注文住宅でこだわりたい場所の一つが水まわりです。特に造作洗面台は、オーダーメイドだと自由度が高く、暮らしに合わせて収納をつくることができます。ただし棚が高すぎたり、収納量が足りなかったりと、寸法や配置を間違えると、使い勝手が悪くなって日々のプチストレスの原因に…。そこで今回は、洗面所の収納計画で考えておきたいポイントを、インテリアコーディネーターの本間純子さんに教えていただきましょう。


【洗面所の収納計画の前にすること.1】
よく使う道具類のリストアップ

使い勝手の良い洗面まわりを計画する前に、まず準備が必要です。一つは、普段自分たちが使っている道具類のリストアップ。洗面室の広さや機能、家族構成、年齢、性別などで必要なものは異なります。

参考までに「身支度」を基本に、一般的なものを挙げてみました。

■手や顔を洗う:
ハンドソープ(せっけん)/クレンジングオイル/洗顔フォーム/タオル/ヘアクリップ・ヘアバンド
■歯を磨く:
歯ブラシ・電動歯ブラシ(家族の人数分)/コップ/歯磨き粉チューブ/デンタルフロス/マウスウォッシュ
■髭を剃る:
カミソリ/電動シェーバー/シェービングクリーム/シェービングブラシ/充電器/タオル
■髪を整える:
ドライヤー・ヘアアイロン/ヘアブラシ・くし/整髪料・ヘアクリーム・ヘアスプレー/ヘアアクセサリー類
■お肌の手入れや化粧:
化粧水/乳液/美容液/クリーム/ヘアクリップ/コットン・綿棒/メイクアップ用品一式
■その他:
コンタクトレンズケア用品/ボックステッシュ/ゴミ箱/時計/洗面まわりの掃除用品 など

細々としたものも多く、種類もさまざま。家族それぞれで違う商品を愛用しているケースも多いでしょう。また消耗品のストックやタオル類も洗面まわりに置くとなると、そのための収納も必要になります。

【洗面所の収納計画の前にすること.2】
普段の使いやすさ、使いにくさの把握

使い勝手の良さは人それぞれ。何がどの高さや位置にあると使いやすいのかを、あらかじめ把握しておくと、新しい洗面台はとても使いやすくなるでしょう。そのために基準となるのは「今の家の洗面収納」です。良い点は生かし、不便や不満を感じているところは担当者に伝えて改善すると、自分たちにぴったりの洗面収納ができるはずです。

引き出し・オープン棚・扉付き棚を
洗面台まわりでどう使い分けるか?

洗面まわりの収納のバリエーションは主に「引き出し」「オープン棚」「扉付き棚」の3種類です。各々の特性を踏まえて入れる物、置く物を検討するのが、収納上手の秘訣です。

◯引き出し収納

「引き出し」は、奥の物を手前に引き寄せられるので、収納した物を見つけやすく取り出しやすいのが魅力です。洗面カウンターの奥行は55㎝前後と、人の腕とほぼ同じ長さ。カウンター下の奥の方は手が届きにくいため、引き出しを付けると収納量と使いやすさの両立ができます。

複数の引き出しを備え付けた造作の洗面台

ただし目の高さより上になると、引き出しの中が見えにくいので、実用的なのは床から120㎝ほどの高さまでです。

◯オープン棚(扉なしの棚)収納

オープン棚の魅力は、置いてあるものが把握しやすく、出し入れがしやすいところ。1日に何回も使う物や、タオルなど取り替えの頻度が高い物は、洗面台の前に立って取り出しやすいオープン棚に置くと便利です。ただオープンな分、埃は溜まりやすいので、小分けの収納容器を活用したり、使用頻度の低いものは引き出しか扉付きの棚に入れて、掃除の手間を省きたいところです。

オープン棚にタオルを収納
オープン収納に組み込むトレイやカゴは、片手で持てる程度の大きさと重さにするのがポイント

◯扉付きの棚収納

埃を防いで掃除の手間を軽減でき、洗面室全体の印象がすっきりきれいに見える。これが扉付き棚の大きなメリットです。

例えば「ミラーキャビネット(正面のミラーの中にセットされた奥行が浅い収納棚)」は家づくりの定番。扉を兼ねたミラーの効果で生活感あふれる細々としたものを隠せるうえ、スペースの有効利用にもなります。

コンパクトな洗面台で重宝するミラーキャビネット
ミラーキャビネットとオープン収納を組み合わせた機能的な洗面台

ただ、扉を開け締めする動作が加わるので、使用頻度の少ない洗面まわりのストック用品や、予備のタオルの置き場所などにするのがおすすめ。オープン棚に比べると設置コストは割高でもあります。

下部に扉付き収納を設けた造作の洗面台

洗面台の寸法の目安

洗面台の高さや幅などだいたいの寸法の目安を、下図に表しました。間口180㎝で少し広めかもしれませんが、間取り図を見たり、洗面まわりの装備のサイズを検討する際の参考になさってください。


