注文住宅で意外と多い「2階リビング」。建築会社から提案されることもあるでしょう。間取りの大きな選択を後悔しないために、この記事ではあらかじめ知っておきたい「2階リビング」の間取りのメリットと注意点、参考にしたいお施主さん大満足の住宅実例をご紹介します。
なぜ「2階リビング」の間取りに?
今も昔も「平屋」が人気であることからも分かるように、日常の利便性や老後を見据えた長期的な暮らしやすさを考えると、家族の暮らしの中心となるLDKや水まわりは、1階にあるほうが好まれます。
ただ、家は「毎日を安心して心地よく暮らせること」も重要。立地条件や周辺環境によっては、1階中心の間取りではその要件が十分に満たされないことがあります。そこで選択肢になるのが、家族の団らんスペースを2階に配した「2階リビング(LDK)」です。
つまり「2階リビング」は、「日常の利便性や老後の暮らしやすさを超えたメリットが得られると判断したときに選ばれる間取り」といえるでしょう。
2階リビングのメリットは?
メリット1 良好な眺望が得られやすい
1階は周囲の建物の影響で暗く閉塞感があっても、2階は視界が抜けて空が見える、という立地が住宅街でもしばしば見受けられます。
また住宅密集地でなくても、
- 目の前に緑豊かな公園や街路樹がある
- 高台にあって眼下に森や海、街並みが一望できる
など、ロケーションに恵まれた立地だと、2階リビングにすることが日常の心地よさにつながる大きなメリットや魅力になります。
実際、Replanが取材で訪問するお宅は、このメリットが理由で2階リビングになっているケースがとても多く見られます。
メリット2 陽当たりが良くて明るい
たとえ南面から陽射しが燦々と降り注ぐ環境でなくても、外光をより多く採り込むことができれば、室内は明るく過ごしやすくなります。
特に住宅街の中の2階リビングでは、窓の配置を正しく検討し、設計を工夫すれば日中の明るさが確保しやすく、その点は、住まいの快適性に関わる大きなメリットといえます。
メリット3 プライバシーが確保しやすい
敷地が人や車の往来の多い道路に面していたり、隣家の玄関や庭の距離が近かったりすると、気になるのは人の目。せっかく家を建てたのに、外からの視線が気になるあまり、1年中カーテンを閉め切るのはとても残念です。
その悩みを解決する方法の一つが、2階リビングです。主要道路に面した方角は隣家と距離があり、高さがある分、車や人の往来も気にならないので、大きな開口を設けやすいでしょう。
メリット4 プライベート感のあるベランダ(バルコニー)をつくりやすい
セカンドリビング的に使いやすいベランダ(バルコニー)をつくりやすいのも、2階リビングの大きなメリットであり、魅力です。
眺望が良いロケーションの住宅のLDKとつながるベランダ(バルコニー)は、その景色を独り占めできる住まいの特等席に。
住宅密集地の中にある家の場合、1階はプライバシーや快適性の面から外に開いた空間はつくりにくいですが、2階なら安心感がある居場所としてプランニングしやすいでしょう。
メリット5 ビルトインガレージを組み込みやすい
敷地面積が限られていると、駐車スペースを確保するのが難しいことも。また北海道をはじめ、積雪が多い地域では、ビルトインガレージは雪かきの手間が減って何かと便利です。2階リビングにすると、1階はビルトインガレージ+個室(+水まわり)で、プランが決まりやすくなります。
「ビルトインガレージ」と「ゆとりの広さのLDK」の両方を兼ね備えた家をつくるために、2階リビングは有効な選択肢だといえるでしょう。
2階リビングのデメリットとその対策
メリットや魅力がある一方で、2階リビングだからこそのデメリットや注意点もあります。
デメリット1 温熱環境が安定しにくい
暖かい空気は上に、冷たい空気は下に溜まりやすいため、2階リビングは往々にして冬は暖房で、夏は日射が理由で暑くなりやすいというデメリットがあります。
そのデメリットを解消するために大前提となるのが、「断熱・気密性に優れた高性能住宅であること」です。特に昨今の夏の酷暑を考えると、躯体性能が低い家は、2階が暑くなることは避けられないでしょう。
その上で、
- 屋根の断熱材の厚みを300㎜以上にする
