中古物件や自宅・店舗の改修を検討している方のなかには、「リノベーション」と「リフォーム」の違いが分からず気になっている方も多いのではないでしょうか。あいまいなまま計画を進めると、施工会社に要望が正しく伝わらなかったり希望の改修工事ができなかったりする可能性があるため、事前に違いを把握しておくことが大切です。
そこで今回は、リノベーションとリフォームの具体的な違いを解説します。それぞれの工事内容のイメージや費用の相場、依頼先の探し方まで詳しくご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
「リノベーション」と「リフォーム」の違いとは
「リノベーション」と「リフォーム」はどちらも「建物を改修すること」を指す言葉ですが、「どのように改修するか」という点が異なります。まずは、それぞれの概念の違いを比較してみましょう。
リノベーションとは「変更して価値を高めること」
「リノベーション」は「刷新」という意味合いが強い言葉で、「新築時に比べてマイナスになった建物の価値を、プラスまで高める」ように改修することを、一般的に「リノベーション」と呼びます。
具体的には、老朽化した建物のデザインを一新したり、断熱性や耐震性を高めたりして、もとの建物より魅力的で快適になることを目指します。例えば、ボロボロになった古民家を、機能性に優れた現代風の住宅に改修する工事をイメージすると分かりやすいでしょう。
建物の性能を高めたりイメージを一新したりするには、広い範囲を改修する必要があるため、リノベーションは大がかりな工事になることが多いです。
▼Replan掲載のリノベーションの実例は、こちらをご覧ください!
https://www.replan.ne.jp/articles/category/features/renovation/
リフォームとは「劣化した状態から回復させること」
「リフォーム」という言葉には「回復・修復」という意味合いが強く含まれています。一般的に、建物の価値が「マイナスからゼロ」へ戻るように部分的に改修したり設備を入れ替えたりする工事を「リフォーム」と呼びます。
住み続けるうちに劣化した水まわり設備や床材を取り替え、新築時の性能や美しさを取り戻すことをイメージしてみてください。劣化した場所を補修するだけであれば部分的な工事で済むケースが多く、リノベーション工事に比べて、リフォーム工事は規模が小さい傾向があります。
ただし、「リノベーション」と「リフォーム」は明確な定義によって区別されているわけではありません。リノベーションはここ10年ほどの間に使われ始めた比較的新しい言葉であり、施工会社によってはこの2つを使い分けていないこともあります。
施工会社と契約する前にはどのように改修したいのかを細かく相談し、トラブルにならないようにイメージをすり合わせておきましょう。
リノベーションとリフォームの具体的な違いを徹底比較
イメージする改修工事が、リノベーションとリフォームのどちらに該当するかを判断するためには、より具体的な違いを知っておく必要があります。
- 工事内容
- 工事期間
- 費用
- 依頼先
ここでは上記4つの項目に分けて詳しく解説します。
1. 「工事内容」の違い
リノベーションとリフォームの工事内容の違いは、以下のとおりです。
リノベーション工事の内容 | リフォーム工事の内容 |
---|---|
+
|
|
リフォームでは基本的に水まわり設備やフローリングなどの表面的な部分を改修し、建物本体に大きく手を加えません。一方、リノベーションでは、住宅性能を高めたり、間取りを変えたりするような工事も行います。
つまり
・建物の骨組みが見える程度まで壁や床を解体する作業を伴う →リノベーション
・必要最低限の部分だけ手を加える →リフォーム
と考えると分かりやすいですね。
2. 「工事期間」の違い
リノベーションとリフォームでは工事内容が異なるため、以下のように工事期間にも違いが生じます。
リノベーションの工事期間の目安 | リフォームの工事期間の目安 |
---|---|
2ヵ月〜半年程度 | 1日〜1ヵ月程度 |
リノベーションの工事期間は、マンションであれば2〜3ヵ月程度、戸建て住宅であれば3〜4ヵ月程度となることが多いです。打ち合わせや設計に必要な期間を含めると、施工会社に依頼してから完成まで半年程度を見込んでおくとよいでしょう。
一方、水まわり設備の交換やフローリングの張り替えなどのリフォームは、1〜3日で工事が終わることが多いです。打ち合わせは半日〜1日ほどで終わり、基本的にはカタログから希望の設備や建材を選んで発注する流れになります。
ただし、外壁や屋根などの外まわりをリフォームする場合は、工事に必要な工程が増えることや天候などの影響などを考慮して、2週間〜1ヵ月程度の工事期間を想定しておくと安心です。
▼リノベーションの流れについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください
「家づくりをスムーズに。リノベーションの進め方と費用の基本」
3. 「費用」の違い
建物を改修する際の費用の相場は、以下のとおりです。
費用の相場 | リノベーション | リフォーム |
---|---|---|
屋根の張り替え:約200〜300万円 | ⚪️ |
|
屋根の塗り替え:約50〜100万円 |
| ⚪️ |
外壁の張り替え:約150〜250万円 | ⚪️ |
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外壁の塗り替え:約50〜150万円 |
| ⚪️ |
耐震改修:約50〜200万円 | ⚪️ |