洗面台まわりの寸法の目安
洗面台まわりの寸法の目安

洗面台の仕様を決めるときの注意点

A. ミラーキャビネット:
スライドタイプにすることもできます。

B. ベッセル式洗面ボウルのカウンター:

ベッセル式(据え置きタイプ)洗面ボウルは、カウンターの高さが一般的なテーブルに近いので、椅子に腰掛けてメイクするのにも使いやすいです。ただ、カウンターの下をオープンにする分、収納スペースは減ります。

C. 電源コンセント:
ドライヤーやシェイバー、電動歯ブラシ等の充電用。位置を決めるときのチェックポイントは、「水栓から十分に離れているか」「利き手側にあるか」「充電器の置き場所」。左右両側に付けておいてもいいですね。
D. 引き出し:
引き出しの高さは、入れる物を考慮して。大きな引き出しは、仕切り板で物に合わせて幅を調整しながら使いましょう。

E. 奥行12㎝のオープン棚:
時計、温度計、小さな観葉植物などの定位置。歯ブラシ置き場にしてもOK。

F. タオル掛け:

フェイスタオルの長さはさまざまなので、タオル掛けはゆとりのある高さに取り付けて。

G. 高さの浅い引き出し:
地域指定のゴミ袋など、厚みが薄くて洗面まわりでよく使うものは高さの浅い引き出しに。カッターやハサミなども入れておくと重宝します。
H. ゴミ箱:
洗面まわりにゴミ箱は必需品。分別できるようにしておくと、ゴミ出しに便利です。

I. ミラーキャビネットの奥行:
ミラーキャビネットや正面に設けたオープン棚の奥行は、洗顔時に頭がぶつからないようにするためにも、約15㎝が目安です。

J. 引き出しの寸法:

床から高くても120㎝程度が引き出しとして日常使いしやすいゾーン。引き出し全体が俯瞰して見えるので、必要なものが見つけやすく、出し入れもしやすいです。また引き出しを造作する際には、入れる想定の物の高さに合わせた高さでオーダーしましょう。

K. 洗面台前に必要な広さ:
洗面台の前は、引き出しを十分に引き出して、自分自身が前かがみになれる広さが必要です。

洗面まわりの収納計画で
押さえておきたいポイント5


よく使う小物の収納に便利
実用的な「奥行12㎝」の棚

奥行が深い棚は、たくさん物が入りますが、奥の物を取ろうとすると手前の物を移動させる1アクションが発生します。 片付けるときも同じくひと手間かかるので、合計2アクションが動作に加わります。

よく使うものは「手に取る・使う・片付ける」を0アクションで済ませたいもの。そこで取り入れたいのが、「奥行の有効寸法(実際に使える寸法)が12㎝程度のオープン棚」です。洗面台まわりでよく使うアイテムのほとんどは、幅・奥行とも10㎝以下。奥行12㎝の有効寸法があれば、一列並べにできるのです。


濡れたものはオープンな
ところに置き場を確保

歯ブラシ、コップ、せっけん、濡れたスポンジ、使用済みのタオルなど、湿ったものを扉の中に収めると、乾燥が進まず、カビや嫌な匂いのもとになります。オープンなスペースに置き場所を確保したいところです。

タオル掛けのバーは壁からの距離が6~7㎝が一般的ですが、取付場所によっては、濡れたタオルで壁面がカビてしまうことも…。部屋の入隅は空気が動きにくいので要注意です。


洗面ボウルまわりに
平らなスペースがあると便利

カウンター付きの洗面台は問題ありませんが、洗面ボウルまわりに、コップや歯磨きチューブ、ハンドソープなどが置ける平らなスペースがあると、とても便利です。スペースの幅は10㎝程度で十分。真上から押すプッシュボトルには必須です。メガネや腕時計、スマートフォンなどの仮置きスペースとしても使えます。


コンセントの取り付け位置は
安全かつ使いやすさに配慮

シェーバーの充電用コンセント
収納棚の中に付けるとすっきり片付きますが、扉を閉じたままの充電は、過熱による事故になりかねず危険です。扉を開けた状態か、オープンなスペースで充電しましょう。

ドライヤー用のコンセント
ドライヤー用のコンセントはコードが洗面ボウルの上を渡らない位置に設置します。コンセントの取り付け高さは、90㎝~100㎝程度とカウンターよりも高いほうが使いやすいです。

適切なコンセントの取り付け位置は、左右どちらの手でドライヤーを持つかや家族の身長によって決まります。日頃の動作や使い方をシミュレーションすると分かりやすいですね。


物を置くエリアを明確に

洗面まわりには、ハンドソープやドライヤーなど家庭内で共有するものと、化粧品やヘアクリーム、ヘアブラシなど、個人で使うものが共存しています。新築やリノベーションを機に、家族の個々の持ち物の居場所を決めておくと、整理整頓しやすく、使い勝手の良い洗面まわりを保てます。


洗面台まわりは家の中でも汚れやすく、散らかりやすい場所です。毎日使う場所だからこそ、広さと家族の使い方に合った収納計画で、きれいで気持ちがいい空間を保ちましょう。