前回は「間取りの検討に役立つ!ドアや引き戸など「建具」の基本」と題して、家づくりの中でよく使われる建具(ドアや引き戸)のバリエーションをご紹介しましたが、今回はその続き。特にどの家でも使われることの多い「ドア(開き戸)」に関わるさまざまな基本や家づくりで考えておきたいポイントを、インテリアコーディネーターの本間純子さんに教えていただきましょう。
ドアの「内開き」と「外開き」には理由がある
日本の住宅のドア(開き戸)は、原則として「内開き」で室内側に開きます。理由は防犯対策です。内開きなら家具などでドアを押さえて、侵入者を止めることができます。例外は、玄関とトイレのドア。この2ヵ所は原則「外開き」とされています。
玄関ドアは、雨仕舞いが良いことと、玄関で靴を脱ぐ習慣があることから外開きが基本です。内開きだと、玄関で人が靴を脱ぎ履きしているときに、開けたドアにぶつかってしまう恐れがあります。室内土足厳禁の日本の生活文化が、玄関ドアを外開きにしたと言えるかもしれません。
トイレのドアは店舗や学校をはじめとする公共施設では内開きですが、住宅では外開きです。万が一家のトイレ内で人が倒れると、その人が内側からドアを押した状態になって救助を妨げる恐れがあります。そのような事態を防ぐために、外側に開くようにしています。
その他の部屋のドアは原則内開きです。日本の場合は防犯上と言うよりも、外側にドアが開くと、廊下にいる人にぶつかってしまうのを防ぐためでしょう。リビングやダイニングのドアなど、人の出入りが多い部屋のドアにガラスを入れるのは、ドアの近くにいる人の気配を感じやすいという理由もあります。
ドアの取っ手は「レバーハンドル」が主流
住宅のドアは、ノブ(握り玉)やレバーハンドルなどで開閉します。ビンテージ感のあるデザインの住まいなど、テイストによってはノブを選ぶ方もいますが、しっかり握って手首で回す動作が必要で、使いにくさを感じる場合も…。今は子どもから高齢者まで使いやすい、レバーハンドルが主流です。
種類が豊富で素材や形状、サイズ感はさまざまなので、実際に握ってみて、手にしっくりなじむものを見つけてください。塗装仕上げよりメッキ仕上げの方が丈夫です。指輪やブレスレットなどで傷つくことがあるので、気になる方は表面処理もチェックしましょう。
日々のストレスをさりげなく軽減する、ドアまわりの部材
日常生活の中では、物を運び込んだり、風通しを良くしたりするために、ドアを開け放しておきたいときがあります。またドアが急に大きく開いて怪我をしては危険ですし、開けたドアを壁や家具にぶつけて傷をつけても困ります。それを防ぐためにさりげなく役立っているドアまわりの部材があります。
そのひとつが「戸当たり」。レバーハンドルやノブで、壁や柱、建具枠などが傷つくのを防ぐクッションの役割をするドアまわりの部材です。取り付け場所は、床・壁・幅木・ドアなど、状況に応じてさまざまです。
床に取り付ける戸当たりには、単純にドアの取っ手の直接的な衝突を防ぐためのものと、ドア付けたフックを戸当たりのリングに引っ掛けて、ドアが勝手に閉じてしまわないよう固定できるタイプがあります。本体は数㎝ほどの高さがあるので、なるべく歩行や掃除の妨げにならない位置を選んで取り付けます。
リングに掛けるには屈まなくてはいけないので、掃除の際などに少々不便です。その点ドアの開きの固定と解除を少しの動作で行える「ドアキャッチャー」はなかなかの優れもので、採用する住宅も増えています。
平たい円形で5㎜厚程度の戸当たりを床に設置。ドアを押すと、ドア側に取り付けたストライクが戸当たりのバンパーをキャッチして固定され、再度押すと固定が解除されます。類似の形状のマグネットタイプは、ドアが近づくと磁石が引き合い固定します。磁力が弱いと風でドアが閉じてしまうことがあるので、ショールームなどで確認できるといいですね。
戸当たりを取り付けるのが難しい場合は、「アームストッパー」を付けるという方法もあります。ドアの上部と建具枠をつなぐように取り付け、一定の開口角度でドアの開きを止める金物です。 訳あって開口を制限していますので、無理に開きすぎないよう注意が必要です。ドアの取っ手の衝突を防ぐだけであれば、ドアの上部に付ける戸当たりも有効でしょう。
ほとんどの住宅に採用されている「ドア」は、家族が日常の中で頻繁に使いますし、空間を仕切ったりつなげたりという大きな役割も担っています。それだけに、デザインや価格だけでなく、機能や使い勝手まで考えて検討してみてくださいね。