快適な家をつくるには、上手な収納計画が重要です。その中でも意外と悩ましいのが「本の収納」。文庫、コミック、雑誌に写真集など、サイズの異なる本をきれいに使いやすく並べるには、本棚の寸法を上手に決めておく必要があります。
そこで今回はインテリアコーディネーターの本間純子さんに、DIYでも役立つ、すっきりと使いやすい本棚づくりのポイントをうかがいました。
デジタルブックでの読書は今では普通のことで、電車内で紙の本を手にしている人はもはや少数派です。でも、紙の手触りやページをめくる音、カバーデザインや装丁の美しさなど、紙の本ならではの魅力に惹かれる人もいるでしょう。
そんな本好きの悩みの種は、増える一方の本の居場所。新築やリノベーション時の造作や今の家でDIYをするときに、すっきりと使いやすい本棚をつくるにはどうしたらいいのか、そのポイントと注意点をお伝えします。
本棚の上手なつくり方のポイント①
「蔵書数を把握する」
例えば90㎝幅の棚には、単行本を約40冊並べることができます。文庫本や新書は比較的薄いものが多いのでもっと多く入りますし、厚みのある画集や写真集だと一段に収まる冊数は限られます。
そのため本棚をつくるにあたっては、「今ある蔵書を把握すること」がとても大事です。ざっくりで構いませんので、冊数を数えておきましょう。1mに何冊並ぶかを計算すると、必要な棚板の数を割り出せます。今後増える分も見越して、収納には余裕を持たせたいところです。
本棚の上手なつくり方のポイント②
「高さ調整できる『可動棚』が便利」
本棚のデザインとしては「固定棚」が美しいですが、使いやすさや収納力は「可動棚」に軍配が上がります。文庫本や新書はサイズがそろうので固定棚でも問題ありませんが、単行本や雑誌の本棚は本によってサイズの差が大きいので、高さ調節ができる可動棚が便利です。
可動棚の棚板は、棚受けレールやダボ穴で高さ調節をします。ダボ穴はピッチに自由度があり、穴が目立たずスッキリ仕上がるメリットがありますが、穴の追加が難しいデメリットがあるため、慎重に位置を決めましょう。
棚板の間口が90㎝ほどあると、本の重みで棚板がたわむことがあります。収納する本の重さによっては間口を60㎝~70㎝に狭めたり、棚板を厚くしたりして強度を持たせ、たわみを回避します。
書庫が必要なほど蔵書が多いお宅では「床補強」が必要な場合がありますので、事前に設計士や建築会社の担当者に相談しておきましょう。床が抜けては大変です!
本棚の上手なつくり方のポイント③
「手持ちの本のサイズを知る」
本は、持ち運びしやすい文庫本から両手でやっと持てるくらいの大きな写真集まで、さまざまです。限りある本棚のスペースを上手に配分し、使いやすくするために、本のサイズの目安を表にまとめましたので、確認しましょう。あなたがお持ちの本は、どのサイズが多いですか?
