札幌は桜の季節があっという間に過ぎ去り、新緑が日に日に深まっていますね。歩道や周辺の家の庭先にも色とりどりの可愛い花がたくさん咲いていて、心が和みます。最近は「手入れに手間がかかるから」と庭をつくらない家も増えていますが、とはいえ、暮らしの中に緑があるのは気持ちいいもの。そこで今回は庭やインテリアグリーンなど「緑」を取り入れた住まいの実例から、緑のある家づくりのヒントを探ります。
1本の木が風景を変える。
小さな家の小さな庭
「つくり込まれたガーデンや庭園ではなく、雑木林のようなさりげなさが好き」。そう話すお施主さんの要望に応えてつくられた、広さ約28坪という小さな家の小さな庭。マットグレーのガルバリウムの壁で囲われた小さなインナーガーデンには、シンボルツリーとなるアカシデと、アオダモ、アジサイといった厳選した樹木が植えられています。
地面には、ふぞろいなかたちの札幌軟石の敷石をパズルのように組み合わせて埋め込みました。植物の色数を絞った庭は敷石の風合いと相まって、まるで昔からそこにあったように静かで馴染みよい佇まい。この庭の中では、幅広のウッドデッキが縁側のような心地よさを感じさせます。
この家が建つのは住宅密集地の一角、五角形の変形地でした。土地の面積も約40坪と、広い庭を確保するのは難しい条件ながら、五角形の対角の奥へと視線が抜けるよう中庭を配置することで、敷地や建坪のコンパクトさを感じさせない緑と暮らす家になりました。
お施主さんのお気に入りは、階段越しに中庭を望むキッチンからの眺め。周りが囲われていることもあり、もはや庭が家の一部といった感じです。
北海道をはじめとする雪国では、雪囲いなどの冬の対策は必要ですが、窓の外に木が1本あるだけで風景は変わり、気分も変わります。そこまで気負って「庭をつくりこまなきゃ!」と思わなくても、厳選した植物だけで素敵な庭をつくれることが、このお住まいから分かりますね。
玄関土間から木が生えてる?
緑を楽しむ工夫がいっぱい
家が狭くても、緑を楽しみながら暮らす方法はいろいろあります。こちらのお宅には、緑を楽しむ工夫がたくさん。まず玄関に入ると、陽射しが降り注ぐコンクリート土間で、シマトネリコがのびのびと枝を広げています。これは土間から木が生えている…というわけではなく、鉢植えを置けるよう土間に細工をしているのですが、とても面白いアイデアです。
この家は、四方をマンションや住宅に囲まれた旗竿地に建っています。しかも広さは約30坪。そんな限られた条件の中で「緑を楽しむ暮らしをしたい」というお施主さんの願いを叶えるため、吟味して選んだいくつかの窓と対をなすように緑を配し、自然に日常と一体となるような仕掛けが施されています。
例えばキッチンの上部、屋上に設けた地窓に沿って小さな緑たちが並んでいますが、これがあるのとないのとでは、部屋の印象はだいぶ違って感じられるでしょう。
外まわりは敷地にゆとりがなかったものの、コンクリート基礎の一部を使って植栽スペースを設け、ナツツバキを植えました。白いガルバリウム鋼板の外壁に、鮮やかな緑が映えてきれい。吹き抜けの玄関土間からも窓越しにこの木が見えて、緑がより身近に感じられます。この木の成長を見守るのも、家を建てて暮らす楽しみのひとつになりそうですね。
インテリアグリーンの
居場所をつくる
「緑は欲しいけど、庭はちょっと…」という方やマンション住まいの方は、新築やリノベーションのプランニングの際に、インテリアグリーンや生けたお花を飾る場所を考えてみるのもひとつの手。
「選び抜いた観葉植物で、室内をアーバン・ジャングル化させるのが夢」というこちらのお住まいは、リノベーションを機に、インテリアグリーン専用のインナーテラスを設けました。日当たりがよい窓辺の一角の床をタイル張りにし、水やりや手入れがしやすい環境をつくっています。インナーテラスとLDKの境界に立てたパーテーションのような造り付け棚も、インテリアグリーンをディスプレイするのにぴったり。
花を生けるだけでも、家のなかの潤い感が違います。こちらのお住まいの奥さんは、以前華道を嗜んでいたこともあり、マンションのリノベーションにあたって「生けたお花を飾る場所をつくりたかった」といいます。
そのため季節の花をディスプレイする棚を製作。スポットライトがその存在感を際立たせます。花を飾れる場所って家の中で意外と見つからないので、意識的に「この場所!」というのを想定しておくと、花や観葉植物を飾る習慣ができやすいかもしれません。
このように本格的に何かしようと思わなくても、プランニングのときのちょっとした工夫で、緑のある暮らしは楽しめます。自分らしい緑を取り入れた家づくり、皆さんも考えてみてはいかがですか?
(文/Replan編集部)