炉内のチェックを毎日欠かさないことが、火を扱う暖房機器を安心・安全に使っていくためには重要です。
ちなみに私の日々のメンテナンスはこのような流れです。
- 20〜21時の間に消火ボタンを押して火を落とす。30分ほど経つとファンが停止し消火が完了。内部はまだ熱いため、1時間ほど放置
↓ - 炉内の温度が下がったら、燃焼状況を確認する目的で、内部の清掃を開始。灰を灰受けに落として、ガラスを磨く。煤やクリンカ(灰が溶けて固まったもの)は、こまめに取り除くと炉内がきれいに保ちやすく、掃除のストレスも減らせる
作業にかかる時間は、毎日20分程度。安心と安全のための手間ですね。
本体も煙突も、年に一度は専門業者にメンテナンスを依頼
薪ストーブやペレットストーブの使用頻度によりますが、主暖房として使うなら、年に一度、専門家にメンテナンスを依頼しましょう。
薪ストーブは特に、炉内や煙突の様子で燃やしている薪の状態や薪の焚き方の良しあしが判断できるので、導入の初年度から数年間は専門家に見てもらって、アドバイスを受けるといいでしょう。
私の家の場合、簡易ペチカとそれに続く集合煙突の清掃は毎年プロに依頼しています。簡易ペチカを掃除してくれる会社は多くないのですが、薪ストーブを諦めたときに偶然、煙突工事の会社に出会い、簡易ペチカにペレットストーブを接続する工事と、メンテナンスを依頼することになりました。
ペレットストーブの不具合もすぐに対応してもらえますので、かかりつけ医のような存在です。集合煙突と簡易ペチカの清掃は年に1度行っていますが、年によって灰や煤の量が違います。手入れを怠ると煙道火災のリスクが高まります。煙突掃除は毎年欠かせないわが家のイベントです。