「高性能住宅」が広く普及しつつある今、昔の低断熱の住宅で使われていたサイズの薪ストーブを入れると「オーバースペックで家の中が暑くなりすぎてしまう」というケースが増えています。
他の暖房機器との併用や炎の鑑賞など、用途も導入の目的も多様化する中、注目されているのが「小さめサイズの薪ストーブ」です。
そこで今回は、欧米メーカーの中でも特に小型薪ストーブのラインナップが豊富なベルギーの薪ストーブブランド「DOVRE(ドブレ)」を扱う株式会社メトスの営業本部部長・青葉紀輝さんに、小型ならではの魅力をうかがいました。
高性能住宅では「薪ストーブのサイズ選び」に注意
北海道のような寒冷地では、すでに断熱性と気密性に優れた高性能住宅が主流ですが、2025年4月からは新築住宅の省エネ基準適合が義務化されるため、いよいよ全国的に「高性能住宅がスタンダード」という時代を迎えます。
住まいの省エネルギー化や暮らしの快適さを支えることにつながる住宅性能の向上ですが、薪ストーブを導入する際には注意すべきことが出てきます。その一つが「薪ストーブのサイズ選び」です。
薪ストーブは「大は小を兼ねない」
世の中には「大が小を兼ねる」ものが多いですが、薪ストーブは例外で、「大は小を兼ねない」暖房機器です。冬の寒さが心配なのでとりあえず大型を選んで、実際は半分くらいの出力で使おうと考えても、うまく機能しません。
大きな薪ストーブの運転には相応の薪の量が必要です。少量の薪ではしっかり燃焼されないので本体が十分に暖まらず、煙突の汚れや、不完全燃焼といったトラブルにもつながります。とはいえ、適正量の薪を入れて燃焼させた場合、住宅性能や平米数によっては大型薪ストーブがオーバースペックで、室内が暑すぎるという問題が発生してしまいます。
また、この10年ほどの間に薪ストーブ自体の性能も大幅に向上しています。例えば、当社が扱うベルギーの薪ストーブ「DOVRE(ドブレ)」は、ヨーロッパの厳しい排ガス規制に対応するため、内部構造の改良がなされています。
これによって燃焼効率が高まり、煙突から排出される有害物質も大幅に抑えられるなど、その性能は10年以上も前のストーブと比べると飛躍的な進化を遂げています。
住宅性能と薪ストーブの性能が著しく向上し、住宅自体もコンパクト化の傾向が見られる昨今、新築住宅に導入する薪ストーブは「小さめサイズが最適な選択肢」となるケースが増えています。広さや住宅性能といった「住宅のスペック」に適した薪ストーブ選びが、快適なストーブライフを送るための鍵です。
小型薪ストーブのメリットとは?
メリット1:コストがリーズナブル
小型の薪ストーブのメリットとして挙げられるのが、まずコスト面です。小型の薪ストーブは当然、大型よりも本体価格がリーズナブル。少ない薪で室内を暖めるので、シーズン中の薪の使用量も抑えられるなど、コストパフォーマンスに優れています。
また、小型の薪ストーブは設置スペースが小さくて済むので、炉壁や炉台の工事範囲が縮小され、大型に比べて設置費用も安く抑えることができます。
お店にもよるので一概には言えませんが、一般的に鋳物製の大型薪ストーブはとても重いので(例えばDOVRE「760WD」は190kg)、搬入に3人以上の人手が必要ですが、小型だと120〜140kg程度と2人で搬入できるものが多く、人件費の節約につながることも。小型の薪ストーブは、お客様のイニシャルコストやランニングコストに少なからず貢献する、と言えるでしょう。
メリット2:薪ストーブに必要な空間を省スペース化
小型薪ストーブは、省スペースで設置できるのも大きな魅力です。薪ストーブを使うとなると本体の設置場所に加え、焚き付けや薪ラック、火ばさみや灰入れバケツなどの道具類をストーブ周辺に置くことも考慮しなければなりません。
特に近年は、土地不足や土地価格、建築費の高騰などの影響で、住宅のコンパクト化が進んでいます。
コンパクトな空間に大きな薪ストーブを設置してしまうと、オーバースペックによる暑さだけではなく、室内に圧迫感を与えるなど住まいの美観や暮らしやすさにも悪影響を及ぼしてしまいます。専有面積を小さくできる薪ストーブは、コンパクトな住宅で炎を楽しむためにも最適です。
薪ストーブのある暮らしの楽しみ方は多様化していて、主暖房で使うユーザーよりも、他の暖房機器と併用して使ったり、鑑賞目的で週末だけ火を入れたりするユーザーが増えています。特に観賞目的の場合は、暖房機能がそこまで重視されないので、小型で炎がより美しく見える機種が適しているでしょう。
個性豊かな小型薪ストーブを
ラインナップする「DOVRE(ドブレ)」
歴史ある専門メーカーならではの
高品質な鋳物が世界中で人気
DOVRE(ドブレ)はベルギー製の薪ストーブとして知られていますが、その歴史は1929年、ノルウェーで鋳物専門メーカーとして創業したことに始まります。
卓越した鋳物製造技術を生かして暖炉、薪ストーブの製造・販売に力を注ぎ、1972年にベルギーに広大な土地を購入。拠点をノルウェーからベルギーに移しました。以来DOVREブランドは、品質の高さ、使いやすさ、そして炎の美しさから「暖炉・薪ストーブの代名詞」と呼ばれ、長年にわたって世界中で多くの支持を得ています。
また、ドブレの薪ストーブはビスを使わずに積み木のように組み合わせて仕上げているのも特徴のひとつ。これは優れた鋳物製造技術ならではの仕組みで、メンテナンス時などに分解しやすく取り扱いも容易なので、薪ストーブ専門店からも非常に好評です。
空間のテイストに合わせて選べる!
