平屋建て住宅が大きな人気だといいます。私のような高齢者ならともかく、若い人に人気というのはよく分かりません。平屋建ては屋根面積や基礎の面積も床面積に対してとても大きく、コストがかかります。高断熱住宅としても、暖房エネルギーを減らすには平屋建て住宅はとても不利で、断熱の厚さを相当増やす必要があります。敷地も広く必要になります。それでも平屋を建てるのであれば、少し違う視点で考えてみたいと思います。

仙台に建つ新住協の実験住宅

私は、室蘭工業大学時代には毎年のように研究室で、学生とともに住宅の設計をしていました。高断熱住宅の工法開発や新しい暖房方法の開発、開口部まわりのデザイン開発などだけではなく、新しいプランニングやそれに対する住まい手の反応、温湿度測定など目的は多岐にわたりました。設計した住宅は40~50棟にもなります。

10年ほど前に仙台に来て以来、住宅設計はしていませんでしたが、3年ほど前に新住協の事務所に住宅の相談に見えたSさんの住宅を、久しぶりに実験住宅として設計することになりました。所員の久保田君に担当してもらい、昨年の冬に完成しました。

Sさんは東京でマンション暮らしをしておられ、仙台に住んでいるお母さんは高齢で施設に入っていたのですが、そのお母さんの家を暖かく快適な家に建て替え、お母さんと一緒に本人も仙台に引っ越すための家です。残念ながらお母さんは、竣工後一度、車椅子で家をご覧になりましたが、その後お亡くなりになってしまいました。 

ロフトを設けたコンパクトな平屋

Sさんは、これまで建っていた家と同じように平屋建てを希望されましたが、東京から、年に1~2度親戚が来られても泊まれるようにロフトを設けることを提案しました。普段はまったく使わなくても、物置にしてもいいし、家が大きくなることによって工事費は少し高くなるだけで、暖冷房費もほとんど変わらないからと説得しました。

屋根には将来ソーラーパネルを載せてゼロエネルギーを目指したかったので、屋根面を南に向けたかったのですが、そうするとロフトが大きくなりすぎて工事費もかなりかかることになるため、図1のような東西に屋根をかけた小屋裏2階建ての設計になりました。

図1 仙台に建つ実験住宅(図面縮尺1/200)

<設計概要>
設   計 :久保田淳哉(新住協)
建 設 地 :宮城県仙台市
敷地 面積 :347.2㎡(約105坪)
延床 面積 :96.9㎡(約29坪)(1階:69.6㎡、2階:27.3㎡)
竣   工 :2022年2月
断熱 仕様 :5地域(Q1.0区分4地域)、Q1.0住宅レベルー3
断熱 性能 :UA値0.250、Q値:0.934

実験的に三協アルミのDI窓と第3種換気を採用
暖房は灯油温水ファンコンベクターによる床下暖房
冷房はロフトの壁掛けエアコンによる全室冷房

これでもソーラー発電はそれほど効率が落ちることなく十分なのですが、南面の1階庇の上に、壁に立てかけるように、太陽熱給湯と多少のソーラーパネルを載せて停電に対処できるのではとも考えました。

コストダウンのため、ロフトの天井高さをギリギリまで低くして、さらにロフトの下の1階部分の天井高さを低く抑えて、全体のボリュームをできるだけ小さくするようにしました。この設計で、住宅全体の体積が232㎥で、1階の床面積69.6㎡で割ると、平均の天井高さが3.3mになり、一般的な天井高さ2.4mに対して約38%増に抑えています。これならわずかなコスト増で済みます。

高齢者が住むということで、床下暖房を採用しました。仙台ではエアコンを使う方法も可能ですが、灯油の温水ファンコンベクターによる床下暖房を採用しました。このシステムについては、この住宅が最初で実証実験を兼ねていました。(本連載の第26回で詳しく紹介しています。私の連載はすべて、Replan Webマガジンで閲覧可能なので、ぜひ参照してください。)

このほかに、この住宅で主要な開口部について、S社が開発中のDI窓という構成を採用して、実験を行っています。開口部を二重窓にして、サッシ上部に換気ガラリを設け、第3種換気を採用し、その負圧を利用してサッシ上部の換気ガラリから給気する仕組みですが、外の窓上部から入った冷たい外気を、二重窓の間の空間に設けた断熱ブラインドなどを利用して一旦下まで下ろし、ブラインドの下をくぐって、今度は内窓側で上昇して室内に入るようにします。これによって窓から逃げる熱を回収し、室内に戻す仕組みです。詳細な温度データを集めていて、興味深い結果が得られています。

写真1 住宅外観(南面)
写真2 リビング内観
写真3 寝室内観
写真4 小屋裏部屋内観

北海道の断熱仕様を想定しこの住宅の性能を分析する

この住宅は仙台に建ち、断熱仕様は図面に掲載されているとおりです。シンプルでコンパクトな住宅なので、これを北海道に建設される想定で、断熱仕様をいろいろ変えて分析してみたいと思います。

平屋の住宅は総2階建ての住宅に比べて、同じ断熱仕様では床面積あたりの暖房負荷が大幅に増えます。ロフトを持たせたことにより少し緩和されますが、この住宅が平屋建てだったらという想定を含めて分析してみたいと思います。