|
断熱改修:約50〜200万円 | ⚪️ |
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間取りの変更:約20〜50万円 | ⚪️ |
|
給排水配管の更新:約5〜30万円 | ⚪️ |
|
水まわり設備の交換:約20〜500万円 | ⚪️ | ⚪️ |
フローリングやクロスの改修:約10〜50万円 | ⚪️ | ⚪️ |
使用する設備や建材のグレードにもよりますが、建物全体をリノベーションする場合は総額で1,000万円を超えることが多いです。
自宅を改修する場合は、上記の費用に加えて引っ越し費用や、状況により仮住まいの費用も必要になります。まとまった金額になるため、住宅ローンやリフォームローンの利用も検討しておくとよいでしょう。
一方、リフォーム費用はリノベーション費用に比べて少額になることが多く、水まわりや内装をまとめて改修する場合は、300〜700万円程度が相場です。
▼リノベーションのローンについて詳しく知りたい方は、
こちらの記事をご覧ください
「リノベーションのローン。しっかり学んで賢く使おう!」
4.「依頼先」の違い
リノベーションとリフォームでは、相談や依頼をする施工会社が若干異なります。
リノベーションの主な依頼先 | リフォームの主な依頼先 |
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リノベーションでは壁や床を取り除く作業が必要なため、工務店や設計事務所など、「建物の構造を理解したうえで設計・施工ができる会社」が主な依頼先になります。間取りや内外装を一新したい方は、デザイン力も重視して依頼先を探す必要があるでしょう。
インターネットで「〇〇(地域名)+リノベーション」などと入力して検索するか、SNSや雑誌で魅力的な実例を探して、その家を手がけた建築会社に連絡するのがおすすめです。
一方でリフォームは、基本的に「地域密着型のリフォーム専門会社や工務店」に依頼することが多い工事です。水まわりのリフォームであれば、施工まで請け負っている設備メーカーも依頼先の候補になります。
最近はホームセンターや家電量販店でもリフォームを請け負っています。リフォームの場合、手がけている会社の経営母体がさまざまなので、希望する工事内容に合わせて選択する必要があります。
リノベーションとリフォーム、どちらを選べばいい?
リノベーションとリフォームのどちらを選ぶべきかは、
- 改修する建物の状態
- 改修の目的
によって異なります。それぞれのメリット・デメリットを整理しつつおすすめなケースを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
リノベーションがおすすめなケース
リノベーションには、以下のようなメリット・デメリットがあります。
リノベーションのメリット | リノベーションのデメリット |
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リノベーションは、既存の壁や床を取り除いて新しくつくり直すため、もとの建物のイメージにとらわれず空間を自由にデザインできる点が魅力です。天井や床下に厚い断熱材を施工したり、気密性を高めて全館空調を取り入れたりすることも可能なので、デザイン的にも機能的にも、満足度の高い住宅に生まれ変わるでしょう。
メリット・デメリットを踏まえると、リノベーションがおすすめなのは以下のようなケースです。
こんな場合は「リノベーション」がおすすめ! |
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特に、古い建物は見えない部分の劣化や傷みが進んでいることが多く、「水まわり設備の交換だけのつもりだったのに、配管の補修まで必要になった…」といった事態が起こりやすいです。改修後も長く住み続ける予定であれば、計画的に資金を準備してリノベーションするのが得策です。
リフォームがおすすめなケース
リフォームのメリット・デメリットは、以下のとおりです。
リフォームのメリット | リフォームのデメリット |
---|---|
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リフォームは、リノベーションに比べて短期間で費用を抑えて改修できる点が魅力です。現状の間取りに満足しているのであれば、水まわりや窓まわり、内装のリフォームのみで十分快適に過ごせるようになるでしょう。
ただし、建物の一部のみをリフォームすると、手を加えていない部分との差が目立ちやすくなります。というのも、建材や設備は数年単位で廃盤になるので、新築時と同じ色味やデザインで統一しにくいですし、既存部分には色あせや経年による汚れの蓄積などがあるからです。
また、リフォームではコストを抑えるために既存の床材を撤去せずに上から張り付ける「重ね張り」という工法を用いることがあります。これだと床材の厚みの分だけ段差ができてしまうので、工事を依頼する前に、施工方法や完成のイメージを細かく確認しましょう。
リフォームがおすすめなのは、以下のような費用やスピードを重視するケースです。
こんな場合は「リフォーム」がおすすめ! |
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なお、段階的なリフォームを検討する方も多いですが、一般的にはできるだけまとめて工事したほうが割安です。まずは施工会社に建物の総点検を依頼し、改修が必要な場所を確認することから始めるとよいでしょう。
「リノベーション」か?「建て替え」か?