ドブレの小型薪ストーブ
実はドブレは、小型薪ストーブのラインナップが豊富なブランドでもあります。薪ストーブらしいクラシカルなデザインから、北欧テイストのようなシンプルナチュラルな空間にもなじむデザインまで複数の機種がありますので、ここでそれぞれの特徴を少しご紹介します。
ドブレの最新シリーズ「SAGA(サーガ)101、107」
2023年に登場したSAGAシリーズは、繊細な丸みを帯びたディテールとエレガントなデザインが特長。ドブレならではの高い鋳造技術を生かした、高いインテリア性が大きな魅力です。
SAGAシリーズは小型でありながら、正面扉の大きな窓から美しい炎を楽しめます。「SAGA101」は側面に、物語「三びきのやぎのがらがらどん」のレリーフがあしらわれています。
もうひとつの「SAGA107」の注目ポイントは、本体の両側面に3つずつある小窓。正面を含め計7つのガラス窓があり、どこからでも炎の気配を感じることができます。
最近はコンパクトな薪ストーブの需要増に伴って、長さ30㎝と従来より短めの薪を取り扱うお店も増えていますが、SAGAシリーズは高さがあるので長さ35㎝の薪も使用可能。「SAGA」は、現代の日本の住宅に調和するデザイン性と機能性、炎を楽しむ贅沢さを兼ね備えた新シリーズです。
ドブレの一番人気、WDシリーズの最小サイズ「540WD」
ドブレブランドを代表し、最もスタンダードで人気のある「WD」シリーズ。その中で最小サイズの「540WD」は、小型ラインナップの中で一番採用例が多い機種です。
人気の理由は「これぞ薪ストーブ」といったシンプルながらも飽きのこない普遍的なデザイン。天板が広いのでヤカンや鍋を置くこともできます。ドブレの代表的なモデルとして長く愛され続けています。
昔のブラウン管テレビを想起させる「vintage35」
「vintage35」は、昔のブラウン管テレビを想起させる独特なデザインが特徴的な小型の薪ストーブ。丸みを帯びたコンパクトなフォルムと、大きなガラス面がひと際目を引きます。長年にわたり多くの人々に愛され続けているモデルの一つです。
家具のように空間になじむ「ROCK350TB/WB」
ROCKシリーズのデザインコンセプトは「まるで家具のように空間に溶け込む薪ストーブ」。その小型モデル「ROCK350TB/WB」は「540WD」と「vintage35」との魅力を組み合わせたようなモデルで、シンプルかつ個性的でありながら、薪ストーブらしい重厚さのある、さまざまなインテリア空間に自然となじむ機種です。
薪ストーブは設置する部屋の広さや住宅性能に適した薪ストーブを選択することが何よりも重要です。
北海道内だとドブレは「北海道リンクアップ様」が道内唯一の販売特約店となっています。ぜひショールームに足を運んでご自宅の設置環境を丁寧に伝え、プロのアドバイスを踏まえながら、最適な薪ストーブを選んでいただければと思います。
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ドブレの魅力は何といっても「鋳物の美しさ」。さすが工業先進国のベルギー、と思わせる鋳物製造技術が生かされた仕上がりで、自然な丸みを帯びたフォルムも質感も見事です。また鋳鉄の素材の質が良くて傷みにくく、分解してメンテナンスしやすい構造なので、末長く愛用することができます。 薪ストーブは暖房能力もさることながら、炎の揺らめき方も大切。ドブレの薪ストーブは炎が非常に明るく美しく見えるのが特徴で、これは鋳物が高品質な証といえるでしょう。 ドブレは実は、他ブランドと比較して本体価格もリーズナブル。薪ストーブの多くは原材料の高騰などで値上げが余儀なくされる中、ドブレは企業努力の賜物なのでしょうか、価格の変動がほとんどありません。高品質でお財布にも優しいドブレの薪ストーブは、専門店としてもお客様におすすめしやすいブランドです。 |