今や「ソファ」は住宅に置く家具の定番ですが、そのデザインや種類は実にさまざまです。空間を彩るインテリアでもあり、毎日家族が使う道具でもあるソファ選びに頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。そこで今回はインテリアコーディネーターの本間純子さんに、ソファの張り地の基本と選び方のポイントについて教えていただきましょう。


リビングの印象を左右する「ソファ」の基本

住宅のリビングでは、3人掛けのソファがよく使われます。サイズは幅2m×奥行き90㎝程度が一般的で、シングルベッドとほぼ同じ大きさ。なかなかの存在感です。それだけに、その色やかたち、素材感は、リビングの印象を大きく左右します。

ソファの内部はかなり複雑な構造です。骨格である枠(座枠、背枠、肘枠)に、座り心地を左右する衝撃吸収材(スプリング、テープなど)を据え、腰かけた際の身体の沈み込みをサポートするクッション材(ポリウレタンフォーム、綿、羽毛など)で覆います。

その構造をまるごと包むのが、仕上げ材(上張り材)=「椅子張り地」です(以降「張り地」)。繊維織物、天然皮革、合成皮革(PU)、ビニールレザー(PVC)など、素材によって、機能や性能、手触りが異なります。

ソファ選びでは、各ご家庭のライフスタイルや好みに合わせて

  • サイズ
  • 用途に合わせた形状
  • 座り心地
  • メンテナンス性
  • インテリア性
  • 触り心地

の多方面から納得のいくものを選びたいところですが、今回は特に「メンテナンス性」「インテリア性」「触り心地」に関わる「張り地(生地)」についてご説明していきたいと思います。

「張り込み」タイプと「カバーリング」タイプ

ソファには、張り地を本体に固定する「張り込み(張りぐるみ・張り包み)」と、ファスナーなどで着脱を可能にした「カバーリング」があります。

■「張り込み」タイプのソファ

デザインの自由度が高く、座り心地や背あたりの良さ、フォルムの美しさなど、こだわりを形にできるのが、「張り込み」の大きな特徴です。ただし、丸洗いはできませんので、汚れはその都度丁寧に拭いて落とす必要があります。「できるだけキレイな状態で使い続けたい」というニーズに応え、最近では、防汚加工や撥水加工を施した張り地も増えています。

■「カバーリング」タイプのソファ

幼いお子さんのいるご家庭では特に、飲み物や食べ物による汚れやシミが、ソファ選びで気になる大きなポイントではないでしょうか。汚れは早く落とすのが一番ですが、「張り込み」のソファは丸洗いが困難です。そこで張り地を外して洗えるようにしたのが「カバーリング」です。汚れても洗える安心感に加え、デザインや生地、色違いのカバーを持っていれば、季節ごとにインテリアの雰囲気を変えることもできます。

ただ、ソファはサイズが大きく、クッションはそれなりの重さがあります。見た目にきれいな仕上がりのために、ソファにジャストサイズでつくられているものが多いので、着脱にかなりの労力を必要とすることも。購入時には「カバーの着脱のしやすさ」も確認しておくといいでしょう。

張り地(生地)の種類

ソファに腰かける度に、重さや摩擦などの負荷がかかるため、張り地には十分な「耐摩耗性」や、座り心地・触り心地などの「快適な使用感」といった機能が求められます。先に触れたように、メンテナンス性も重要ですし、インテリア性も気になります。また張り地は、紫外線によって徐々に退色し劣化します。できるだけ直射日光を避けられる場所に置くと、ダメージを抑えられます。

■天然皮革

皮革には、牛、馬、山羊、豚などがありますが、ソファには広い面積を確保しやすい「牛革」が多く用いられます。天然皮革は、吸湿性、弾力性、染色性に優れるのが特徴。他の張り地よりも高価ですが、時折専用のクリームで保湿するなどのお手入れをすると素材の味わいが深まり、長く愛着を持って使い続けることができます。

■合成皮革(PU)

基布にポリウレタン樹脂を塗布した合成皮革は、天然皮革に近い表情を持つ人工素材の張り地です。「フェイクレザー」とも呼ばれます。天然皮革よりもリーズナブルで、飲み物などをこぼしてもシミになりにくい扱いやすさも魅力ですが、湿気が多い場所で長く使用すると、「加水分解」により表面がポロポロと剥がれてくるので注意が必要です。

写真提供/(株)サンゲツ

■ビニールレザー(PVC)

「塩ビレザー」「イミテーションレザー」とも呼ばれるビニールレザーには、ポリ塩化ビニールが使われています。耐水性に富み、抗菌加工や防汚加工を施したものもあります。合成皮革(PU)よりもリーズナブルながら、柔軟性や通気性、弾力性に劣り、長期間使っていると次第に、生地表面に剥がれや割れが生じてきます。

写真提供/(株)サンゲツ

■繊維織物(布)

「ツイード」「ベロア」「ゴブラン織り」など、さまざまな織物が使われています。魅力は、色柄や素材感の豊富さ。柔らかな風合いや手触りのよさ、ナチュラルな雰囲気の空間との相性の良さが人気です。シミや汚れの取りにくさが難点でしたが、近年は止水コーティングや汚れ防止加工など、日常の汚れに強い対策をした張り地も登場していて、選択肢が増えています。

ツイード
ゴブラン織り 写真提供/(株)サンゲツ

張り地の「色」

他のインテリアと同様に、色を選ぶときに注意したいのが「面積効果」です(面積効果や対比効果については、こちらの記事をご参照ください)。色は面積が広くなるほど、明るく鮮やかに感じる傾向がありますが、ソファも同様です。そのため張り地選びの際は、できるだけ大きめのサンプルで確認しましょう。色の確認には十分な明るさも必要なので、できれば自然光が入る場所で確認すると安心です。

「ベロア」などの、毛足がある生地は、色が暗く見える方向と、白っぽく明るく見える方向があります。光沢がある素材も、見る方向によって色や表情が違うことがあるので、その点も注意が必要です。

張り地の「柄」

柄バリエーションが豊富なのは主に繊維織物、つまり布地のソファです。無地を選ぶ方が多いですが、ストライプ柄やチェック柄はリズム感を、ボタニカル柄や幾何学柄は流れや動きを空間にもたらす効果が期待できます。

ソファの形によっては、ベースを無地にして、座面や背もたれのクッションを柄の生地にするコンビネーションを楽しむのもおすすめ。「柄の中の1色を無地の色に使う」のルールを守れば、ほぼ失敗しないでしょう。

背もたれをチェック柄の生地で仕上げたソファ

張り地の見本帳には、生地サンプルと実物の写真が掲載されています。壁紙と同じように、生地サンプルでは無地に見えたのに、大きな柄の一部だった、ということもあります。必ず大きめのサンプルで、柄の配置や大きさを確認したいところです。

家具屋さんによっては、ソファに掛けて検討できるくらい大きな生地サンプルが用意されていることもあります。ソファは決して安い買い物ではありませんし、毎日使って長く付き合う大事なインテリアの一つですので、暮らしに合ったものをじっくりと選びたいですね。