リプランで取材にうかがうと、最近はほとんどの住宅で目にする「タイル」。近頃はデザインのバリエーションも豊富で、個性や好みのテイストを表現するのにぴったりの内装仕上げ材のひとつです。ただ、一口に「タイル」といっても実はその種類はさまざまです。そこで今回はインテリアコーディネーターの本間純子さんに、家づくりにおける「タイル」について教えていただきましょう。
「タイル」の原料は、陶磁器や便器と同じ
私たちが毎日使っている茶碗や皿などの食器は「瀬戸物」または「陶磁器」と呼ばれます。原料は天然の粘土や石英、長石などで、これからお話しするタイルと同じです。ちなみに、ほとんどの便器の原料も同じ陶磁器で、産地もほぼ同じ。違いは形と用途のみです。
「タイル」は目的別につくられている
建築で使われるタイルは「壁用」「床用」「室内用」「屋外用」「浴室用」など、用途に合わせて製造されています。各メーカーが出しているタイルのカタログには用途区分のマークが付いているので、提案の際にはこれを参考に施工箇所を検討しています。
例えば、床用のタイルは磨耗しにくく、衝撃にも耐えられるように。内装壁タイルは意匠性をより重視してつくられています。屋外の床用のタイルは、一見すると室内でも使えそうですが、雨や雪の滑りにくさを重視したつくりになっているので、場合によっては室内履きや靴下の底を傷めてしまいます。そのためタイルはデザインも大事ですが、「用途に合わせて選ぶ」ことが肝心です。
寒冷地では、タイルの割れや剥離に注意
タイルは水に強い材料ですが、寒冷地では使用場所や施工条件によって凍結でタイルが割れたり剥離したりすることがあるため、カタログには「耐凍害性適性マーク」が付されています。寒冷地の外壁や玄関、玄関ポーチ、テラスなどのタイルを選ぶときは、このマークがチェックポイントです。
なお、イタリアをはじめ、あまり寒くない地域で生産されたタイルの中には、凍害に強くないものもあります。インターネットなどで見つけて個人で購入した海外製のタイルを、凍結の心配がある屋外で使いたいときは要注意です。
水洗いできるタイルかどうか、要確認
タイルは清掃性が良い仕上げ材なので、どれでも水洗いができそうなイメージですが、浴室用や屋外用以外の用途指定があるものは、水をかけられない場合が多いです。万が一、水洗いに適さないタイルの周囲や裏側に水がまわると割れや剥離の原因になりますので、水洗いが可能かどうか確認し、扱いに注意しましょう。
玄関や土間空間の床タイルは、大判サイズが人気
かつて玄関床タイルは10㎝角が定番でしたが、今の床用タイルは大判化の傾向にあります。10㎝角の床タイルは、目地を多くすることで滑り止めの効果を持たせていましたが、最近よく使われる大判サイズのタイルは、表面の凹凸加工によって滑りにくくなっています。清掃性が良いのも魅力ですね。今どきのすっきりとしたデザインの建物の床には目地数が少ないタイルの方が似合います。このバランスの良さが大判サイズのタイルの人気の秘密かもしれません。
石のような素材感のタイルが、室内のアクセントに
最近多いのが、石のような素材感を再現したタイルを室内の床材として用いるケースです。例えば大理石は高級感があって人気の一方で、水やアルコールによって変色したり、光沢がなくなってしまったりするなど、扱いが難しい素材です。でも石調タイルは寸法精度に優れ、生産量も安定しています。印刷や加工技術の向上によって本物の石と見紛うばかりの仕上がりです。
ただしタイルは、木やクッションフロアなどと比べて硬いので、長時間立っていると足腰に負担がかかります。室内の床をタイル仕上げにする場合は、クッション性のあるルームシューズが必要かもしれません。そして、くれぐれもグラスなどの割れ物を落とさないように気を付けましょう。悲しいくらいに…粉々に割れます。
バリエーション豊富な「モザイクタイル」
大判タイルが注目される一方で、小型タイルのモザイクタイルも人気です。シートに並べた状態で現場に届き、そのまま壁面に貼り付けて、目地を埋めれば完成。タイルの色の組み合わせやその割合を自由に選べる商品なら、オリジナルの配色も可能です。
角型や丸型など、形も色も種類が豊富。少々ふぞろいな形や色合いが魅力の天然石のモザイクタイル、透明感や光沢感が美しいガラスのモザイクタイルなど、個性的なモザイクタイルも登場しています。デザインの自由度を生かして、洗面カウンターなどの表面仕上げに使うのも素敵ですね。
多機能性が魅力の多孔質セラミックス(エコカラットプラス)
近年住宅に普及してきた新しいタイルが、「多孔質セラミックス(エコカラットプラス)」です。これは良質な空気を保つ目的で開発された壁材で、その名の通り微細な孔(あな)による調湿効果があります。また活性炭のように、嫌な臭いを吸着してくれるので、ペットやタバコなどの臭い対策として好評です。水拭きもできるので、トイレの壁にも使えますね。
空間の印象に影響する「タイルの目地材」にも注目
一般的にタイルには「目地」が入ります。通常は壁タイルより床タイルの方が目地幅は広く、タイルごとにその寸法は、ほぼ決まっています。床用も壁用も目地の色は白、黒、グレー、ベージュなどのバリエーションがあり、タイルの色に合わせて選べます。白いタイルに黒い目地を合わせると、目地のラインが強調されて黒い格子柄の壁面に見えるなど、目地が主役の演出もできます。中には赤・青・緑などのカラー目地も。タイル選定の際には、ぜひ目地にも注目しましょう。
タイルはキッチンや浴室、トイレなどの水まわりはもちろん、最近ではリビングや寝室でもよく使われます。タイルならではのデザインの面白さや機能がどんどんアップデートされて、建物の仕上げ材として少しずつ進化しているように感じます。木、塗り壁、金属などさまざまな素材とも相性抜群のタイルを、ぜひ上手に住まいに取り入れてみてくださいね。