先日の記事「家づくりの前に要チェック!住宅の補助金2022」では、環境に配慮し暮らしのクオリティーを向上させる高性能住宅の建築で受けられる補助制度についてお話しました。

ただ家は建てて終わりではなく、その後もさまざまなお金がかかります。そのひとつが税金。減税やローン制度によっては数百万単位の差額が出る場合もあります。今回は2022年に新築住宅を取得する際に利用できる減税制度についてご紹介しますので、これから家づくりを考えられる方は補助金の記事と併せてご覧ください。

住宅ローン減税

住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)とは、住宅ローンを組んで住宅を新築、もしくは増改築を行った場合に利用できる減税制度です。年末のローン残高の一部を所得税(一部、翌年の住民税)から、契約時期と入居時期に応じて控除。住まい手のイニシャルコストの負担を軽減してくれます。

2021年12月末までの居住開始を条件に制度が終了する予定でしたが、令和4年度の税制改正により、2025年末までの4年間の延長が決まりました。今回の改正では、控除率が一律1.0%から0.7%に縮小されましたが、代わりに控除期間は10年から13年に延長されました。

ローン残高の上限額は、住宅の省エネ性能と居住年によって変動します。また2024年からは上限額が引き下げられますので、近いうちに家づくりを考えているなら、早めに動いたほうが良さそうです。

分類

居住年

ローン残高
上限額

控除率

控除期間

最大控除額

長期優良住宅
低炭素住宅

2022〜2023

5,000万円

0.7%

13年

455万円

2024〜2025

4,500万円

409.5万円

ZEH水準省エネ住宅

2022〜2023

4,500万円

409.5万円

2024〜2025

3,500万円

318.5万円

省エネ基準
適合住宅

2022〜2023

4,000万円

364万円

2024〜2025

3,000万円

273万円

それ以外の住宅

2022〜2023

3,000万円

273万円

2024〜2025

2,000万円

10年

140万円※

※2023年までに新築確認がされている場合

中古住宅の場合、これまで構造によって築年数の条件(木造/築20年以内、鉄骨・鉄筋造/築25年以内)がありましたが今回の改正で廃止されました。1982年(昭和57年)1月1日以降の住宅であれば適用対象になりますので、リフォームやリノベーションを検討している方も住宅ローン減税を受けられる可能性が広がりました。

分類

ローン残高上限額

控除率

控除期間

最大控除額

長期優良住宅
低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅

3,000万円

0.7%

10年

210万円

それ以外の住宅

2,000万円

140万円

詳細はこちらをご覧ください▶ 住宅ローン減税

低炭素住宅の一例

省エネ性能に優れた住宅の普及促進に係る特例措置

カーボンニュートラルの実現に向けて住宅分野での温暖化対策の強化が求められているなか、省エネ性能の高い住宅の普及を促すことが税制支援の目的で、その特例措置の代表格が前述した「住宅ローンの減税」です。

そのほか「登録免許税」や「不動産取得税」、「固定資産税」についても軽減措置が設けられています。こちらも税制改正により適用期限が2024年3月31日まで延長されました。

「登録免許税」は、一定の性能水準を満たした住宅の場合、税率が一般住宅特例よりも引き下げられます。

分類

所有権保存登記の税率

所有権移転登記の税率

長期優良住宅

0.1%0.1%

低炭素住宅

戸建て:0.2%
マンション:0.1%

0.1%

「不動産取得税」は、課税標準からの控除額を一般住宅特例より100万円増額。固定資産税は一般住宅特例(1/2減額)の適用期間がそれぞれ既存より2年ずつ延長され、高性能住宅の建築をサポートします。

分類

不動産取得税

固定資産税

長期優良住宅

・1,300万円控除
・税率を3%に軽減
税額を1/2に減額
(居住部分の床面積120㎡までに相当する税額が対象)
戸建て:5年間、マンション7年間

それ以外の住宅

・1,200万円控除
・税率を3%に軽減

税額を1/2に減額
(居住部分の床面積120㎡までに相当する税額が対象)
戸建て:3年間、マンション:5年間

詳細はこちらをご覧ください▶
省エネ性能に優れた住宅の普及促進に係る特例措置

長期優良住宅の一例

贈与税の非課税措置

親や祖父母(直系尊属)などから住宅取得資金の贈与を受けるケースもありますが、その場合に使える制度として、「贈与税の非課税措置」があります。こちらも2021年が期限となっていましたが、2年間の延長が決まりました。

