暖房のCO2排出量は減っていない
つまり、同じだけ電気を使っていても、CO2排出量は自動的に18%も少なくなったことになります。そのため、電気だけ使われる「照明・家電」は35%も減少しました。普及が目覚ましいLED照明も効果があったのでしょう。「給湯」も、ヒートポンプ給湯機(エコキュート)の普及効果なのか、13%減少しました。しかし、建物自体の断熱・気密が重要な「暖房」は、3%減と、ほとんど減っていません(図4)。
全体だけ見ていると順調に減っていると勘違いしそうですが、一度建てられたらずっと影響が残る「建物自体の性能」確保は大して進んでいるとはいえないのです。
「D判定」連発の住宅対策26%目標すら達成不可能?
この疑念を裏付けるように、3月9日に開催された147回環境省地球環境部会で温暖化対策の進捗が報告され、住宅関係でA判定(目標をすでに達成した)を受けたのは「高効率照明LED」だけで、その他はD判定(このままでは2030年度に目標を下回る)が連発されました(図5)。
つまり、もともとの「日本全体で26%削減目標」すら、住宅部門はまともに達成ができていないことが明らかになったのです。
再エネタスクフォースで住宅政策をゲームチェンジ
このままでは新たな「日本全体で46%削減目標」など、達成は到底不可能。ここで、再エネ推進と規制改革を旗印とする「再エネタスクフォース」が動きます。
2月24日にオンラインで行われた第5回会合において、住宅・建築物における省エネ・再エネが取り上げられ、この分野における政策の遅れが厳しく追及されました(図6)。筆者も、発表の時間をいただき、日本の住宅における省エネ政策の問題点についてお話ししました。
目標実現に向けたバックキャスティングへの政策転換
まず現状では、住宅の省エネ基準は適合義務化がなされておらず、未だに最低限の省エネ性能も確保されていない恐れのある新築がどんどん建てられており、施主が知らない間に低性能住宅を購入してしまう可能性が高いことを問題提起しました(図7上)。
つまりこの2021年でも未だに、新しく買った家で「寒い・暑い・電気代が高い」暮らしを強いられる恐れがあるということです。
そして、こうした住宅性能向上の遅れは、「直近で簡単にできる手法だけ積み上げる」フォワードキャスティング政策のツケであること。未来にみんなが「暖かい・涼しい・電気代の心配なし」で暮らすためには、その目標から逆算してきちんとした計画を立て、進捗をチェックし改善する「バックキャスティング」への政策転換が不可欠であることをお伝えしました(図7下)。
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