家族や働き方の変化に伴って、「キッチン」に求められる機能も変化しています。さらに、おうちでご飯をつくって食べる機会が増え、キッチンの役割を考え直している人も多いのではないでしょうか。住宅雑誌『Replan北海道vol.134』(2021年9月28日発売)では巻頭特集「いまどきキッチン」で、さまざまな暮らし方のご家族が求めたキッチンのかたちをご紹介しています。
今回は、本誌特集内に掲載された住宅を設計した建築家の方に、住まいにおけるキッチンの位置づけや暮らし方の変化について、コメントをいただきました。
宮城島崇人建築設計事務所
宮城島崇人さん
「キッチンの今」考察
自分たちが求める暮らしはどんなものなのか。その「問い」に向き合い、「答え」を自分たちなりに、自由に考えてみることに、多くの人たちがリアリティーを持ち始めたように感じる。成熟したように見えて、実はデタラメとツギハギだらけの社会を、リアルタイムで目の当たりにしているからかもしれない。僕らはその「問い」を受けとり、この世界にまだ存在しない、新しい住まいを考える。いやむしろ、その「問い」に真剣に向き合うほど、住まいは新しい様相を呈してくると言ったほうが正しい。
キッチンはだいたいどの家にもある。そこはもともと住まいの中で最もアクティブな場所だった。炎があがり、水が流れ、煙がのぼる。生の野菜や魚、肉が運び込まれ、そして出ていく。何かを収穫したり、干したり、加工したり。さまざまなモノが行き交い、かたちを変え、活力が生まれる。そこは世界に開かれたダイナミックな場所だ。知恵とスキルに溢れた、化学の場であり、物理の場であり、歴史の場であり、美術の場である。そんな場所は他にない。
ある時代の要請が、その生き生きとした空間を、システムキッチンという機械に納めて住宅の隅に押しやってしまったのならば、わたしたちは住まいからとても大事な空間を失ってしまったように感じる。どう暮らすかという「問い」をたてるとき、きっとまだ僕たちはキッチンを避けて通れない。凝り固まったキッチンのイメージをひっくり返してみると、「問い」の答えがふっとそこに見えてくるのかもしれない。
【 Replan北海道vol.134掲載事例 】
既存住宅にキッチン棟を増築しリノベーションした札幌市内の住まい。「キッチンはアクティブな空間」という施主と建築家の共通認識のもと、家族の会話が弾む場所としても、多くの人が集まるコミュニティーの場としても機能するように位置づけられた。
Replan北海道vol.134の巻頭特集「いまどきキッチン」では、実際に家を建てた人の暮らし方とキッチンに求めたもの、その使い方を事例を通じて紹介しています。キッチンを快適に使いこなすための収納のコツなどもお伝えしていますので、ぜひご覧ください。
Replan北海道 vol.134
2021年9月28日(火)発売北海道内の主な書店やコンビニのほか、
Replanの販売ページやamazon、fujisan等
オンラインでもご購入いただけます。