どの家にも必ずある「寝室」。毎日快適な睡眠時間を手に入れるためには、寝室の広さに合ったベッドのサイズと配置が重要です。そこで今回はインテリアコーディネーターの本間純子さんに、快適な寝室づくりのための「部屋の広さに合わせたベッドのサイズとレイアウト」について教えていただきましょう。
「部屋の広さ」で、置けるベッドのサイズは決まる
人生の25~30%の時間を、私たちはベッドで寝て過ごしています。体と心の健康を保つためのとても大事な家具ですから、吟味して選びたいもの。そのためには、プランを考える際に、
・使いたいサイズのベッドを置くには寝室はどの程度の広さが必要か
または
・寝室として割けるスペースには、どのサイズのベッドがどんなサイズ感で収まるのか
を想定し、自分たちが納得のいく寝室を検討する必要があります。
ベッドのサイズの基本
ベッドサイズの基本の前に、まずはベッドを構成する部位の名称を確認しましょう。
ベッドは「マットレスのサイズ表示」で大きさが決まります。以下は家庭用ベッドのマットレスの一般的な寸法で、室内にベッドを配置するときの目安として使われています。
【マットレスの幅】
・シングル:100㎝
・セミダブル:120㎝
・ダブル:140㎝
・クイーン:160㎝(幅80㎝ × 2台)
・キング:180㎝(幅90㎝ × 2台)
【長さ】
・標準:200㎝(実寸195㎝+シーツや毛布の厚み5㎝)
・ロングタイプ(背の高い方向け):205~210㎝
【マットレスの高さ】
・標準:20㎝
【ベッド本体の幅】
・マットレスのサイズとほぼ同じ
【ベッド本体の長さ】
・標準:210㎝
ヘッドボードやフットボードのデザインによって異なるので、必ずベッドの寸法を確認をしましょう。特にボリュームのあるデザインや、収納付きのヘッドボードはサイズに幅があるので要注意です。
【ベッドのシートハイ(SH):マットレスまでの高さ】
・標準:40㎝(ボトムの高さ20㎝+マットレスの高さ20㎝)
ボトム部分が引き出しなどの収納付きだと、40㎝よりも高くなることがあります。
【ベッドの高さ:ヘッドボードの高さ】
・標準:80㎝前後
窓の外から見えないよう、ベッドの配置と窓の下端の寸法も要確認。
【サイドテーブル】
・天板45㎝角程度、高さ45〜50㎝程度
時計やランプ、スマートフォン、充電器、メガネ、本など、ベッドまわりで使う小物類を置くためのテーブルです。使いやすいのは、「ベッドのSHくらい」の高さ。ヘッドボード上の壁などにニッチを設けてサイドテーブル代わりにするケースもあります。
寝室のプランニング時の注意点
1. 家具はたった1㎜大きいだけで収まらない
内法寸法(室内の寸法)は、壁の厚みによって決まるので、設計士や施工管理者に前もって確認しておきましょう。というのも、家具はたった1㎜大きいだけでも収まりません。家具の配置はゆとりある寸法の中で考えることが大切です。また巾木の厚みや建具枠の出幅、パネルヒーターの寸法、扉の開閉寸法なども、ベッドのレイアウトのしやすさに関わってくるので注意が必要です。
2. 窓との位置関係
窓の配置も重要です。まず先にも触れたように、安心感を持って休むためには、外から寝室内が見えにくい高さに、立地や得たい機能に応じたサイズの窓を設ける必要があります。
枕元に窓があると外の音が伝わって安眠の妨げになることがありますし、雨戸を使わない地域ではヘッドボード側は窓から離した方が安全です。小さいお子さんはベッドに上って窓を開ける危険もありますので、ベッドはできるだけ窓から離して配置しましょう。
6帖・7帖・8帖の広さの違いとは?
