屋根なりの天井で室内空間を最大限に活用。床から天井までの高さは、一番高いところで3.4m、低いところで2.4mほど。水平方向の視界が広いので、窮屈さはまったく感じない。窓は主な用途が明確化されており、右端が通風用、その隣の2枚は採光用、左端は庭への出入りのためのもの

細い道の奥にある高台の土地。車通りが少なく見晴らしが良いことはもちろん、ご近所さんたちの関係性に惹かれて、この土地に決めたといいます。建てられた平屋は、軒の低い控えめな印象のフォルムで、これまで周囲の家々が享受していた環境が変わらないように、という配慮が込められています。室内は廊下や階段がないため、27.5坪でもまったく狭さを感じさせません。夏は深い軒で涼しく、冬は薪ストーブの火を囲み、家族が同じ意識の中で暮らす。自然でシンプルな暮らしが実現しました。

◎家族構成:夫婦、子ども1人
◎構造規模:木造・平屋建て
◎設計:(株)フーム空間計画工房 一級建築士事務所
◎施工:原田組

リビングと奥の寝室は収納で間仕切っている。天井付近を開放して奥行きを出し、ゆとりを生んでいる

家の中心にどっしりと構える大黒柱。この先何十年と新たな持ち主たちを見守り、家族の思い出が刻まれていくのだろう
木、レンガ、石こうの塗り壁など、月日とともに緩やかに味わいが深まる自然の素材を用いた室内。キッチンも既製品ではなく、製作とすることでコストも抑えられている

鬱蒼としていた敷地の裏側は採光のため少しだけ間伐し、木は薪ストーブの燃料に。窓の向こうには、函館の街と空が遠くまで見渡せる

玄関を入るとまず広い土間。建物の住宅性能を高めているので、間仕切りのないオープンな空間でも家全体が暖かい。土間に蓄えられる熱も室内環境の快適性に一役買う
土間は室内として扱い、右に子ども部屋、左に寝室がある。冬は蓄熱により暖かく、夏はひんやりと心地よい

木々が繁る傾斜地に向かって開口を設けた浴室。天井と壁の仕上げにヒバ材を使用している

施工を担当した原田組が保管していた波板ガラスが正面トイレのドアに使われたり、古い板材がキッチンの飾り棚に使用されたりと、古いものと新しいものがうまく共存している
寝室。だんだんと天井が低くなっているが、寝ることが主となるため、むしろ落ち着く空間

9m×10mの正方形に近いフロアを持つ、コンパクトな平屋。この地にもともと建っていた家も平屋だったそうで、手前にも家がある密集地のため、圧迫感を与えない形態となった