シンプルな生活動線や間取りの希望が叶いやすいなどの理由から、根強い人気を持つ平屋の住まい。リノベーションの分野においてもその魅力は衰えず、既存の平屋を活かすのはもちろん、減築or増築でロフト部分を設ける「平屋風」の住まいなど、リノベーションによって暮らしがぐっと快適になった例も多くあります。今回は特徴別に見た4つの実例をもとに、平屋のリノベーションにはどういったものがあるのかをご紹介します。


【活かす】
86年にわたる家族の歴史と大切な思い出を未来へつなぐ、古民家リノベーション

昭和9年築の平屋の古民家をリノベーションした住まい。基礎や外壁など活かせる部分は残し、間取りもほぼ当時のままで、課題であった水まわりの改修と断熱性能の向上に注力しました。現しにした当時の柱や鴨居もさることながら、和室に残る立派な太鼓梁は見せ梁として再生されるなど、家族の歴史と子どもたちの成長を見守り続けています。

ご主人を含め、弟さんやお父さん、その兄弟皆が生まれ育った我が家。元の家の面影はできる限り残したいという要望があった
ご主人を含め、弟さんやお父さん、その兄弟皆が生まれ育った住まい。当時の面影はできる限り残したいという要望があった

12.5帖の広いリビング・ダイニングは家族の憩いの場。左奥には和室、右奥にはキッチンがあり、それぞれ造作の建具で間仕切りしている。一つひとつの部屋が大きさが引き継がれ、開放感あふれる住まいとなった
12.5帖の広いリビング・ダイニングは家族の憩いの場。左奥には和室、右奥にはキッチンがあり、それぞれ造作の建具で間仕切りしている。一つひとつの部屋が大きい既存の間取りが活かされ、開放感あふれる住まいとなった

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【増やす】
2階建てのように使える平屋。大空間LDKで心地よい暮らしを

ウッドデッキは状態が良かったのでそのまま残した。藤棚だった木組みはブランコの支柱として活用された。庭遊びやランチを楽しむなど、大満足の様子

屋根を片流れにすることによって出来た空間を活かし、ロフトを設けた例。基礎と骨組み部分だけを残す、大規模なリノベーションを計画しました。洋室2部屋と納屋が配されたロフト空間はダクトスペースを設けることによってオーバーヒートの恐れをなくし、空気の循環も良好に。今後は、子ども部屋やワークスペースとしても活躍することが期待されます。

もとの家は昭和40年に住宅供給公社で建てた建売の家で、3K仕様。昔ながらの団地だが、小学校まで徒歩5分、中学校まで徒歩3分と子育て世代にぴったりのエリアにある
もとの家は昭和40年に建てられた。昔ながらの団地だが、小学校まで徒歩5分、中学校まで徒歩3分と子育て世代にぴったりのエリアにある

勾配天井が印象的なリビング。奥の壁にはラスティックな趣漂うヘリンボーン柄のリアルパネルを施工した
勾配天井が印象的なリビング。奥の壁にはラスティックな趣漂うヘリンボーン柄のリアルパネルを施工した

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【減らす】
趣味を楽しむ暮らしを実現した、ステンドグラスと木の家

2階を洋室2部屋とフリースペースのみに減築し、平屋風に過ごせるようリノベーションした例がこちら。2階部分を減らした分、勾配天井と吹き抜けを設けたことで風通しが良く、家族の動きも見通しやすくなりました。奥さんの趣味であるステンドグラスは家中の建具に配され、無垢材とも好相性。温かくてどこか懐かしい空間に仕上がりました。

90歳を超えたお母さんが施設への入居を決め、2階で暮らしていたご夫妻も階段が負担になってきたことで減築リノベーションを決意
90歳を超えたお母さんが施設への入居を決め、2階で暮らしていたご夫妻も階段が負担になってきたことで減築リノベーションを決意

ロフトのような2階空間は、ご主人たっての希望。「1階は低めの天井高なのですが、勾配天井と吹き抜けがもたらす開放感が気持ち良いんです」
ロフトのような2階空間は、ご主人たっての希望。「1階は低めの天井高なのですが、勾配天井と吹き抜けがもたらす開放感が気持ちいいんです」

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【減らす/つくる】
古き良きモノをありのままに愛おしむ。経年美を尊重した民家再生

築59年の木造平家に減築とセルフビルドを交え、当時の面影を残しつつ息を吹き返した実例。過去に増築した部分を解体し、元来の住宅部分に手を入れるプランを構成しました。ご主人自らも床塗装や塗り壁の一部を仕上げたり、古材や古道具の活用方法を考えるなど積極的にリノベーションに参加。ご主人の住まいに対する愛情が伝わってくる、経年美を活かした佇まいとなりました。

昔ながらの日本家屋を感じさせる木造平屋建ての住宅。断熱材がまったくない土壁の家であるため隙間風も多く、屋根の不具合からくる雨漏りにも長年悩まされていた
昔ながらの日本家屋を感じさせる木造平屋建ての住宅。断熱材がまったくない土壁の家であるため隙間風も多く、屋根の不具合からくる雨漏りにも長年悩まされていた

現しの梁や板張り天井が開放的なリビングは、左官仕上げの壁と床の色合いが空間に落ち着きをもたらす。主暖房には薪ストーブを新設。物は元々あったものを最大限活かし、「あるがまま」を大切にした空間に
現しの梁や板張り天井が開放的なリビングは、左官仕上げの壁と床の色合いが空間に落ち着きをもたらす。主暖房には薪ストーブを新設。物はもともとあったものを最大限活かし、「あるがまま」を大切にした空間に

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目的によってリノベーションの手法はさまざま。現存する素材の良い部分は活かし、必要な分だけ手を加えると、もとの風合いを崩さず、コストも抑えられる場合もあります。これからその家に住む家族にとって何が必要で、何を取り除くべきなのか…次世代につながるリノベーションができるよう、プランを練ってみてくださいね。

(文/Replan編集部)

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