- トリプルガラスの樹脂サッシなど、断熱性能の高い窓を入れる
- ハニカムスクリーンなど、断熱性や遮熱性の高いブラインドやカーテンを付ける
- 外付けブラインドなどで日射遮蔽する(積雪が多い、寒さが厳しい地域では難しい)
- 空気の流れを考慮した設計とする
- どこにいても室温が一定になりやすい空調システムを採用する
などの仕様や設計、設備面の工夫を組み合わせることで、2階リビングの快適性を保ちやすくなります。
デメリット2 子どもの帰宅が分かりにくい
「LDKを通って2階へ行く間取り」が人気なのは、親子のコミュニケーションの側面が大きな理由ですが、2階リビングの間取りではそれが叶いません。2階にLDKを設けると、寝室や子ども室などの個室は、必然的に1階にレイアウトすることになるためです。
例えば水まわりを2階に集約したり、LDKの横にスタディースペースを設けたりしたら2階に上がる理由ができ、1階にこもり続けやすい環境を避けることができるかもしれません。
メリット3 階段の上り下りが面倒で、大変
「2階リビング」の最大のデメリットは、階段の上り下りでしょう。特に買い物から帰ってきて、重い荷物を持ちながら階段を上がったり、荷物が多くて階段をなん往復もしたりするのは、2階リビングだからこその負担です。
またいずれ加齢とともに足腰が弱くなって、階段の上り下りがきついという状況になることも十分に考えられます。
そのデメリットを少しでも軽減するために、
- 階段を緩やかにしたり、中2階を設けたりして、日常的にも将来的にも安全に上り下りがしやすい階段を設計する
- 飲料やお米などの重い荷物を2階へ荷揚げするためのリフトを造作する
- 家庭用エレベーターを組み込む、または将来設置できる仕様にしておく
などの工夫が考えられます。
住まい手が大満足!「2階リビング」の住宅10実例
リプランの取材先でよく見られる「2階リビング」の注文住宅。ここではその中から12の実例を、お施主さんの家づくりへの考え方や実際の感想とともに簡単に見ていきましょう。
実例1
趣味を取り込み暮らしを楽しむ「2階リビング」の家
旭川市・Mさん宅 夫婦30代、子ども1人
お子さんの誕生を機に、アパート暮らしから新築戸建てへの住み替えを検討し始めたMさんご夫妻。建築予定地が緑豊かな公園に隣接していたため、新居はプライバシーと景観を考えて、大きな開口を設けたLDKを2階に、寝室や浴室などのプライベート空間を1階に配置したプランとしました。
リビングの窓の外には、豊かな緑や穏やかな公園。視界が開ける2階のリビングは、Mさんご一家が時間を忘れてくつろげるお気に入りの空間です。
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趣味を取り込み暮らしを楽しむ「2階リビング」の家
<(株)アクト建築工房>
実例2
明るくて暖かい、レンガ壁のキッチンがある2階リビングの家
札幌市・Kさん宅 夫婦30代、子ども1人
Kさんご夫妻は、札幌市内の賃貸マンションに住んでいましたが、第一子を授かったのをきっかけに新築を考え始めました。
やがて見つけたのは、背後に山並みが広がる眺望に恵まれた高台の土地。ご夫妻の「とにかく明るく暖かい家」という希望を叶えるために、提案されたのは、2階LDKで窓から風景と陽射しを取り込めるプランでした。
夜は室内から夜景を楽しめ、ダイニング横から直に出られるカーポート上のテラスは自然を身近に感じられる第2のリビングとして活用されています。季節と光の移ろいが感じられる高台の家で、家族水入らずの豊かなおうち時間が流れています。
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明るくて暖かい、レンガ壁のキッチンがある2階リビングの家
<(有)大元工務店>
実例3
立体的な空間使いでロケーションを生かした、狭小傾斜地に立つ家
札幌市・Yさん宅 夫婦30代、子ども2人
Yさんが購入を決めたのは、間口はわずか5.8m。高低差も4mほどあり、家が建てられる平坦部分は土地面積の約半分という難条件の狭小傾斜地。プランニングの一番のポイントは、24.8坪の平坦部分に、家族4人が快適に暮らせる空間をどう確保するかでした。