贈与を受けると、通常基礎控除である110万円を超える金額に対して贈与税がかかりますが、それを500万円まで非課税とし、さらに一定の性能水準を満たした良質な住宅の場合、限度額が上がる仕組みとなっています。ほかの制度同様、住宅の性能・品質の高さがポイントとなっています。

一方この制度は、非課税限度額が年々縮小されており、ここ3年で1/3の水準になりました。今後さらに縮小される可能性が高く、制度自体がなくなってしまうかもしれません。親や祖父母からの資金援助を考えている方は、少し急いで検討を進めたほうがいいでしょう。

分類

非課税限度額

一定の耐震性能、省エネ性能、バリアフリー性能を有する良質な住宅

1,000万円

それ以外の住宅

500万円

詳細はこちらをご覧ください▶ 贈与税の非課税措置

耐震等級3を確保した住まいの一例

【フラット35】

住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する全期間固定金利型住宅ローン【フラット35】。ずっと固定金利で、市中金利や物価が上昇しても、資金受取時に確定した借入金利で返済を継続できるので、安定した資金計画を立てられるというメリットから多くの方に利用されている住宅ローンです。さまざまな要件や組み合わせで、さらなる金利引き下げが可能なのが特徴です。

ここでは【フラット35】の4メニューについて簡単に紹介します。詳細についてはこちら(【フラット35】WEBサイト資料)をご確認ください。

【フラット35】S

【フラット35】を利用する方が、省エネルギー性・耐震性などを備えた質の高い新築住宅を取得する場合に、借入金利を一定期間引き下げるメニューです。

2022年10月からは、省エネルギー性の基準と中古住宅のバリアフリー基準が強化される予定です。免震建築物と中古住宅の場合は、一部緩和される基準もあります。

また同時期に、【フラット35】S(ZEH)が新設されます。ZEH基準に適合する場合、【フラット35】の借入金利から当初5年間年0.5%、6年目から10年目まで年0.25%、金利が引き下げられます。

【フラット35】リノベ

【フラット35】を利用する方が、一定の要件を満たすリフォームを実施する場合に、借入金利を一定期間引き下げるメニューです。「中古住宅を購入後に自らリフォームを行う場合(リフォーム一体タイプ)」と「住宅事業者がリフォームを行った中古住宅を購入する場合(買取再販タイプ)」があります。

【フラット35】維持保全型

2022年4月に新設されたメニューで、維持保全・維持管理に配慮した住宅や既存住宅の流通に資する住宅を取得する場合に【フラット35】の借入金利を一定期間引き下げる制度です。

①長期優良住宅(新築住宅、中古住宅)
②予備認定マンション(新築マンションのみ)
③管理計画認定マンション(中古マンションのみ)
④安心R住宅(中古マンションのみ)
⑤インスペクション実施住宅(劣化事象等がないこと)(中古住宅のみ)
⑥既存住宅売買瑕疵保険付保住宅(中古住宅のみ)

上記の①から⑥までのいずれかに該当する住宅が対象で、当初5年間、年0.25%まで金利が引き下げられますが、【フラット35】Sと併用することで、最大年0.5%まで金利を引き下げることができます。

【フラット35】地域連携型
このメニューは、「子育て支援」と「地域活性化」の2つのタイプがあり、それぞれにに積極的な地方公共団体と住宅金融支援機構が連携し、住宅取得に対する地方公共団体による財政的支援と併せて、金利を一定期間引き下げることで、マイホーム取得を応援する制度です。

2022年4月から、子育て支援プランの金利の引き下げ期間が、当初の5年から10年に延長されました。そして両方とも【フラット35】Sと併用が可能で、最大年0.5%まで金利を引き下げることができます。

詳細はこちらをご覧ください▶ 【フラット35】

補助金制度同様、税金や住宅ローンの部門でも、脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして、省エネ性能の高い住宅へさらなる支援を行っていることがわかります。

実際、そのような住宅は環境に優しいだけでなく、イニシャルコストの軽減や住まいの長寿命化にもつながります。日頃の暮らしの快適性が良くなるうえ、長期的に見ると経済性の面でも有利なのです。ZEHや長期優良住宅といった高性能・高品質住宅を前提にさまざまな支援制度を活用しながら、お得に家づくりを進めてくださいね。

(文/Replan編集部)