電気新プランへ、全国チェンジ
電力の自由化を境に、自分の住む地域でどのプランがトクになるかが分かる比較サイトがいくつも登場してきています。筆者も早速、そのうちの1つ「エネチェンジ」を試してみました。
電気の使い方によっても自由化の恩恵は違うので、月に1万円(年約12万円)電気を使う「並」と2万円(年約24万円)使う「多」の2パターンで試算しました。結果を全国10地域ごとに、1kWhあたりの単価に計算したものを図7に示します。
生活条件は「日中は家族の半分が滞在」「週末の半分は外出」「深夜電力利用機器なし」であり、いずれも深夜電力を想定しない、通常の電灯契約のイメージです(推定された時間比率は昼60%・夜40%)。また単純な電気代だけでなくポイントなど付加サービスの価値も含んでいるので、参考程度で見てください。
たくさん使う人ほどトクになる
まず全体的な傾向として全国いずれも、たくさん電気を使う「多」の方が割引率が大きくなっていることが分かります。元々の電力料金は生活者保護と省エネ促進のため、たくさん使うほど割高になるように設定されていました。新プランにおける割引の原資の多くは、この多消費部分の「上乗せプレミアム」なのです。そのため、元々消費量を節約していた人たちには、今回の値下げの恩恵は限られてきます。
住む場所で損得が決まる?
次に気づくのが、地域差の大きさです。まずリストアップされる候補の事業者数自体が大きく異なります、市場が大きく新規参入が多い東京では11社・近畿の9社が多い一方で、四国は2社・沖縄は1社に過ぎません。
割引率や割引後の電気単価の地域差も大きくなっています。特に九州の割引率の大きさが目立ちます。地元の新電力(ナンワエナジー)が随分がんばっているようです。東京・中部・近畿の大都市圏も多くの参入者間で競争があるためか、特に多消費の場合に新プランの割安感が感じられます。逆に北海道は元々割高で、新プランでも全国で最も高くなってしまっています。
このように4月からの電気新プランでは、すでに地域格差が顕著になっています。今後、地域ごとの人口や経済状況が変化する中、こうしたエネルギーの「地域格差」がより大きくなってくることは避けられないでしょう。
変わる電気、まず家で頑張ることは何か?
今回は、戦後60年の電気の歴史、そして4月からの電力自由化から見える電気の未来についてザッと見てきました。所得や電気の使い方・地域により、見えてくる未来の明るさには随分差がありそうです。この差は今後、さらに深刻化する可能性が少なくないように思われます。
エネルギーへの関心の高まりからか、住宅分野でも最近ではゼロ・エネルギー・ハウス、通称ZEH(ゼッチ)の話題が多く聞かれるようになりました。そうした議論にも、所得や地域の問題は大きな影を落としているように思われてなりません。次回は、今回の電気の問題から発展して、このZEH問題について考えてみることにしましょう。
※次回のテーマは<ゼロ・エネルギー住宅ZEHってすごい家?>です。
【バックナンバー】
vol.001/断熱・気密の次の注目ポイント!蓄熱大研究
vol.002/暖房の歴史と科学
vol.003/太陽エネルギー活用、そのファイナルアンサーは?
vol.004/「湯水のごとく」なんてとんでもない!給湯こそ省エネ・健康のカギ
vol.005/私たちの家のミライ
vol.006/窓の進化
vol.007/断熱・気密はなぜ必要なのか?
vol.008/冬のいごこちを考える
vol.009/電力自由化! 電気の歴史を振り返ってみよう
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