家を建てるとなると、寝室の広さは6帖〜8帖が一般的です。それでは、同じサイズのベッドを置いたときには、実際、部屋のゆとりはどの程度違うのでしょうか?それぞれにシングルベッド2台をぴったり並べてレイアウトした例を比較してみました。
【6帖の場合】
【7帖の場合】
6帖と7帖ではゆとり感がずいぶん違います。6帖だとベッドの足元は横歩きで通ることになりそうです。この2部屋の大きな違いは、6帖よりも7帖の短手方向が45㎝ほど広い点です。この「45㎝」が、ドアの開閉のしやすさや人の動きに大きな差を生む寸法なのです。
【8帖の場合】
8帖になると、部屋の短手はさらに45㎝広がり、テレビボードやドレッサーなどの家具の配置が可能になります。このように展開図(室内の高さがわかる図)で比較すると、空間の広がり感、ゆとり感の違いがよくお分かりいただけるでしょう。
参考にしたい!6帖の寝室のレイアウト例
① 6帖+ダブルベッド
一般的な6帖の部屋は、壁芯(壁の厚みの中央)から壁芯まで、長手方向が3.64m、短手方向が2.73mです。その6帖の部屋にダブルベッド1台を配置したのが、図1と図2です。長手方向の壁にヘッドボードを寄せると、ベッド両側にスペースが確保できる一方で、足元側を通るときに狭さを感じます。
図2のとおり、短手方向の壁にヘッドボードを寄せると、ほぼピッタリで、足元側にスペースが確保でき、上掛け布団などの出し入れもしやすそうです。
図1・2では、ベッドの配置に合わせて、窓とパネルヒーターの位置を変えました。ベッドとパネルヒーターが近いと暖房効率が良くないので、なるべく距離を取るようにします。
② 6帖+シングルベッド ✕ 2台
ダブルベッドは相手の振動で眠りのリズムを崩しやすいと、シングルサイズのベッドを2台配置するケースが多いように感じます。マットレス2台でワンセットになるクイーンサイズやキングサイズを採用する方法もあります。
シングルベッドを2台並べると2mほどの幅になるので、6帖の短手方向への配置は難しくなります。足元の狭さには目をつぶって長手方向に2台並べると、図3のようなレイアウトになります。
ここで問題なのが、出入り口のドアとベッドが干渉すること。図では、ドアとベッドの間にそれなりにゆとりがあるように見えますが、実際は上掛け布団などがせり出してくるので、開閉のたびにドアで寝具が擦れます。
この出入りのしにくさが日常的となると、かなりストレスです。居室のドアは原則内開きですが、この場合は廊下側に開く、もしくは、図4のように引き戸にする方法が考えられます。
このように「6帖=シングルベッド2台がなんとか置ける広さ」。ただ床面がほとんど見えないため、空間としては狭く感じられますね。
参考にしたい!8帖の寝室のレイアウト例
① 8帖+ダブルベッド
② 8帖+シングルベッド ✕ 2台
長手・短手とも3.64mの8帖の部屋にダブルベッド、またはシングルベッド2台を並べてレイアウトした図です。6帖と比べてだいぶ余白が多く、収納を設けることもできます。これならシングルベッドの間にサイドテーブルを置くゆとりもありますね。
③ 8帖+セミダブルベッド+シングルベッド
一度大きいサイズのベッドを使うと、小さいサイズを窮屈に感じてしまうことも。実際にホテルのセミダブルベッドの快適さが気に入って、ご自宅のベッドを変えたという話も少なくありません。シングルとセミダブルの幅20㎝の差は大きいと言えます。8帖の寝室にセミダブルベッド2台をレイアウトすると、下の図のようになります。
さすがにセミダブル2台だと、壁の幅いっぱいの寸法になります。ただ、足元にはゆとりがあるので、ロングサイズのマットレスも問題なく使えます。
間取りを検討するときから新居で使うベッドの寸法や寝室の使い方を決めておくことが、本当に快適な寝室づくりにつながります。睡眠は、私たちの生活の質に直結する非常に大切な暮らしの要素です。広さ感覚や移動や掃除のしやすさ、音や匂いも含め、心地よく眠れるお部屋を目指してくださいね。