以前ウェブマガジンに掲載した2階リビングの記事、「お気に入りの眺望を住まいの一部に。「2階リビング」の工夫」と「1階ガレージで敷地を有効利用!都市部でおすすめ「2階リビング」実例集」では、広々とした2階LDKの住まいの実例が主でした。
今回ご紹介するのは、リビングとダイニング・キッチンをひとつの大きい空間とせずに別の階に配置したり、床レベルを変えたりした2階リビングの家。なぜそのようなプランニングになったのか、それぞれの住まいならではの理由に注目です!
敷地は5mの高低差のある傾斜地
スキップフロアのL/DK
新居の建築にあたりHさんが見つけた土地は、背後に森や山、目の前には市街地のビル群という山裾にある眺望の良い土地でした。しかしその敷地は旗竿・傾斜地という難しい条件。そこで選んだのは、高低差はそのままに旗竿部分に桟橋を設け、2階玄関へのアプローチにするプランでした。玄関はフラットに2階リビングにつながり、そこから高低差を生かしたスキップフロアで4層のフロアが続く空間構成となっています。
道路側に面したリビングは、プライバシーとくつろぎ感を重視し窓は小さめにし、1段下がったところに配したダイニング・キッチンは、Hさんお気に入りの眺望が楽しめる向きなので、大きな窓を設けています。
土地の高低差によりスキップフロアで分離されたリビングとダイニング・キッチンですが、そのおかげでメリハリのある暮らしの空間が実現しました。「ダイニングとキッチンを分けるテラスに座って、刻々と変わる空の色を眺めるのも楽しい」と話すHさんの言葉から、新居での豊かな暮らしがうかがえます。
半屋外テラスとつながるDK
2階リビングはプライベート空間
建物の真ん中にある家の形をした半屋外テラスが特徴的なMさん宅。このテラスを介して、一方にフラワーアレンジメントの仕事をする奥さんのアトリエ、もう一方にダイニング・キッチンが配置されています。
コンクリートタイルを敷き込んだ半屋外テラスは、奥さんの作業場であると同時に、ある時は家族のセカンドリビング、またある時はお子さんたちの遊び場や来客のおもてなしの場として活用するなど、自由度の高い空間です。
仕事と暮らしが一体化した1階に対し、2階はリビングや個室を配置した完全なプライベート空間。Mさんご夫妻は共働きで、リビングは一緒に使う時間が比較的少ないためコンパクトに。その分家族の衣類などの収納スペースを確保しました。Mさん宅では、仕事とプライベートの両立を考えて、自分たちのライフスタイルに最もふさわしくて使いやすいプランを実現していました。
床レベルの違うL/DK
2階リビングは竹林を望む特等席
祖父母の家が建っていた場所に建てられたHさんご家族の新居。幼い日々を過ごした想い出の場所だけに、建て替えにあたっても元の家と同じく約2.5mの高低差のあるい地形を生かした家にしたかったといいます。
その条件から、プランは大きなボリュームとなる2階にLDKと水まわり、コンパクトな1階に寝室と子ども部屋という構成に。さらに2階は玄関に近いキッチン・ダイニングよりも、リビング・水まわりの床レベルを高くしました。
L/DKで床レベルを変えたのには理由があります。Hさんの原風景ともいえる竹林を、リビングと浴室の窓から一望できるよう設計されているのです。その分リビングは、ダイニング・キッチンより天井高が低くなっているので、落ち着きのある空間に。逆に1階のテラスは天井が高くなり、さらなる開放感を感じることができます。土地の記憶を守りながら、豊かな暮らしを育んでいるHさんご家族の住まいです。
今回紹介した3事例は、どれも変形地に建つ住まいです。広々とした一体型のLDKは開放感があり、施工コストの面でも有利ですが、変形地という土地条件やライフスタイルなどによっては「眺望を生かせる」「空間の使い方にメリハリが出せる」など、LDKを分けることによるメリットもあります。その点、「2階リビング+1階orスキップフロアでダイニング・キッチン」という間取りは、高低差や狭さといった土地条件がネックになりうる変形地と、相性が良いのかもしれません。
建築しやすい土地探しはもちろん重要ですが、変形地でも工夫次第で暮らしやすい住まいを実現できます。そう考えると、土地条件やライフスタイルなどを総合的に見て、柔軟なプランの提案で豊かな暮らしに導いてくれるパートナー探しも、家づくりではとても大切ですね。
(文/Replan編集部)
こちらも併せてご覧ください↓
・変形地でもメリットを発揮!スキップフロアの間取り集
・変形地だからできた!自分たちらしい家