立地条件を生かし、田んぼのある西側に大きく開いたAさん宅。駐車場のある東側とは印象の異なる外観にデザインの二面性が感じられる。春の田植えから秋の収穫まで、日々少しずつ姿を変える田園風景に、季節の変化を身近に感じるようになったというAさん。縁側テラスや庭先に姿を見せるカエルなどの生き物にお子さんも興味津々で、家族で自然に親しんでいる

美しい山並みと広々とした田園風景を一望できる土地に建つ、ケーキ店を併設した住まい。家の東面に沿ってまっすぐ続く「通り土間」が、店舗からLDK、玄関、寝室、裏口までを一直線につないでスムーズな生活動線を実現するとともに、玄関とLDKが一体化したオープンなつくりは「誰でも気軽に訪ねてほしい」というご夫妻の希望も叶えています。

◎家族構成/夫婦30代、子ども1人
◎構造規模/木造・2階建て
◎設計/(有)ハコプラスデザイン

小さな住宅地の旗竿地にあるAさんの住まい。景観になじむシックな佇まいが目を引く。向かって右側に奥さんの営む小さなケーキ店を配した

縁側テラスは、LDKとつながるアウトドアリビング、部屋同士をつなぐ外廊下、物干し場、子どもの遊び場など、さまざまな役割を担う

家の北側に位置するお店から、中央の玄関を通って南側の裏口までをつなぐ「通り土間」が、この家の生活動線の要。玄関に入って右方向(写真手前)は、壁面がテレビ台を兼ねるなどリビングの一部としても機能している。左方向(写真奥)は壁面を外まわりで使う道具などの収納スペースに。寝室から土間への出入り口や裏口を設けることで、Aさんの生活のしやすさを支えている
奥さんの夢だったケーキ店「ほほ晴れ」は、およそ1.5帖強の小さなお店。その中で設備を整え、保健衛生上の営業認可も取得した。カウンターに用いた淡いブルーの大谷石が、空間のアクセントに
LDKの窓の外のパノラミックな景色を妨げないよう、サッシができるだけ柱の影に隠れる設計に。農道は人通りがほとんどないため、カーテンのないオープンな暮らしが可能
キッチンは、料理が大好きという奥さんが多くの時間を過ごす大切な場所。キッチンの収納棚はすべて、使い勝手や清掃性を考慮しながら中に入れるものに合わせて造作した
家が高台に建っているため2階からLDK方向を見下ろすと、まるで田んぼの上にいるかのような不思議な浮遊感がある
西側の大きな窓のほか、東側の土間上部と2階のブリッジホールの窓からの2面採光で悪天候の日でも十分な明るさを確保。窓の配置によって空だけが見え、安心感と開放感を増している
ソファの代わりも兼ねてLDKの一隅に設けたデイベッドスペースは、適度なこもり感と家型のデザインが魅力。小上がりにマットレスを敷き、リビングの一部としてはもちろん、夜勤明けのAさんの昼寝やお子さんの遊び場など、家族みんなが多目的に使える。また壁面を生かして収納棚やカウンターを造作。図書室やワークスペースのような使い方もでき、コンパクトながら家で過ごす時間の楽しみと快適さを広げる空間になっている
掃き出し窓からの光で明るく気持ちがいいユーティリティ。縁側テラスとつながっているため洗濯物の外干しもスムーズで、急な雨でも取り込みやすい
水まわりと切り離して廊下の一角に設けた洗面は、玄関やLDKの近くにあって帰宅後の手洗いもしやすい。その横には階段下のデッドスペースを生かした収納スペースを確保
2階はブリッジホールを挟んで両サイドにフリースペースを配置。「いずれは寝室を子ども部屋にして、フリースペースを夫婦の寝室にしてもいいと思って。使い方を柔軟に変えていけるのがいいですね」と奥さん
2階北側のフリースペースのピクチャーウィンドウ。この地域ならではの棚田の風景を切り取り、住まいを彩る