狭小地に多角形の土地…変形地に建てた住宅実例4」では、「狭小地」や「多角形」といった変形地に建てた家をご紹介しましたが、変形地の種類はほかにもあります。そこで今回は「旗竿地」や敷地内の「大きな高低差」を上手に生かした4つのお住まいをご紹介します。


【狭小】【多角形】【旗竿】
まるで土地と建物が一体化。
擁壁の上の平屋

■延床面積/90.94㎡(約27坪)(テラス含まず)
■家族構成/夫婦30代

東日本大震災後に築造された擁壁の上にある変形地を、建築場所に選んだKさんご夫妻。「基礎が干渉しないようセットバックすれば建築できる」と考えた建築家が設計したのは、あたかも土地と一体化したような、オブジェのごとくデザインされた平屋でした。

擁壁の上にオブジェのように建つ平屋・土地と建物に不思議な一体感がある
擁壁の上にオブジェのように建つ平屋・土地と建物に不思議な一体感がある

建物が擁壁に干渉しそうな部分は、半外部のテラス玄関ポーチを跳ね出しの基礎や庇でつくって擁壁の際まで近づけました。室内は「見晴らしの良い丘に立つ感覚」をワンルームの空間で実現すべく、書斎→リビング→ダイニング→リビングテラスへと緩やかな階段状につながるようにレイアウト。この場所ならではの眺望を日常にとり込んでいます。「一見、家づくりに向かなそうな土地条件も、強みに変えることができるんだ」と実感させられるお住まいです。

旗竿状の通路から階段を上り、玄関アプローチへと続く。基礎を跳ね出すことで、建築条件をクリアしている
玄関を入ると書斎スペースが広がる。大きな窓に沿ってコンクリート造のカウンターが伸びる

書斎から階段状のリビング、ダイニング・キッチン、リビングテラスへと空間が緩やかに連なる
擁壁の上という敷地の特性を生かし「見晴らしの良い丘に立つ感覚」を住まいにとり込んでいる

■設計/Ginga architects
■施工/(株)T-plan
Replan東北 vol.59

【高低差】
高低差約4mの斜面を、そのまま生かした2階建て

■延床面積/115.94㎡(約35坪)
■家族構成/夫婦30代、子ども2

「高低差がかなりある土地で家を建てると、かなりお金がかかりますか?」。Mさんが建築家にそう相談したのは、敷地内に約4mもの高低差がある土地でした。地面を削るか土を盛るかして平らに造成することもできましたが、費用の点と周囲の景観への配慮から地形を生かして、斜面に建物をあてがうイメージで計画することになりました。

約4mにもなる高低差を上手に生かして設計されている

敷地は南北の両面で道路に接していますが、よりアクセスの良い北側の道路からアプローチできるよう設計。2階建てと平屋をL字に組み合わせたようなかたちが導き出されました。室内は十分な広さがあり、2階リビングからは街並みと斜面越しの庭、両方の眺望が楽しめます。高低差があるこの土地ならではの変化に富んだお住まいとなりました。

北側の道路面から見ると、一般的な総2階建ての住宅に見える。敷地内には2台分の駐車スペースも設けた
2階に配したLDKは、南北の2面に窓があって明るく、風通しも眺望も良い

洗濯室と子ども室は、地形に沿うようにスキップフロアでLDKとつながっている
南側の斜面上から見たところ。ちょうど洗濯室のあたりが宙に浮くような設計になっている

■設計/市川設計スタジオ
■施工/信和建設(株)
Replan東北 vol.51

【狭小】【高低差】
前面道路から3.5m下がる
変形敷地で叶えた豊かな暮らし

■延床面積/94.45㎡(約28坪)
■家族構成/夫婦30代、子ども1

Fさんご夫妻は「家を建てるなら高台に」と決めていました。見つけたのは、古家付きで前面道路から3.5m下がり、建築可能面積が約36坪というコンパクトな土地。このちょっとクセのある地形に対して建築家は、前面道路からアプローチできるようブリッジをかけ、2階の玄関からそのままLDKにつながる設計で、立地の難点をクリアしました。

前面道路からアプローチできるようブリッジを造設。2階の玄関からそのままLDKにつながる
前面道路からアプローチできるようブリッジを造設。2階の玄関からそのままLDKにつながる

「約3.5mの大きな高低差」という土地の制約は、スキップフロアで解決。玄関からすぐのダイニング・キッチンやリビングからはパノラマ状に景色が広がり、縦方向に各スペースを展開することで、小さくても開放感のある暮らしの場が生まれました。陽の光を浴びて輝く山並みや夕焼け空、夜に瞬く街灯りといったこの土地だからこその豊かさが感じられる、Fさんご夫妻が望んだとおりのお住まいです。

眺望が開けたリビングやダイニング・キッチンは、居心地のいいカフェのように落ち着く空間。窓の外には、もともと植わっていたサクランボの木の葉がやさしく揺れる
道路や隣家に面した採光窓は、視線が気にならない位置にレイアウト。換気用の小窓も設けた
ダイニング・キッチンの下が子ども室。すべての部屋がオープンにつながっていて、どこにいても家族の気配が感じられる

設計/(株)エム・アンド・オー
Replan北海道 vol.109

【高低差】
なだらかな勾配に沿わせた設計で、大地との一体感を

■延床面積/149.42㎡(約45坪)
■家族構成/夫婦30代、子ども3

十勝の雄大な景色を堪能できる広々とした敷地は、南東から北西に向かって緩やかに傾斜していました。建築家は、このわずかな高低差が生むなだらかな勾配を「敷地の魅力」と捉えてこの家を設計したといいます。

室内の高低差は最大で1.3m。敷地の緩やかな傾斜に合わせてスキップフロアでつながっています。子どもたちからの「とにかく面白い遊び場のような家」という要望を織り込んでデザインされた複雑な内部空間や、上り下りに応じて微妙に変化する窓の外の風景が日々五感を刺激し、心身ともに健やかな暮らしを育んでくれそうです。

南東側の外観。正面から見ても、わずかに傾斜している土地であることが見て取れる
1階のリビングからキッチン方向を見たところ。敷地の形状に沿うように、奥へ進むほど下がる設計で、家の両サイドの動線が家族の行き来をスムーズにする
斜めのつくりは、ロフトの天井にも表れている。不規則なかたちや複雑な空間構成が、住まい手の五感を日々刺激する

設計/浅香建築設計事務所
施工/紺野建設(株)
Replan北海道 vol.109

変形地の家づくりを特集したReplan北海道vol.127は現在北海道内の主な書店やコンビニ、オンラインで絶賛発売中!そして来週2020年1月21日(火)には、同じテーマで東北各地のお住まいを取材したReplan東北vol.67も発刊となります。家づくりのリアルな経緯や声を、ぜひ参考にしてくださいね。

(文/Replan編集部)

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