省エネ基準改定(H25)で、基準がQ値からUA値に変わった
今の省エネ基準は、はるか21年前の平成11年の次世代省エネ基準からほとんど変わらずに続いてきたものです。次世代省エネ基準では、地域ごとに適合する住宅かどうかを、床面積当たりの熱損失を示す熱損失係数:Q(W/㎡K)という数値で判断していました。平成25年の改定で、これがUA値というものに変わりました。この定義は後述しますが、要は床面積当たりではなく、換気熱損失を除く熱損失を外皮面積で割ったもので、いわば外皮の平均熱貫流率を示すものです。
なぜそんな改定をしたかというと、プレハブメーカーや大手のハウスメーカーからの陳情があったようです。Q値を計算すると、大きな住宅では楽にクリアできる断熱仕様が、小さな住宅では通らなくなるのです。図1に一例を示しますが、一般に住宅の外皮面積は床面積当たりの比率で見ると、大きな住宅では小さくなる傾向があります。プレハブ住宅などでは、大きな住宅と小さな住宅で断熱仕様を変えることが困難ですから、「不公平」を理由に変更するよう陳情したらしいのです。このほかに、熱交換換気を採用すると換気の熱損失が減って、その分断熱の厚さを少なくできるということもあったようです。これを受けて、換気の熱損失を省いて、熱損失の外皮面積当たりの数値であるUA値に変更されたと聞いています。
しかし、UA値では別な問題が生じます。床面積当たりの外皮面積の大きな住宅では、同じUA値でも暖房エネルギーが大幅に増えてしまうのです。例えば平屋建ての住宅や、L字型・コの字型の平面形を持つ住宅などがこれにあたります。外皮の平均熱貫流率が小さくても、外皮の面積が極端に大きな家では、熱損失量は大幅に増えてしまい、暖房エネルギーもそれに比例して増えてしまいます。また最近ではガラスの進化が著しく、開口部を含むUA値では、窓の性能を上げることが簡単になっています。窓の性能を上げて断熱の厚さを減らすことも可能になります。窓の基準の低い5~7地域では特に顕著です。
住宅を高性能化して省エネルギーを図ろうとすることに対して、Q値やUA値という数値を目安として使うのは、計算が簡単だからでしょう。しかし本来は、暖冷房エネルギーを計算して、直接その数値で判断すべきなのです。ドイツのパッシブ住宅では、床面積当たりの暖房エネルギーを15KWh以下にするという基準で判定しています。私たちのQ1.0住宅も省エネ基準住宅の暖房エネルギーに対する比率を地域ごとに定めて、そのレベルを判定しています。これを採用しなかったのは、暖冷房エネルギーの計算がとても面倒だったからでしょう。