戸建て住宅の老朽化が気になる場合は、リノベーションやリフォーム以外に「建て替え(新築)」という選択肢もあります。特に、リノベーションと建て替えのどちらにするかは悩みやすいので、本章では2つの違いや選ぶ基準を詳しく解説します。
1. 工事内容の違いは「構造を残して活かすかどうか」
リノベーションと建て替え(新築)の大きな違いは、改修する際に「建物の構造部分(骨組み)を残すかどうか」です。リノベーションでは壁や床の一部は解体しながらも、既存の骨組みは活かします。一方、建て替えでは骨組みも含めて一度完全に解体し、基礎も含め、ゼロから新しく建て直します。
どちらも間取りを大きく変えられる点は同じですが、リノベーションでは構造的に大事な壁や柱を取り除けないため、既存の枠組みの中で間取りを考える必要があります。リノベーションを検討している方は、施工会社に調査を依頼してどの程度まで変更できるかを確認してみましょう。
2. 費用の違いは「工程と工事内容の違い」
一般的に、リフォームやリノベーションに比べると建て替え(新築)のほうが費用が高い傾向があります。家全体をリノベーションする費用の相場が1,000〜3,000万円程度であるのに対し、建て替えの費用の相場は2,000〜4,000万円程度です。
建て替え費用が高くなる理由は、既存住宅の解体・処分費用がかかることや、基礎から工事することにより材料費や施工費が増えるためです。また、地盤調査や建築確認申請の手続きも必要になります。工事費用に加えて50〜100万円程度の諸費用を事前に資金計画に組み込んでおきましょう。
ただし「工事後の維持費」まで考えると、リノベーションよりも建て替えのほうがお得なケースもあります。新築住宅には一般的に30年以上の長期保証がついており、不具合が発生した場合に保険で対応できたり、無償修理を受けられたりすることが多いためです。新築住宅を建てる際に利用できる補助金も多いので、工事費用だけではなく実質的な負担まで考えて比較しましょう。
3. 判断基準は「コスト」と「安全性」
一般的に、リノベーションよりも建て替えたほうがいいのは、以下に該当するケースです。
- 屋根や壁、床下などの構造上重要な部分の老朽化が著しい
- 建物の形状が複雑になっている(増改築を重ねている)
- 1981年頃より前に建てられている
既存の骨組みの状態が悪かったり手を加えにくかったりすると、リノベーション費用が高額になりがちで、建て替えたほうがお得なことが多いです。特に、1981年の建築基準法の改正前に建てられた建物は現行の耐震基準を満たしていない可能性が高いため、安全のためにも頑丈な家に建て替えることをおすすめします。
ただし、土地の条件によっては完全に解体すると新しく建物を建てられないケースがあります。建築基準法や都市計画法が制定された1950年代以前に区画された土地に該当する住宅が多いのですが、これは現行の基準に合わず建築許可がおりないためです。
リノベーションやリフォームであれば対応可能な場合が多いので、まずは工事できるかどうかを専門家に相談してみてください。
「Replan SUMAIナビ AIでできる工務店・建築家探し」では、デザインに優れた家を多数設計している建築家からリノベーションが得意な工務店まで幅広くご紹介しています。匿名で相談することも可能なので、工事の依頼先を探している方はぜひご利用ください。
「リノベーション」と「リフォーム」は似た言葉ですが、工事内容や費用に違いがあります。家本体に手を加えて見た目や快適性を大きく変えたい方は「リノベーション」、費用を抑えつつ短期間で、部分的にでも新しさや使い勝手の良さを手に入れたい方は「リフォーム」を計画すると、納得度の高い家づくりにつながるでしょう。
いずれにしても、まずは専門家に建物の調査を依頼して、現状を正確に把握することが重要です。ぜひ本記事も参考にしながら、理想のリノベーション・リフォームを実現してくださいね。
(文/Replan編集部)
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