地震が続く日本

だいぶ前ですが、次に大地震が起こる可能性が高いのは東南海地震だといわれていました。ところが2011年に東日本大震災が発生。以来、全国各地で大きな地震が続いています。

北海道では、地震によって大停電が起こり、ブラックアウトと呼ばれました。その経験から、ソーラーパネルを設置する住宅が増え、夜のために電気をためる蓄電池も急速に普及しました。熊本では立て続けに2回の地震が襲い、住宅の耐震性が大きな問題になりました。最近、私が住む東北の仙台を中心に震度5~6の地震が3回も起き、私のマンションはエレベーターが止まり、19階からの階段の上り下りを体験させられました。  

「災害に備える」というテーマでこの連載の第15回にも書いたのですが、平成12年以前に建設された日本の木造住宅は、かなりの比率で地震の被害を受けてしまいます。それは熊本の地震でも証明されています。

また、ほとんどの住宅で断熱が効いていませんから、寒い冬に停電が続くと、ガス・水道も止まり、暖房が停止して、寒さをしのがなければなりません。真夏もエアコンが止まるので、熱中症にならないよういろいろ対処が必要になります。  

こうした災害に備えて、住宅はどうあるべきかを、普段から議論を進める必要があります。ソーラーパネルや蓄電池は停電に備える設備でしょうが、最低でも200万円はかかります。電気自動車の電気を使うことを自動車メーカーは宣伝していますが、これだけでは使ってしまえばそれで終わりです。自動車のエンジンで充電できるPHVの方が災害には強いような気がします。エコキュートの温水器は、400Lぐらいの水を常時蓄えていますから、いざというときは簡単に水が出せる機器が販売され始めています。これも、どうせなら太陽熱給湯器のほうが、お湯も使える可能性があります。これらの設備機器は、メーカーが熱心に営業していますが、ユーザーの関心は薄いようです。

こうした設備機器も大事ですが、やはり一番大事なことは、住宅本体の地震や暑さ・寒さに対応する性能でしょう。私たちは、地震にも強く、容易に高断熱住宅を建設できるようにしようと、工務店・設計事務所向けの「Q1.0住宅設計・施工マニュアル」を2020年に出版しました。Q1.0住宅のような高断熱住宅では、わずかな熱で室温を保つことができます。停電で暖房が止まっても、太陽熱や人間が出す熱などで、室温を外気よりかなり高く保つことができるのです。夏の暑さについても、通風良く日射を遮る設計ができていれば、エアコンがなくてもかなり暑さを緩和できます。

東日本大震災の4年前に断熱・耐震同時改修を実施した仙台の住宅

私が監修して出版した「燃費半分で暮らす家」(2017年市ヶ谷出版社)という本は、Q1.0住宅について一般の方々向けに書いた本ですが、その中に、仙台で東日本大震災の4年前に断熱・耐震同時改修を行い、震災を経験した状況を紹介する事例を掲載しました。

実は私たち新住協の理事で、長年事務局長を務めていただいたAさんが自宅を改修したのです。この事例の文章は、Aさん自身がお書きになっているので、まずそれを読んでいただきたいです。


【Aさんの手記】

老後を考えてのわが家のリフォーム計画

築26年のわが家を平成19年(2007年)の暮れに全面的にリフォームしました。場所は仙台です。

私は、新住協で高断熱住宅の普及・啓蒙の仕事をしてきて、およそ25年になります。わが家はその専門技術を活かし、仲間諸氏の協力を得て、断熱性と耐震性を同時に向上させる改修工事を行いました。

具体的には、

1 全室暖房で暖かく、快適に暮らしたい
2 年間暖房費が2~3万円の省エネ住宅にする
3 大きな空間をつくって、広々と暮らしたい
4 予想される大地震に耐える家にしたい
5 老後も暮らしやすい間取りに変えたい
6 水まわりの設備なども一新したい

などを計画し、断熱材を厚く入れ耐震補強を加え、ほぼ予定どおりの工事ができました。家族3人が住んだまま工事を進めたので、実験的とはいえ少々難儀しましたが、リフォームは大成功でした。  

省エネ快適という点では、年間2万円の灯油で12月から3月まで寒さ知らずに暮らすことができています。

図1 A邸 改修前平面図
図2 A邸 改修後平面図
図3 A邸の手記掲載の本(市ヶ谷出版社)