親世帯と子世帯が1つ屋根の下に暮らす多世帯住宅(二世帯住宅や三世帯住宅)。家族で助け合える環境はもちろん、土地購入や建築費などの家づくりの費用を親子で分担できるというのも大きなメリットです。
二世帯だからこそ利用できる主な住宅ローンとして、「親子リレーローン」と「親子ペアローン」があります。この2つは、似ているようで特色が全く違うので、ご家族の状況によって選び方も変わってきます。そこで今回は、「親子リレーローン」と「親子ペアローン」のメリット・デメリットについてご紹介しましょう。
親子リレーローン
1つの借り入れ金に対して、親子が協力してローンを返済していく住宅ローンです。名前のとおり、リレーのように親から子へローンをバトンタッチしていくイメージを連想するとわかりやすいかもしれません。
親子リレーローンのメリットは?
- メリットその1:親が高齢でも借りられる
親が高齢でも、子の年齢で借り入れができるのが最大のメリットです。借り入れ時の年齢制限は通常の場合、65~70歳程度となっていますが、親子リレーローンでは後継の子世帯が連帯保証人または連帯債務者になるため、子の年齢が条件に合っていれば借り入れができます。 - メリットその2:借入額の増額や返済額の軽減が図れる
借り入れ可能額の増加や、毎月返済額の負担軽減を図れるのも特長です。借り入れ時の年齢と同様に、通常の住宅ローンでは完済時の年齢には80歳程度までの制限があるため、借り入れ時の年齢によっては返済期間を短くしなければならず、年間の返済負担が上がってしまいます。そのため、借り入れの金額自体も大きく設定できず、希望額に満たないこともしばしば。しかし、親子リレーローンの場合は親子2代で最長50年というローンを組み、返済期間を長くすることが可能です。
また、親が自分の収入だけでは希望の額が借り入れできない場合でも、収入を合算することで借り入れ額や返済額にゆとりを持たせることが可能です。
- メリットその3:親も団体信用生命保険(団信)に加入できる
金融機関によって異なりますが、親も団信に加入できるため、もし親が亡くなった場合でも子が返済義務を負うことはありません。ただし金融機関によって、団信の限度年齢が異なるので注意が必要です。たとえば住宅金融支援機構の機構団信の場合は、満80歳で親の団信が終了しますので、その後は子が引き続き団信に加入することになります。
親子リレーローンのデメリットは?
- デメリット:住宅ローン控除は返済者分しか受けられない
通常、親子リレーローンの債務者は親となるので、基本的に親しか住宅ローン控除を受けられません。ただし、子が連帯債務者となるようなローンの場合はそれぞれで控除を受けることができますが、持ち分の登記と支払い金額が明確になっているなどの要件がありますので、注意が必要です。
親子ペアローン
1つの物件について、親と子それぞれが別のローンを支払っていくものです。ローンの債務はそれぞれ別になりますので、支払う金額を明確にできます。
親子ペアローンのメリットは?
- メリットその1:控除はそれぞれが適用できる
親と子が別のローンを組み、それぞれで支払いをするため、住宅ローンの控除は親も子も受けることができます。 - メリットその2:固定資産税の軽減を受けられる場合がある
1棟2戸と認められるような二世帯住宅として登記できれば、それぞれに固定資産税の軽減に関する控除の要件を適用できます(この場合は2戸と認められるようなプラン・仕様でなくてはなりません)。 - メリットその3:借り入れ可能額アップが見込める
親と子それぞれでローンを組むため、1人でローンの借り入れをするのに比べて、借り入れできる金額が増える場合があります。
親子ペアローンのデメリットは?
- デメリットその1:希望どおりの借り入れができないことも
審査の要件は親と子それぞれに対してなので、年齢によっては返済期間が短くなったり、希望額に届かない場合があります。 - デメリットその2:団体信用生命保険は別々
団信は親と子で別々に加入する必要があるので、それぞれの支払分に対してのみが適用になります。
二世帯住宅で借りられる住宅ローンの特長がつかめたところで、実際にどのくらいの額が借りられて、どうやって返済をしていくのか、一般的な例に沿ってご紹介しましょう。
親世帯50代後半+子世帯30代前半の二世帯住宅の場合
<親子リレーローンを使って二世帯住宅を建築するRさん宅の資金計画>
- 親世帯58歳夫婦:年収600万円
- 子世帯33歳娘夫婦+子ども5歳(幼稚園児):年収400万円
・親の土地に、二世帯住宅を建て替え
・建築価格:3200万円(諸費用含む)
・自己資金:親世帯より200万円
・借り入れ:3000万円
・親子リレーローン/フラット35Sエコ(適用金利平成24年2月)35年払い(うちボーナス分支払い600万円)返済額は以下のとおりです(当初親世帯の支払いで進む)。
- 2年後、親世帯が退職した際に、返済額軽減型の繰上げ返済を計画した場合
内容は次のようになります。
・親世帯から退職金500万円
・子世帯が月々の返済をしなかった分月5万円を貯蓄したもの(5万円×24回=120万円)
・合計620万円を月返済分へ繰上げ返済※総返済額を減らす効果が大きいのは期間短縮型ですが、ここではあえてリレー先である子世帯の月々の返済負担を減らす意味で返済額短縮型で繰上げ返済しています。
ここからは子世帯にバトンタッチして支払いが始まりますが、親世帯が延長雇用などで支払いの余裕があるなどであれば、バトンタッチする期間をもう少し後ろに延ばすのも一考です。その間、子世帯は返済をしているつもりで繰上げ返済分の資金を準備しておいた方が、実際に返済が始まった際に生活費のブレが少なくなります。
資金計画の要点は「子世帯での支払いをいつ頃からするのか」、「その時に子世帯の家計に無理がないか」などを考慮すること。子世帯のライフプランと合わせて返済計画を立てるとより安心です。
万が一、家庭内の事情で同居を続けることが難しくなると、住宅の名義替えやその後の支払いについてトラブルになったり、予想外の出費がかさんだりという可能性も考えられます。親世帯と子世帯、それぞれの家族の関係性や心構え、住宅ローンの仕組みと周辺知識をよく確認し、理解したうえで慎重に判断して、理想的な住宅ローンの返済プランを検討してくださいね。
(文/Replan編集部)