それを解決したのが上下空間をフル活用した立体構造です。LDKを2階に配し、その2階部分を前後に張り出させることで広さを確保しました。
街のほうへ開いたリビングの大きな窓は、景色を切り取る美しいピクチャーウィンドウ。敷地の難条件や約25坪というコンパクトさを感じさせない開放感です。
「最初は本当に無理じゃないかと思っていたので、完成して驚いています。収納も思った以上にしっかりあって、木の温もりあふれるオープンキッチンやカーペットを敷いたピットリビングなど、遊び心もありつつ、使いやすく素敵な空間になりました」と奥さん。リビングのベンチに腰かけて、くつろぎながら外の開けた景色を眺める至福のひとときを満喫しています。
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立体的な空間使いでロケーションを生かした
狭小傾斜地に立つ家
<SUDOホーム(須藤建設)>
実例4
自然素材の心地よさと空間コーディネートが光る、のびやかな2階リビングの家
宮城県大崎市・Nさん宅 夫婦40代、子ども3人
家の中をまんべんなく暖めるため、2階はペレットストーブ、1階は床下エアコンと暖房を使い分け、2階LDKのデメリットを解消。一年を通して快適な住み心地を叶えています。
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自然素材の心地よさと空間コーディネートが光る
のびやかな2階リビングの家
<たけゆきの家(有)髙橋建設>
実例5
公園の木々が暮らしを彩る。変形地に立つスキップフロアの家
福島県郡山市・Sさん宅 夫婦30代、子ども1人、猫3匹
公園に面した1.8mの高低差がある変形地に建つ、4層のスキップフロアを持つ住まい。下から上までそれぞれに役割のある階層が小階段で緩やかにつながり、どこにいても家族の気配が感じられます。
LDKは、プライバシーに配慮しつつ公園の借景を室内に取り込むために中2階にレイアウトしました。どこにいても、窓の外に見えるのは緑豊かな木々の梢。「家にいながら四季折々の風景の変化が見えて、心が癒やされます」とご夫妻ともに笑顔がこぼれます。
実はこの公園は桜の名所で、春には家でお花見を楽しんだそう。自宅の庭のような感覚で、人目を気にせずに自然豊かな風景を眺められる日常を通して、ご夫妻はここに住む価値を実感しています。
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公園の木々が暮らしを彩る。
変形地に立つスキップフロアの家
<前原尚貴建築設計事務所>
実例6
上質な素材感が緑豊かな環境になじむ店舗併用住宅
七飯町・Oさん宅 夫婦30代、子ども2人
函館市の近郊、利便性の良い場所ながら緑豊かな土地に建つ店舗併用住宅です。住居棟の1階は、寝室、子ども室、水まわりなど、プライベートな個室で構成。奥さんが営む雑貨屋のある店舗棟ともつながっています。
周囲の豊かな眺望を楽しめるよう2階に設けたLDKは、勾配天井の大空間。窓の外には隣地の緑豊かな森の風景が広がり、その大開口が気持ちのいい陽射しを室内に招き入れます。「日常生活の中で自然を感じられる空間を求めて、この場所を選びました」というご夫妻の願いを叶える、2階リビングの住まいです。
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上質な素材感が緑豊かな環境になじむ店舗併用住宅
<神子島肇建築設計事務所>
実例7
冬も夏も快適に暮らす。性能と安全性を備えた住まい
東川町・Yさん宅 本人50代、弟40代
本州から東川町へ移住、リモートワークをしながら暮らすご家族の住まい。1階にオフィスのスペースを設ける必要があり、周囲の眺望も期待できたことから、2階リビングの間取りとしました。
Yさん宅は大規模停電や災害に直面した時にも、電気に頼らずライフラインを確保できることにもこだわり、薪ストーブで家全体を暖められるよう計画されています。
高い断熱・気密性能と緻密な換気計画で、室内のどこを測っても設定どおりという空間設計の確かさ・質の高い自然素材を多用した建物は、静謐な空気に満たされています。
