19世紀末頃から20世紀初頭にかけてヨーロッパ中に大きな影響を及ぼしたブーム〈ジャポニズム〉は、日本の芸術や伝統工芸の素晴らしさにヨーロッパ諸国が気付いた証でもあった。その源となったのは浮世絵や漆器、根付、陶器などであり、それらは博覧会を通じて多くの人々を驚愕させた。その頃に生まれ現在に至るまで製品化され続けているものもある。例えばデンマークのロイヤルコペンハーゲン社の陶器やジョージ・ジェンセン社の銀製品である。数年前、コペンハーゲンの国立デザイン・ミュージアムで開催された〈ラーニング・フロム・ジャパン=日本から学ぶ〉展は企画展にもかかわらず、あまりにも好評であったため2年間の会期をさらに1年間延長したほどであった。デンマークの芸術やデザインがいかに日本からの影響を受けていたのか、改めて自らの文化を見直す機会ともなった。
一方、欧米から来日し、日本の建築やデザイン、工芸の分野に大きな足跡を残した人達がいる。民芸運動の柳宗悦や濱田庄司らと交流のあったイギリス人陶芸家、バーナード・リーチや、建築作品を残したアメリカ人のフランク・ロイド・ライトやドイツ人のブルーノ・タウト、チェコ出身のアントニン・レーモンドがいる。
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今回紹介するフランス人のシャルロット・ペリアンも1940~42年にかけて来日、当時の商工省からの依頼で輸出用の工芸品の指導が主な目的であった。柳宗理の案内で東北をはじめ、日本各地に伝わるそれぞれの地域に根ざした暮らしや伝統工芸に触れ、深い感銘を受けつつ、様々なアドバイスを行った。1941年には東京と大阪の高島屋で〈選択・伝統・創造〉展を開催、この展覧会は日本のデザインや工芸を外国人の視点で捉えたことで意義深いものである。
写真の〈トウキョウ シェーズロング〉は来日していた頃にデザインされたものだ。ル・コルビュジエやピエール・ジャンヌレとの合作と言われるスチールパイプフレームの〈LC4シェーズロング〉をリデザインした作品といえる。
日本の伝統工芸に見られる竹細工からヒントを得たのだろうか、彼女は日本滞在中に竹を使った椅子を7~8タイプ制作している。写真のモデルの発表時にはシート部に藁で編んだマットとヘッドレストがセットされていた。
もともとLC4のプラン段階の図面を見ると、フレームは曲木を使い、シート部分は籐張りを前提としていたことを考えると竹を使うことに抵抗はなかったのかも知れない。いずれにしてもペリアンが日本人のもつ美意識や、質素・簡素を重んじる価値観に魅せられ学んだことは少なからずあったのだろう。
翻って我が国の現代の暮らしを見たとき、衣・食・住の総てが価格訴求のファストな製品に溢れた生活文化となっていることに愕然とする。私達は安さや便利さ、快適さを求めるあまり大切なものを失ってはいないだろうか。経済大国となった今だからこそ、この作品が生まれた頃のものの在り方や価値観、生活文化の高さに想いを馳せてみてはどうだろうか。
■トウキョウ シェーズロング
メーカー:Cassina(カッシーナ)
素材:フレーム・台座=バンブー材・ナチュラル塗装仕上。または、チーク材・ナチュラル塗装仕上。シート・ヘッドレスト付。張地は専用ファブリック(全2色)よりセレクト可能
サイズ:W655㎜×D1500㎜×H650㎜
価格:770,000円~(税別)
<問い合わせ先>
カッシーナ・イクスシー札幌営業所
https://www.cassina-ixc.jp
TEL 011-590-1935