北海道の家づくりで特によく使われる「カラマツ」「トドマツ」「道南スギ」「ナラ(ミズナラ)」。この4つの樹種の、用途や材としての特徴・魅力などについて、道産木材を随所に生かす家づくりを実践している北海道の建築家、須貝 日出海さんに教えていただきました。
【 カラマツ 】
■主な用途
構造材、壁材・天井材(パネリング材)、フローリング、構造用合板
■建築材としての特徴、魅力
資源量が比較的多く、構造材から内・外装材まで用途が幅広い木。色は赤みがかっていて全般的に節や木目の印象が強く出るため、空間は素朴な印象になりやすいです。柾目の材を用いるとすっきりとした印象になり、上質感が高まります。
フローリング材は、広葉樹と比べると適度に柔らかく温かさを感じられます。ただ同じ針葉樹であるスギやトドマツほどはやわらかくないので、椅子の脚先が板にめり込んで凹むことが少なく、気兼ねなく使うことができます。
■塗装
フローリングは「元来の節の多さや赤みを生かして無塗装で仕上げる」と、意外と汚れや傷がなじんで目立ちません。オスモなどのクリアオイルか薄塗りの米糠オイルを定期的に塗ると、表面を保護できて乾燥の予防になり、艶が出て見た目も美しく経年変化していきます。
【 トドマツ 】
■主な用途
構造材、壁材・天井材、フローリング、構造用合板
■建築材としての特徴、魅力
北海道の自生種で、現在最も資源としての蓄積量が多い木です。カラマツ同様に、構造材から内装材までさまざまな部位で使えます。
心材と辺材の色の差が少なく、上品な黄みがかった白色の表情が特徴的。木としての主張が控えめなので、どのようなインテリアテイストにも合わせやすいです。製材時の白い木肌は、年月とともに飴色に変化していきます。
感触が優しく温かみのある木肌が大きな魅力ですが、ナラなどの広葉樹やカラマツに比べて柔らかいため、家具による凹み跡は残りやすいでしょう。
■塗装
上品な白色であるがゆえに、トドマツは日焼けが目立ちやすい材でもあります。気になる場合は、オスモウッドワックス(ホワイトスプルース)などの木目を生かす半透明着色塗料を用いて白色を薄く重ね塗りしておくことで、変色の程度を抑えられます。
【 道南スギ 】
■主な用途
構造材、壁材・天井材、フローリング
■建築材としての特徴、魅力
スギはヒノキと並んで日本を代表する建築木材の一つ。材はきれいなサーモンピンク色が特徴。本州のスギと比べて、控えめで上品な印象なので、フローリング材はもちろん、壁や天井にも用いやすいです。
また耐不朽性が高いため、外壁材としても重用されます。経年変化によってシルバーグレーになる様子も魅力です。 トドマツと同様に足触りが優しく、腰への負担がかかりにくい柔らかな材質ですが、傷や凹みがつきやすい点も考慮して選ぶ必要があります。
■塗装
道南スギは無塗装だと日焼けが目立ちやすく、ラグや家具を置くと短い期間でも日焼け跡がつきやすい材です。オイルやワックスを塗って仕上げると、ある程度変色を防ぐことができます。ただ、外壁材のシルバーグレーへの変化は美しいため、あえて無塗装にするケースもあります。
【 ナラ(ミズナラ) 】
■主な用途
フローリング、壁材・天井材、枠・建具材、家具材
■建築材としての特徴、魅力
寒さが厳しい北海道で育ったナラは木目が詰まっていて強度があり、家具や建具、フローリングに適したとても良質な木材。家づくりでは特に、フローリング材として重用されています。
ナラの色と木目によって床に重厚感と存在感がもたらされ、どんな家具ともコーディネートしやすいのが大きな特徴です。印象をより強くしたい場合は、あえて節ありを選ぶこともあります。
針葉樹フローリングとの大きな違いはその硬さ。耐久性があり、椅子の脚では傷がついたりや凹んだりすることはほぼありません。一方で硬いがゆえに針葉樹と比べると、柔らかさや温かみは感じにくいでしょう。
■塗装
オイルを塗って仕上げると、優しいキツネ色に変化します。木目の表情が豊かではっきりとしているので、汚れやシミ、傷がついてもそれほど目立ちません。
取材協力 HOUSE&HOUSE一級建築士事務所
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