目の前は緑あふれる公園で視界を遮るものがない絶好のロケーションを生かすため、2階のどこにいても窓の外に広がる風景が楽しめることを優先してレイアウトされた住まい。「家族の気配を感じつつも、調理に集中しやすいキッチンにしたい」という要望を踏まえたキッチンは、ダイニングや窓面に向かって開きつつも、ほどよく閉じた半独立型の空間となっています。

◎家族構成/夫婦40代・30代、子ども1人、猫3匹
◎構造規模/木造・2階建て
◎設計・施工/(株)ミズイロアーキテクツ 一級建築士事務所

Sさんの念願だったウッドデッキは、広さ22㎡超。床高を屋内よりも90㎝下げてあり、物を置いても視界が遮られず、階段はベンチとして使える

階段を挟むようにキッチンとダイニングをレイアウト。カラフルな壁やダイニングテーブルの天板は、DIYが好きなSさんが自ら塗って仕上げた

2階の壁際に配した細長いキッチンは、下がり壁と収納カウンターで仕切られた半独立型。調理台は壁付けで、料理や片付けに集中しやすい環境を整えた。ダイニングテーブルが階段の上をまたぐ大胆な設計は、葛西さんの提案で実現。独立性の高いキッチンとオープンなダイニングとの一体感を高めている。

ポップでカラフルなリビング・ダイニングとは対照的に、キッチン内はラフな素材感を生かしたグレートーンでコーディネート。キッチンのステンレス、壁の硬質木片セメント板、ガスレンジまわりのメラミン樹脂、造作棚の合板と異素材が心地よく同居している。
自由度の高さが魅力の造作。食器用の吊り戸棚、対面カウンター下の家電や食器などの収納棚、パントリーの棚はすべて、収納するものに合わせて棚の数や高さを変えられる仕様に。葛西さんが「建築と家具の中間」と位置づけるダイニングテーブルは、階段照明用の天井の役割も果たす。
階段を上りきると左手にパントリーの出入り口があり、買って来た食材などをそのまま収納できる。生鮮品は、パントリーを抜けてキッチンの冷蔵庫へ。パントリーを絡めたLDKの回遊動線が、1階との行き来や家事をはじめとした日常的な動きやすさにつながっている。
家族3人と猫3匹が一緒に暮らすSさんの家には、各々にとって居心地の良い場所が、ナチュラルに散りばめられている
玄関に入って左手に寝室。家族が使うトイレには、猫用トイレのスペースを併設した。洗面・脱衣室の壁の小さな穴を通って、猫たちは自由に行き来できる
コンクリート土間を敷設したゆとりの広さの風除室は、これから使い方を考えていくのが楽しみな余剰空間
桜の木が立ち並ぶ目の前の公園に向けて2階を大きく開いたSさん宅。正面開口部の、無垢材を用いた格子状の意匠が印象的だ