家での暮らしに欠かせない「明かり」ですが、住まいの省エネ化と技術の発達により、電球・蛍光灯からLEDへの転換が加速度的に進んでいます。今、家づくりをお考えの方は、LED照明を基本に計画が進んでいくでしょう。

そこで今回はインテリアコーディネーターの本間純子さんに、住まいのLED照明の基本と選ぶときの注意点を教えていただきます。


進化し続けるLEDの明かり

カーボンニュートラルに向けた時代の要求にしっかり応える照明として、新しい照明器具の光源のほとんどが、白熱灯や蛍光灯からLEDに置き変わっています。

電球や蛍光灯との大きな違いは「省エネ性」です。多くの場合、長くても数年に一度は取り替えが必要な白熱灯や蛍光灯に比べて、LEDランプは10年以上の長寿命。白熱灯や蛍光灯よりも少ない電力量で同程度の明るさが確保できます。また、従来の明かりにはない「コンパクトさ」や「器具デザインの自由度の高さ」も魅力です。

家づくりのLED照明器具
3つのタイプ

家づくりで使われるLEDの照明器具は、大きく分けて3タイプあります。

① LED一体型(LED内蔵型)照明器具

照明器具本体に発光部が埋め込まれているLED照明。大型のシーリングライトの多くがこのタイプです。小さな発光部がコンパクトな器具デザインを可能にし、ペンダントライト、スポットライト、ダウンライトでもよく見られます。ただ器具とLEDが一体なので、寿命が来たら器具ごと取り替える必要があります。

LED一体型のシーリングライト(左右写真/パナソニック(株) エレクトリックワークス社)
カバーを外すと、つぶつぶした小さなLEDの集合体が組み込まれている
カバーを外すと、つぶつぶした小さなLEDの集合体が組み込まれている

②電球型LEDランプの照明器具

白熱電球やクリプトン電球のような形状のLEDランプを差し込んで使う照明器具。特に口金E26やE17の電球型LEDランプは、電気屋さんの店頭でおなじみでしょう。クリア球タイプはキラキラした光のランプで、透明なガラスシェードと相性がよい器具です。

LED電球はサイズや形状のラインナップも豊富
LED電球はサイズや形状のラインナップも豊富(写真/パナソニック(株) エレクトリックワークス社)

ペンダントライトの白熱電球やクリプトン電球を、電球型LEDランプに付け替えることもできます。基本的に口金のサイズと、口金周辺の形状が合えば交換は可能ですが、白熱電球やクリプトン電球とLEDランプでは「発光部の位置」が異なります。

特にシェード付きのペンダントライトの場合、電球を変えたことでシェードの配光(明るく照らされる位置)が変わり、それまでの明かりの雰囲気と大きく異なることがあるので、注意しましょう。

③フラット型LEDランプの照明器具

近年新たに開発され、ここ数年で製品が増えて普及しつつあるのが、平たい円筒形のフラット型LEDランプの照明器具です。ランプの形を新しくしたことで、照明器具の機能や配線に依存しない照明設計が可能になりました。

フラット型LEDランプの口金はGX-53の統一規格で、定格寿命は約40,000時間。明るさ、光色、演色性、光の広がり(拡散、集光など)を組み合わせたさまざまな種類があり、ランプ交換だけで、必要な明るさや光の広がりを変えることができます。

光色や明るさのバリエーションが多いφ70のLEDフラットランプ
光色や明るさのバリエーションが多いφ70のフラット型LEDランプ。例えば電球では60W→100Wへの電球交換は難しい場合が多かったが、フラット型LEDランプはクラス50(60W)→クラス70(100W)へのランプ交換が可能です(写真/パナソニック(株) エレクトリックワークス社)

また人感センサー機能や、シーンに合わせた調色・調光機能、Bluetoothによるスマホでの操作(特定のスイッチが必要)といったフラット型LEDによる新たな機能は、住宅照明の使い方の幅を広げます。家づくりをする方はぜひ知っておきたい、これからの時代のLEDランプです。

LED照明選びで必ず確認したい
「演色性Ra」とは?

最近のLEDランプには「演色性Ra」の表記をよく見ます。これは「どのくらい自然光に近い色に見えるか」を数値化したものです。平均演色評価指数(Ra)で表され、最高値のRa100は、自然光が当たったときと同様の色を再現することを意味します。

JIS(2019年改正)により、住宅のLED照明は最低でもRa80以上が推奨されています。家に使うLEDランプを選ぶときには、できるだけ「Ra80以上かどうか」を確認して購入しましょう。特に安価なランプは、演色性Raが推奨値よりも低いこともあるので要注意です。

LED照明の「光色」

一般的にくつろぎや団らんの空間には「電球色」、仕事や勉強、作業のスペースには「昼白色」が適しているといわれますが、今のLED照明の光色は、そのような使い方のニーズに合わせた幅広い選択肢があります。

ダイニングやリビング、寝室に。
「電球色」のLED照明

例えば、ダイニングの場としてのメインの機能は食事なので、食べ物がより美味しく見える「電球色」の明かりがスタンダードです。もともと電球色は、食材の「赤・黄・緑」が鮮やかに見える光の色。LED照明の場合は、色温度2600K~3250K(K=ケルビン:光色の単位)の範囲で、白熱灯に近い光の色を再現しています。

また料理は、盛り付けの立体感や素材の凹凸、光沢から、鮮度や舌触りがイメージされ、おいしさの記憶と結びつきます。「白熱灯」は料理を引き立てる立体感や光沢感が得られる明かりですが、「蛍光灯」はたとえ電球色であっても、陰影の演出が苦手です。

その点「集光」「中角」等の表記がある照明器具やLEDランプは、電球のような陰影をつくり、料理を美味しく見せる効果が期待できます。おいしく見えることにこだわりたい方は「電球色の集光タイプ」のLEDランプを検討してみましょう。

仕事や作業、勉強の空間に。
「昼白色」のLED照明

ワークスペースや調理をするキッチン、作業をする家事室などの照明は、色温度が約5000Kで、色が見分けやすく文字も読みやすい「昼白色」の明かりが向いています。

ダイニングがお子さんの勉強場所やワークスペースになるケースも多いので、ダイニングのLED照明は、昼白色・電球色の切り替えができる器具を選ぶと便利です。最近は、色温度がとても滑らかに変化する器具も出ています。

LED照明は専用の器具が必要だったり、電球自体が白熱灯や蛍光灯に比べて高価だったりと、途中で切り替えるには躊躇する部分もあるので、新築やリノベーションはLED照明を導入する絶好のタイミングでしょう。

明かりは、月々の電気代やランニングコストはもちろん、家の暮らしやすさや住まい手の心身に少なからず影響を与えます。新居での過ごし方について具体的なイメージを描きながら、適材適所のLED照明を選んでくださいね。