温暖化が進み、夏には全国的に最高気温が35℃を超えることも多くなってきた近年。高温多湿な気候が、さらに体感温度や不快指数を底上げしています。そのため猛暑が続く夏をどう対策して乗り切るかが、健康で快適な暮らしのための大きな課題です。

そこで今回は、室内環境のプロである、ピーエス株式会社の企画開発・営業リーダーの弘田七重さんに、夏の暑さ対策と快適な室内環境をつくるポイントについてお話をうかがいました。

高温多湿の夏を乗り切る
主流はエアコン使用

日本の夏が過酷と言われる理由のひとつは、温帯モンスーン気候の特徴である湿度の高さによる蒸し暑さです。「人が暑いと感じるとき、温度だけでなく湿度によっても体感温度や不快感は変わります。気温が同じでも、湿度が高いと暑いと感じ、低いと寒く感じるのです。一般的に人が過ごしやすい温度・湿度は、夏場で気温25℃~28℃・40%~70%、冬場で18℃~22℃・40%~60%といわれています。この湿度と温度が交わるところには人が快適に感じるゾーンがあり、温度と湿度のバランスをコントロールすることが、暑さ対策のポイントのひとつです」と弘田さん。

現在、暑さ対策の主流となっているのがエアコンです。エアコンは液体が蒸発するときに周囲から熱を奪う性質(気化熱)を利用して空気を冷やす仕組みです。室内から熱い空気を取り込み、冷たい空気に変換して室内に放出しています。エアコンには除湿機能がついたものが多く、設定によって室温と湿度を調整できるのも特徴。スイッチを入れれば即冷風が吹き出し、短時間で涼しさを感じられるのが魅力です。

同時に使い方が適切でないと冷えや頭痛、倦怠感などの症状が出るなど、いわゆる「冷房病」につながる場合もあります。温度や風向きの設定、除湿機能を上手に使い、自分にとって快適な使い方を見つけることが、省エネで快適な夏の環境づくりにつながります。

では、暑さ対策において、エアコン以外の選択肢はあるのでしょうか?

「洞窟のような涼しさ」
放射冷房システム

手前の仕切りのように見えるパネルが除湿型放射冷暖房 PS HR-C

「皆さんはどんな時に心地よい涼しさを感じますか?たとえば、気温が30℃でも、木陰で風が吹いていると、それほど暑さを感じません。あるいは地下に入ると外よりもひんやりとして気持ちいいですよね?このように環境条件を整えてつくる『自然に近い涼しさ』を室内につくり出せるのが、放射冷房システムです」と弘田さん。

高温多湿な日本において、住宅もその気候に合わせて進化をとげ「夏涼しく、冬暖かい家」を目指し、住宅性能は大幅に向上しています。高断熱・高気密の住宅に合わせた冷暖房設備も数多く誕生し、いまや暖房の主力設備のひとつになっているのが、床暖房やパネルヒーターに代表される放射暖房システムです。床に埋め込んだパイプや室内に設置したパネルなどの中に温水を循環させ、室内の空気を暖める仕組みで、ストーブの温風や直接的な熱とは異なるやわらかな暖かさが特徴です。

「放射冷房は、その夏バージョンともいえるシステムで、パネルの中に冷水を循環させて空間全体を冷やし、除湿も行います。温度計を見るとそんなに低くはないのですが、体感的には心地よい涼しさで、目指しているのは洞窟のようなしっとりとした涼しさです。空気を含む環境全体を緩やかにコントロールしていくので、冷風が苦手な方や音が気になる方にも喜んでいただけています」。

数値だけではない体感を重視
自分に心地よい環境をつくる

放射冷暖房システムで温度・湿度が保たれた空間は、空気そのものを急激に冷やすエアコンに比べると、部屋に入った瞬間の劇的な涼しさは感じません。しかし暑い外気からクールダウンするような緩やかな涼しさは、外との温度差も少ないので体に優しく、長時間滞在しても体への負担は軽そうです。「蒸し暑い夏を心地よく過ごすためには、温度と湿度のコントロールはもちろんですが、IAQ(indoor air quality/空気質)を高め、健康的で快適な空気環境をつくることも大切と考えています」と弘田さん。

あえてパネルを結露させ、空気中の水分を取り除く除湿機能もあり、音もせず、本当に冷房が効いているのか忘れるほど「自然」な清涼感。実際に体感してもらいたいと、ピーエス株式会社のショールーム・PSマダガスカルでは8月5日(金)に「涼しさ体感会」を開催するとのこと。

冷暖房の音や風が気になる人にも最適
受け皿に溜まった水滴は雑巾で拭き取るだけでOK

「夏の暑さをどう乗り切るかの選択肢が増えていると感じます。温度や湿度の数値はひとつの目安ですが、何を涼しいと感じるか、どんな環境が心地よいのかを考え、短時間で瞬間的に冷やせるエアコン、緩やかに自然な涼しさを感じられる放射冷房など、自分の体や生活スタイルに合ったシステムを組み合わせて、夏の不快感を解消しQOL(クオリティーオブライフ=生活の質)を向上させることが第一かと考えます」と、弘田さんからアドバイス。

涼しさも「質」の時代。快適な夏を過ごすための環境づくりを、視野を広げて考えていきたいものです。

(文/Replan編集部)

取材協力/ピーエス株式会社


◎まるで洞窟のような「涼しさ体感会」
日時:2022年8月5日(金)
会場:PSマダガスカル 北広島市共栄41-3 ピーエス北海道支店内ショールーム
内容:セミナー・フリー見学(申し込み制


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