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冬も夏も快適に暮らす。
性能と安全性を備えた住まい
<フーム空間計画工房 一級建築士事務所>
実例8
住宅密集地でも明るく快適。光庭のある約24坪の家
宮城県仙台市・Oさん宅 夫婦40代、子ども3人
3方向を高い建物に囲まれた狭小地に立つ、延床面積わずか24坪ほどの住宅。家づくりのテーマは「プライバシーの確保」と「日射の取得」でした。
プライバシー確保のため、普段生活するLDKを2階にレイアウトし、道路に面した南側をルーバーで目隠し。隣に建物が迫る東西の壁面は、窓を極力無くしました。その一方で、京都の町家のように細長い建物の中間に、3方向をガラス窓で囲んだ「光庭」を設け、明るく心地よいLDK空間を実現しています。
「毎日庭を眺めていますが、自然とリラックスできます」とOさん。奥さんも「周囲の視線が気になりませんし、家が狭い分、家族5人のつながりがより深まった気がしています」とコンパクトながら工夫の詰まった家での暮らしを楽しんでいます。
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住宅密集地でも明るく快適。光庭のある家
<設計島建築事務所>
実例9
プライベートを重視した2階リビングのぬくもり空間
旭川市・Hさん宅 夫婦30代
両隣が保育園とご自身の職場という立地条件だったHさんのお住まいは、プライバシーを考慮して2階リビングの間取りに。これが意匠性や暮らしやすさの面でも大正解で、斜め天井を生かした吹き抜けや、ウッドデッキなど、開放感と利便性を兼ね備えた空間に仕上がりました。
2階リビングにしたこともあり、1階には車2台分のビルトインガレージが実現。雪や雨など天候を気にすることなく乗り降りや荷物の搬入・搬出ができます。
また水まわりと寝室も1階にまとめたことで、朝の身支度や就寝前の動線もスムーズ。無垢材や塗り壁など自然素材をふんだんに用いた2階リビングの家は、共働きのご夫妻にとってこの上なく居心地の良い場所となりました。
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プライベートを重視した2階リビングのぬくもり空間
<(株)芦野組>
実例10
住宅街の狭小変形地を生かして叶えた、人生が豊かになる家
宮城県仙台市・Aさん宅 夫婦50代・40代
仙台市郊外の住宅街の一角。奥に細長く、敷地内に1mの高低差がある広さ38坪の狭小変形地にAさんの家はあります。車好きのAさんにとって、家づくりの譲れない条件の一つが、「ビルトインガレージ」。
3方向から隣家が迫っていることもあり、グランドレベルにビルトインガレージを配し、半階ほど上がったところに玄関がある少し変則的な2階建てがプランニングされました。
ご夫妻の暮らしの中心であるLDKと水まわりは、2階にレイアウト。三角屋根のフォルムがそのまま内装に生かされ、木目のすっきりしたシナ合板が空間にメリハリを持たせます。
リビングの一角には小上がりの畳コーナーを設けました。この家で唯一、視線が空へ抜ける方角にL字型のハイサイドライトを入れて眺望と採光を確保。2階リビングだからこそできた、気持ちよく暮らせる設計の工夫です。
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住宅街の狭小変形地を生かして叶えた、
人生が豊かになる家
<ヒノケン(株)>
まだまだいっぱい!「2階リビング」の実例集
2階リビングの住宅実例を10軒まとめて紹介しましたが、リプランが取材した2階リビングの家はまだまだたくさんあります!さらに実例を見たい方は、ぜひ以下のまとめ記事も参考にしてみてください。
「眺望がとても良い」、「住宅街の中で家が近接している」、「傾斜や狭小といった変形地の特徴を設計に生かしたい」など、建築地の周辺環境や特性が2階リビングの間取りを選ぶ大きな動機になり、メリットを生みます。
ご自身やご家族の家での過ごし方や暮らしの中での優先順位をよく検討して、後悔のない最善な間取りを選択してくださいね。