先日の記事「快適さと健康な住まいに欠かせない!「換気」の基本」では、住宅における換気の重要性や、主に使われる機械換気の種類について説明しましたが、実際に自分の家がうまく換気できているのか、気になりますよね。実は、自宅の換気を簡単に自己診断できる方法を紹介した動画があります。
この動画は、農業、水産、森林、産業技術、エネルギー・環境・地質および建築・まちづくりの各分野に関する試験、研究、調査、普及、技術開発、技術支援、事業家支援などを行う総合試験研究機関「北海道立総合研究機構(以下、道総研)」で制作したもので、家にあるビニール袋などを利用して換気風量を調べることで、正しく計画換気が行われているかを、住まい手自身がチェックできるという内容です。
今回リプランでは、この換気風量と快適な室内環境について、その分野の専門家である道総研 建築研究本部の村田さやかさんにお話をうかがいました。
改めて、住宅の換気はなぜ必要ですか?
村田 目には見えませんが、密閉された室内には日常生活の中で発生する水蒸気・臭気に加え、燃焼ガスや二酸化炭素、シックハウス症候群をもたらす揮発性有機化合物(VOC)、ウイルスなどが滞留しています。暮らす人や住まいの健康に大きく影響するこうした湿気や空気の汚れを排出し、きれいな空気を採り込むために「換気」が必要なのです。昨年来、新型コロナウイルス感染予防対策としても、住まいの換気が注目されています。
近年、北海道の住宅性能はめざましい進化を遂げ、室内に隙間のない高気密住宅が一般的になりました。このため、室内の換気を適正にコントロールする計画換気が不可欠です。計画換気には、採り込んだ外気を暖めて室内に循環させる熱交換型の第1種、強制排気によって換気する第3種、冬季の温度差によって自然な空気の流れをつくるパッシブ換気の3種類があります。昨今の新築では、空間プランや予算に合わせて最も適したシステムが採用されています。
換気をテーマにした動画を制作した理由は?
村田 実はこの動画は、住宅性能の基準を厳しく定めた「北方型住宅2020」についての講習会の教材の一つとして制作したものです。気密性の高い住宅の場合、計画換気が徹底されていないと、換気不足から結露が生じ、カビの発生や建材の腐食などを招きます。また、計画換気を採用しても設計・施工が良くない場合には、換気も正しく行われません。引き渡し後には、正しく計画換気ができているかの確認も必要です。
そこで、身近なものを利用して換気風量を調べる方法を紹介したのがこの動画なのです。施工側である工務店さん向けに制作したものですが、これから家づくりをする方にとっても、住まいの「見えない空気」を意識するきっかけの一つになると思います。
健康的な空気環境を保つために、必要な換気風量は?
村田 2003年に定められた建築基準法では、換気風量は容積の1/2と定められています。それ以前は、1人換算で25~30㎥/hといわれてきました。
数字でいわれてもピンとこないという方も多いと思いますが、二酸化炭素濃度1,000ppm以下が、オフィスワーク程度の運動量の場合に1人あたり30㎥/h程度の換気ができている目安といわれています。また、冬の湿度が60%を超えた場合も、換気不足のサイン。冬の高湿度は、カビの原因になりますのでご注意ください。
その換気不足を「見える化」してくれるのが、湿度計と二酸化炭素濃度の測定器。多少の誤差は生じますが、家庭用の商品も販売されています。室内にたくさんの人がいて換気をしない場合、あっという間に二酸化炭素濃度が2,000ppmを超えます。また、今までなかった場所に結露が出始めたら、それも換気風量が足りないサインの一つ。そうした数字や現象に敏感になり、意識することが適正な換気風量を保つ秘訣です。
換気風量が足りない場合の対策は?
村田 室内の対角にある窓を室温が下がらない程度に開け、空気の流れをつくることで換気を促すことができます。流入する外気が直接体に触れない位置の窓を開けることも、寒さ対策に効果的なポイントです。
また、新築から年数が経っている場合は、換気装置のフィルターの点検も。換気の種類によって、フィルターの設置場所が異なりますので、まずは取扱説明書で確認してください。フィルターが天井裏などの手が届きにくい場所にある、または換気風量に変化がない場合は、施工会社などにお問い合わせください。気密度が高い住宅が当たり前になった今、愛着のあるマイホームに長く健やかに住み続けるためにも、換気を意識した暮らしが大切です。
上述している通り、空気の流れは目には見えないものですが、換気風量のチェックをはじめ、二酸化炭素濃度・湿度・結露などが教えてくれる換気不足のサインを敏感にキャッチすることで、換気の効率を上げることができます。日頃の換気への意識を高め、より快適で健康な暮らしを実現しましょう。
(文/Replan編集部)
取材協力/北方建築総合研究所