薪ストーブの導入を決めたら、次に悩むのは「機種選び」。日本はもちろん、北米、ヨーロッパ、北欧と薪ストーブメーカーも各社のラインナップも意外と数が多く、それぞれに個性があります。
その中で、どの薪ストーブ屋さんも一目置くのが、ヨツールの「F400 ECO」です。その人気の理由と魅力を、北海道リンクアップ代表の唐牛 宏さんに聞きました。
170年以上の歴史を誇る
薪ストーブメーカー「JØTUL(ヨツール)」
「JØTUL(以下、ヨツール)」が誕生したのは日本にペリーが来航した1853年。実に170年以上の歴史を持つノルウェーの薪ストーブメーカーです。
かつては帆船に載せて暖房や調理器具として使われていたこともあり、幾多の厳しい航海を乗り越えながら、現代まで脈々と伝わってきた伝統を、ヨツールの薪ストーブは受け継いでいます。
「ヨツール」に限った話ではありませんが、欧米は日本と「ものづくり」に対する考え方が違います。日本は「古くなったら新しいものに買い替える」という発想が主流ですが、欧米では伝統や歴史が重視され、「継承する」ことが大切にされています。
薪ストーブを祖父の代から3代に渡って使い続けているケースも決して珍しくはなく、「少し高価でも質の良いものを長く使い続ける」という考えが、欧米には強く根付いているのです。
また、日本では機種が廃盤になると部品も一緒に手に入らなくなるケースがほとんどですが、海外では例え廃盤になったとしても、需要がある限り部品の製造は続けられます。何十年も前に購入した薪ストーブであっても、不具合が出た場合は部品の取り替えが可能なので、安心して長く使い続けることができます。ヨツールにもその安心感があります。
「鉄の成分」まで徹底的にこだわりぬく
「ヨツール」の薪ストーブは鋳物(いもの)製です。「鋳物」は簡単に言うと鉄を溶かして型に流し込み、固めた製品のことを指しますが、実はこの「鉄」にも秘密があります。
「ヨツール」の薪ストーブの製造は、鉄を溶かすことから始めますが、その鉄の組成には基準値があり、社外秘とされるほどの重要事項です。薪ストーブはどのメーカーのものもだいたい黒くて同じように見えますが、実際使われる鉄の組成にはメーカーごとに個性があります。
薪ストーブは薪の炎に耐えうる硬さや伸縮性が必要ですが、ヨツールの薪ストーブはその要件を満たす厳しい成分基準の元で製造されています。それが長期の使用でも安心な耐久性と品質の信頼性につながっています。つまり、鋳物の成分にもこだわり抜く徹底した製造工程が、末永く使える頑丈なストーブを実現しているのです。
薪ストーブ専門店で扱っているメーカー製の鋳物の薪ストーブと、ホームセンターなどで売っている安価な鋳物の薪ストーブは、鉄の成分組成が大きく異なります。その違いが、価格や品質、耐久性に現れていると言えるでしょう。
「F400」は、誰でも扱いやすい
オートマ車のような薪ストーブ
どんな薪ストーブが適しているかは、その人や家族の性格やライフスタイルによってさまざまです。
薪の火加減を「ダンパー」という装置を使って調整する機種がありますが、ダンパーの開閉で燃え方が変化するため、炎の様子と温度計を確認しながら管理しなければなりません。
ダンパー付きの機種は、薪ストーブを焚く時間が長く、火加減に試行錯誤をしながら手間をかけることも込みで「薪ストーブライフを堪能したい!」と希望する方にピッタリだと思います。このように自分で手をかけて調整や工夫をする必要がある薪ストーブを「マニュアル車」だとすると、ヨツール「F400」はずばり「オートマ車」です。
薪ストーブを初めて使うとなると、操作に自信がない人もたくさんいます。また火加減の調整に時間を割くことができないなど、自分の暮らしに合わせた選択をしなかったために薪ストーブを使うことがストレスになって、せっかくの薪ストーブを使わなくなってしまうということも…。
その点、ヨツールのF400は「焚けない人はいない」と言っても過言ではない非常に扱いやすい薪ストーブです。使いこなせるか不安を感じていたり、機種選びに悩んでいる人が検討の末にF400を選ぶケースはとても多く、販売する側の私たちにとっても、お勧めしやすい機種の一つです。
ヨツールF400のメリット・魅力とは?
