節湯、一番のお薦めは?
お筆者が一番お薦めしたいのは、「節湯型浴槽」です。少ない湯量で水位を稼ぐよう工夫された浴槽を選んでおけば、その後の10年20年、ずっと燃料と水の大きな節約に直結するのです。逆に男のロマンである檜風呂は大概「真四角」ですので、水位を確保しようとすると膨大な湯が必要。こうした「素材派エコ」は要注意です(図18)。
ちなみに設備業界は、この「節湯型浴槽」に非常に後ろ向きです。おそらく彼らは、もっと儲かる大きなホーロー・大理石浴槽への悪影響を恐れているのでしょう。最近は実使用時を想定した70%水位湯量を表示している浴槽もありますから要チェック。無駄な湯で損をするのは結局自分だということを忘れないで下さい。
ハダカになる水まわり。温熱環境は特に大事
ここまでの給湯設備の話とともに、省エネで快適・健康な生活のためには、水まわりの温熱環境もとても大事です。「入浴で年間1万7千人が亡くなっている」というショッキングなニュースを聞かれた方も多いでしょう(図19)。暖房の効いた居間から凍える脱衣室・浴室で脱衣・入浴を行う一連の流れは、血圧の大きな変動を招き非常に危険(図20)。水まわりは住宅の中で特にリスキーなレッドゾーンになってしまっているのです。
図21をご覧ください。人工環境試験室(外気条件7℃)で、同じユニットバスを無断熱(上段)と断熱+暖房(下段)した場合を比較しています。みなさんはどちらの浴室に入りたいでしょうか?
筆者らが2000人を対象に行ったアンケートによると、浴室を「非常に寒い」と感じている人では、めまいやのぼせ・転倒が非常に多くなっています(図23)。また、浴室が寒いと浴槽やシャワーの湯を熱めにする人が増えています(図24)。これは給湯の増エネになるだけでなく、体へのストレスも増やしてしまいます。
浴室のタイプとしては、図25のようにタイル貼りなどの古い在来浴室ほど寒く感じる人が多い一方で、ユニットバスの物件は年代によらず暖かい場合が多いようです。最近は高断熱型のユニットバスも登場していますから、特に寒冷地では優先して選びましょう。
図26は、浴室暖房の設置状況です。集合住宅にはビルトインの浴室暖房機が高い割合で設置されていますが、残念ながら集合住宅では風呂はあまり寒くありません。逆に肝心の寒い戸建住宅にはあまり浴室暖房機が設置されていません。
また浴室ばかりでなく、服を脱ぐ脱衣室の温熱環境も肝心です。図27は脱衣室での暖房設置状況です。古い戸建てを中心に、電気ストーブなどを持ち込んで寒さをしのいでいる様子が伺えます。
新築はもちろんとして、リフォームの際にも水まわりに手を入れる機会は多いと思います。高効率な給湯設備への更新と併せ、ユニットバスと脱衣室の高断熱化をまず徹底し、必要に応じて安全な暖房設備の設置を検討するのが重要です。当たり前ですが、浴室が暖かいほど入浴の満足度は高くなっています(図28)。凍える体を熱湯の風呂で加熱するなどという習慣は、そろそろ終わりにしなければなりません。
日本人にとって、お湯は単なる衛生の手段を超えた一種の文化。これからも健康で快適な生活を守るため、家をつくる時には普段目に見えない給湯設備にもきちんと気を配りましょう。
※次回のテーマは<私たちの家のミライ>です。
【バックナンバー】
vol.001/断熱・気密の次の注目ポイント!蓄熱大研究
vol.002/暖房の歴史と科学
vol.003/太陽エネルギー活用、そのファイナルアンサーは?
vol.004/「湯水のごとく」なんてとんでもない!給湯こそ省エネ・健康のカギ
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