家の心地よさは「デザイン」「温熱環境」「スムーズな動線」「空間のサイズ感」「収納スペースの位置やボリューム」等々、住まい手の感覚に応じたさまざまな要素で成り立っています。
そんな数ある家の心地よさを決める要素の一つで、意外と重要なのが「周囲の景色を上手にとり込んだ設計」です。豊かな森に囲まれていたり、目の前に海が開けていたりすれば理想的ですが、日常生活や通勤・通学の利便性も大事。ロケーションの良さだけでは、なかなか住む場所は決められませんよね。
でも、周囲がそこまで自然豊かな環境でなくても、近所の公園の木や、敷地内に植えた庭木、空などの身近な自然の生かし方次第で、心地よい住空間はつくれます。それが例えばどんな家なのか。今回は「窓」の配置やかたち、サイズの工夫で、周囲の自然を家の一部に上手にとり込んだお住まいの例をご紹介しましょう。
頭上に広がる「空」を、家の一部に
建築地が住宅街の中だと、周りに緑が少なく隣の家も距離が近いので、自然を感じる生活を諦めてしまう方も多いでしょう。それでも各家の頭上に等しく広がっている「空」なら、家の一部としてとり込めるかもしれません。
リプランの取材先でよく見るのは、ハイサイドライト(高窓)を効果的に使ったお住まいです。敷地から見て空が抜けている方向があれば、その向きにハイサイドライトを設けることで、外からの目線を気にすることなくいつでも空が楽しめます。また、屋根にトップライト(天窓)を設けるのも方法のひとつ。雨仕舞や日射、メンテナンス性などを考慮する必要はありますが、いつでも空が見えて採光にも役立ちます。
その日の天気や時間帯、季節によって常に変化する空が目に入ることで、家のなかの閉塞感が薄れ、より心地よい住空間になるのです。
周囲の「緑」を、家の一部に
並木道や木のある公園がすぐ隣にあるなら、その環境を生かさない手はありません。周囲の緑を上手にとり込む方法のひとつは、窓の位置を高めにして、室内から斜め上方向を見たときに、木々の緑が切り取れるように設計することです。そうすれば、歩く人や木の下を通る道などを視界に入れることなく、身近な自然を日常的に感じられます。これなら自宅に庭がなくても、借景で十分に緑を楽しめますね。
周囲の緑を上手にとり込むもう一つの方法は、2階リビングの間取りにすることです。木は高く育って大きく茂るほど、上のほうに枝葉が広がります。その点、2階リビングにすると掃き出し窓や大きなFIX窓をつけて緑を楽しみやすくなります。生活のしやすさやその他の環境的な条件などまでトータルに考える必要はありますが「周囲の緑をとり込む」という観点からは有効です。
ちなみに、こちらのお住まいは住宅地の一角ではありますが、隣が公園で桜が立ち並ぶ絶好のロケーションでした。「桜を楽しめる家にしたい」。そんな住まい手の願いを叶えた2階リビングは、横長の窓の外に桜の枝葉が広がる設計。春は桜の濃いピンクに、夏は爽やかなグリーンに、秋は鮮やかなオレンジに室内が染まり、四季折々に彩られる豊かな暮らしの場を実現しています。
建築地の条件に合わせて窓の配置やかたち、サイズなどを柔軟に変えて設計できるのは、注文住宅の大きな魅力です。ステイホームの期間を経た今は、家のなかの居心地の良さについてじっくりと考えるいい機会。家づくりを検討される際にはぜひ建築家や建築会社の担当者に相談しながら、空や周囲の緑のとりこみ方についても考えを巡らせてみてください。家時間が、もっと好きになるかもしれませんよ。
(文/Replan編集部)