「F400」はこれという欠点やデメリットが見当たらない、とても優れた完成度の高い薪ストーブです。その理由となるメリット・魅力は以下のとおりです。
1 シンプルな操作性
F400の操作は非常にシンプル。正面扉の下に突き出ている銀色のレバー1本で空気量を調整することができるので、操作に悩む必要がありません。
2 鍋を置ける天板の広さ
天板に十分なスペースがあるのも、F400の魅力。薪ストーブを煮炊きに使いたい人にとってもぴったりの機種です。
3 炉内が大きい
機種選びで見過ごされがちなのが、薪を入れて燃やす空間=炉内のサイズ感です。薪ストーブは、炉内の奥に薪を置いて焚くことが一番良いとされています。煙は煙突に向けて真っ直ぐ立ち上がるのではなく、炉内の背面の壁から天井を伝って排気されます。
そのため、煙突から離れた場所=炉の奥で焚くと煙がしっかりと燃やし尽くされて、結果として薪の燃焼効率が上がります。「F400」は見た目の印象以上に炉内の奥行きがあります。また炉内が大きいので、大きめサイズの薪も置くことができ、高い燃焼効率を実現することができます。
また炉内が広いので、ピザを焼くこともできます。薪を奥の方へしっかり据えることができると、扉を開けた際に薪が崩れ落ちてくる心配もありません。
4 「灰受け皿」のサイズがちょうど良い
薪ストーブの使用では、定期的に溜まった灰を捨てる作業が必要になります。どの薪ストーブにもパーツとして組み込まれている「灰受け皿」ですが、F400はこのサイズが適度に大きくて深いので、灰を捨てる頻度がそれほど多くなくて済みます。
かといって大きすぎるわけでもありません。大きくて重いと、灰受け皿から灰バケツに移すときに灰をこぼしてしまったり、灰を捨てるのが面倒になったり…。女性でも片手で持つことができる重量とサイズなのが、F400の嬉しいポイントの一つです。
5 選べるデザイン
「F400」は窓面が大きくて、炎を楽しみたい方にもあつらい向きの機種。クラシカルな意匠の格子ありのモデルと、モダンでオーソドックスな格子なしのモデルがあるので、部屋の雰囲気やお好みで選ぶことができます。
側面にはバイキング船、燃焼室には羅針盤のレリーフが描かれています。海をイメージしたデザインはシンプルで飽きがなく、このいかにも薪ストーブらしい佇まいと見た目で選ぶ方が多い機種でもあります。
ちなみに鋳物は、暖まりにくく冷めにくい素材。細やかで美しいレリーフは、鋳物の表面積を増やし、長時間に渡って熱を蓄えるという機能的な役割も担っているんですよ。
F400とF500の違いとは?
ヨツールの薪ストーブのラインナップには、F400よりもひとまわり大きい「F500」があります。住宅のサイズによっては、「F500」のほうがいいのかも?と思う方もいるかもしれません。実際、見比べるとサイズがかなり違います。
結論から言うと、もし新築、または断熱改修リノベーションをした住宅に入れるなら、F400で十分です。
「F500」が適しているのは、とても広い家や断熱・気密性能に乏しい古い家などです。今主流になっている高断熱・高気密仕様の住宅では、「F500」が必要な場面はほとんどなく、よほどのことがない限りF400で事足ります。
「大は小を兼ねる」の安心感からF500を選ぶ方もいますが、焚き始めに炉内の温度を上げるためにF400の1.5倍程度の薪が必要になりますし、室内が暑くなり過ぎて窓を開けっ放しにせざるを得ないなど、オーバースペックなことが多いです。
F400とF200/F205の違いとは?
F400との比較で、よりコンパクトサイズの機種として「F200/F205」があります。「F200/F205」は、カタログスペック上は37坪程度の住宅に適しているとされます。
例えば住宅が35坪程度の広さなら、「F200/F205」でもおそらく問題はないのですが、家のつくりや間取りによっては、カタログスペックどおりのパフォーマンスが出ないことも考えられます。
そうなると、家を十分に暖めるために薪をガンガン燃やして、薪ストーブに無理をさせ、結果本体が早く傷んでしまうということに。ですのでF400に限らず、カタログスペックよりも少し余裕のあるものを選ぶことをお勧めします。
「F200/F205」はF400に比べて本体のサイズがコンパクトで、炉内も小さめ。ですので、
・家がコンパクト
・他の暖房と併用
・限られた空間のみを暖める
・週末に炎を楽しむために設置する
といった条件に当てはまる方には適している薪ストーブだと思います。
ヨツール「F400」は総合点が高い薪ストーブの優等生
長年薪ストーブを取り扱ってきましたが、燃焼効率が良く、操作性にもデザイン性にも優れたヨツール「F400」は、数ある薪ストーブの中でも総合点が高い優等生。ご自身で工夫をしたり、手間をかけてストーブライフを楽しみたい方は物足りなさを感じるかもしれませんが、薪ストーブ初心者にはピッタリな優れものです。薪ストーブの機種選びに悩んでいる方は、選択肢の一つにぜひ検討してみてはいかがでしょうか。