省エネ基準開口部のU値(仕様値)は大幅変更が必要

今回のテーマは「窓」なのですが、前回の新しい省エネ基準について少し気になることがあるため、最初に触れさせていただきます。

省エネ基準は従来の4等級に加え5~7等級が提示され、曲がりなりにも住宅の省エネに本格的に取り組むことになりそうです。そして最近、5等級にも仕様基準が決められるということが報じられました。仕様基準とは、UA値を計算しなくても、各部の決められた断熱厚などを満たしていれば、適合していると認められる基準です。この方法の方が皆さんには分かりやすくなりますし、省エネ基準の性能が確保されやすくなります。

実は、前回の記事で、5等級の仕様例を示すにつき、私も4等級の見なし仕様に準じる形で、5等級仕様基準を模索してみましたが断念した経緯がありました。2地域の5等級は住宅のUA値が0.4以下で、4等級のUA値0.46よりほんの少し小さくすればいいのです。私は窓ガラスを12㎜LOW-Eペアから、16㎜ArLOW-Eペアに変更すればいいと考えました。

しかし、表1で見ると仕様基準の窓のU値は2.15で12㎜LOW-Eペアの2.33からほんのわずかしか変わりません。これでは5等級はクリアできませんが、窓のU値を、QPEXで計算値に変えてみると、120㎡モデルプランでUA値が0.397となり5等級をクリアするのです。原因は16㎜ArLOW-Eペアを入れたPVCサッシのU値仕様値があまりにも大きすぎることです。このため、外壁などの断熱の厚さを増やす必要が生じます。これで、コストが余分にかかることになり、仕様基準でつくる工務店の住宅は、計算基準でつくる大手ハウスメーカーに比べて不利になってしまいます。

表1に窓のU値について仕様値とQPEXの計算値を示します。

表1 省エネ基準の開口部U値の仕様値とQPEXによるU値計算値の比較

仕様値は新旧ともに示しています。窓のU値の実際の値は、窓の大きさや開閉方式などで異なります。特にガラスの性能が向上するとサッシ枠のU値よりガラスのU値の方がよくなりますから、大きなサッシではガラス面積の比率が高くなりU値が小さくなります。この表の計算値はこのような場合のサッシの標準寸法である、幅1間、高さ1.2mの窓で計算しています。仕様値と比べると、高性能な窓ほど差が大きく20~30%も違うことが分かります。

1~2地域で5等級のサッシの基準になると思われるのは、PVCサッシ+16㎜ArLOW-Eペアですが、表1の実際に近い計算値で平均1.53です。これが仕様値で2.15となっています。窓単体ではなく、住宅全体で計算してみると、120㎡モデルプランで、窓の平均U値はさらに小さく1.47になります。窓のU値は大きさによってバラバラですから、このように1戸の住宅全体に採用したときの平均U値を参考にすることも一つの方法だと思います。この場合1.5ぐらいに決めてくれれば仕様基準でも不利になることはなくなると思うわけです。早急にこの窓のU値を変更することが5等級仕様基準を策定するには必須条件だと考えます。

窓から逃げる熱と入る太陽熱〜どちらがどのくらい大きいか

さて、本題に入りましょう。私たちは窓に陽が射し込むと、家の中や、特に窓辺ではぽかぽかと暖かくなることを体験的に知っています。しかし陽が落ちると、窓辺には寒さしかありません。最近のサッシやガラスの高性能化で窓辺の寒さは大分少なくなりましたが、それでも、窓からは大量の熱が逃げていきます。

窓のU値は1.0~2.0ぐらいですが、外壁のU値は、HGW105㎜で0.4ぐらい、HGW210㎜だと0.2ぐらいになり、窓からは5~10倍もの熱が逃げるのです。それでも、晴れた日の日中は大量の熱が入り暖かくなるのです。しかし夜は、太陽は沈み、曇りの日や雪の日となると陽は射しません。冬の暖房期間全体ではどうなっているのでしょうか。

窓から入ってくる日射がどのくらいになるかの計算は、結構難しいのです。気象データとしては毎日の1時間ごとの日照時間があり、これから日射量を計算で求めることができます。このデータをもとに、QPEXでは、住宅の周辺状況、窓の方位、ガラスの日射侵入率、サッシのガラス面積比などと、太陽高度によって窓ガラスへの入射角の違いなども考慮しながら、窓から入る日射量を計算しているのです。

このデータをもとに、11月から4月までの暖房期間のうち、Q1.0住宅レベル3ぐらいの性能の住宅で、暖房が必要になる日数での平均日射取得熱と室温20℃から逃げる平均熱損失を計算してみました。暖房期間全体の1時間当たりの平均値で、窓は幅1690㎜・高さ1370㎜の引き違いサッシです。これを東西南北で計算してみました。図1に札幌、図2に帯広のデータを示します。

図1 暖房期間平均値での窓の日射取得と熱損失比較とその収支(札幌)
図2 暖房期間平均値での窓の日射取得と熱損失比較とその収支(帯広)
表2 図1・2の各社サッシとガラスのデータ

地点の日射量としては、札幌は北海道の平均値ぐらいで、帯広は最も日射の多い地点です。グラフに赤で日射取得を、青で熱損失を示します。熱損失は方位によって変わりませんが、日射は方位によって大きく変わり、東西で南の約半分、北で1/4ぐらいになります。北の日射取得は天空日射で、直達日射はほとんどありません。

このデータから、窓の熱収支を見ると各図の右図になります。札幌では各窓ともに、南でわずかにプラス。東西北はマイナスです。日射量の大きい帯広では、傾向は同じですが、南の窓のプラスがとても大きくなっています。ペアガラスとトリプルガラスを比べると、ペアの方が日射侵入率がいいため日射取得は大きいが、熱損失も大きいことが分かります。この結果、熱収支では、あまり変わらなくなります。この中で、C社のプラスが大きいことに気づきますが、これは日射熱を通しやすく熱損失も少なくなる、新型の輸入ガラスを使ったためです。日本のガラスもやがてこのような方向に進化していくものと考えられます。