本の種類 | 寸法 | 判型 | メモ |
①文庫本 | h148㎜ ×w105㎜ | A6 | 文庫本の規格サイズ。高さ15㎝前後のものが多い |
②新書・コミック | 新書の規格サイズ | ー | コミックは新書より若干幅広 |
③単行本・雑誌 | h182㎜×w128㎜h210㎜×w148㎜ | B6A5 | 流通している書籍の中で最もポピュラーな2サイズ |
④雑誌・参考書・書籍 | h257㎜ ×w182㎜h297㎜ ×w210㎜ | B5A4 | 雑誌や参考書に多いサイズ。ReplanはこのA4 |
⑤ファイル | フラットファイル:h305㎜ ×w230㎜バインダー:h315㎜ ×w275㎜ | A4 | バインダーは、フラットファイルよりも若干大きめ |
⑥画集・写真集・絵本 | h364㎜ ×w257㎜ | B4 | 長方形や正方形など形状のバリエーションが豊富。サイズはB4に限らず、作品に合う大きさでつくられていることが多い |
本棚の上手なつくり方のポイント④
「本は原則、一列に並べる」
収納としての使いやすさを考えると、本は背のタイトルがきちんと読めるように、「一列に並べる」のが原則です。
前後二列に並べると収納力は増しますが、手前の本を抜き出してから奥の本を取り出すことになって、1アクション増えます。この手間がけっこうストレスで、本を探すのも片付けるのもおっくうになります。
本棚の上手なつくり方のポイント⑤
「『高さ』を基準に、『奥行き』違いで3つに分ける」
本は「高さ」を基準に、奥行きの違う3つの本棚に分けると、取り出しやすく収納力も上がります。
❶文庫本・新書・コミック用
文庫本や新書、コミックはサイズがほぼ一定なので、どちらも奥行き寸法が12㎝程度の本棚にスッキリ収まります。奥行きが浅いので、ホールの手すりの壁厚や、カウンター下などのちょっとしたデッドスペースを効率良く活用できます。
高さは、文庫本なら内法寸法で16㎝、新書・コミックは内法寸法で19㎝程度が目安。奥行きが浅い分、棚板の高さが「本の高さ+1㎝以内」でも、本をスムーズに出し入れできます。
❷単行本用
単行本用の棚板の奥行きは18㎝~20㎝程度目安。奥行きがありすぎる場合は、奥にストッパーを置くと本の出し入れがしやすくなります。単行本用の場合、棚の高さは内法寸法で23㎝が目安に。「本の高さ+2㎝程」が使いやすいです。
なお、本を取り出す際には、
・肩より上の高さの棚の本 →少し前に倒し気味に取り出す
・腰より下の高さの棚の本 →心持ち引き上げるように取り出す
これを意識するとスムーズです。
❸B5以上の雑誌・書籍・ファイル・バインダー用
B5以上の判型の雑誌や書籍、ファイル、バインダーはひとグループにして奥行き28㎝ほどの棚に収めましょう。一般的に高さが内法寸法で32.5〜33.0㎝あれば、A4のバインダーまではすっきりと収納できます。
雑誌は表紙が薄くて自立しにくく、くたっと折れ曲がって読みにくくなることも…。「薄型のボックスケースに数冊まとめて収納する」、「ブックエンドでしっかり抑える」、「あえて寝かせて置く」などの工夫が必要です。
❶〜❸以外の本の収納について
○児童書
児童書は、子どもの手が届く高さに。児童書の文庫はコミックと同サイズです。サイズがそろっているので、本棚の一角に専用棚を設けるときれいに整い、片付け甲斐がありそうです。図鑑類は大きくて重いものが多いので、低いところにまとめておくようにしましょう。
○絵本
絵本は大きさも形状もさまざま。背幅の薄いものが多いので、小さな本が大きな本の間に入り込んでしまうと探すのに一苦労です。大きさに合わせて高さをそろえ、奥行きの凸凹が出ないように収納すると、書名が見やすく探しやすいです。お気に入りの絵本は、表紙が見えるようにディスプレイするのも素敵です。
○写真集、画集、カードのコレクションファイル
写真集や画集、カードのコレクションファイルなどは、高さも幅も他の本より大きくて重いことが多いので、本棚の一番下の段に置くか、収納スペースを別に確保するといいでしょう。
本棚の上手なつくり方のポイント⑥
「地震を想定して安全な設置場所を選ぶ」
本棚をどこにつくるか。棚板に返しやバーを付けて落下しにくくする対策も有効ですが、地震の大きな揺れで本が棚から飛び出す危険性を考えると、設置場所をしっかり考慮する必要があります。
まずとっさに逃げるのが難しい「ベッドの周囲」や「ソファの背後」には本棚を設置しない方が安全です。また「小さい本・軽い本」は上段、「大きい本・重い本」は下段に置きましょう。
脚立やはしごで高い位置の本を出し入れするときは、「仮置きスペースの確保」と「1回1冊」を心得て、くれぐれも安全に怪我のないよう気をつけてください。