今や世界中から人々が集い、にぎわう、北海道・ニセコ。そこに、山小屋のような素朴な佇まいの薪ストーブ店があります。店主は、一風変わったキャリアを持つ湯口公さん。どんな人生を経てニセコに辿り着き、薪ストーブと出会ったのか。その興味深い道のりと、薪ストーブへの想いを伺いました。

羊蹄山を望む絶好のロケーションに、湯口さんが営む薪ストーブ店はある
羊蹄山を望む長閑な畑作地帯に建つ、北海道リンクアップ ニセコ支店

アラスカで、
極北の空と自然を満喫

実は、かつて湯口さんは、航空自衛隊のパイロットでした。「訓練の機上から見た羊蹄山の神々しさ、緑のみずみずしさ、その向こうに広がる日本海の青。眼下に見えていたニセコの風景は、緊張で乾いた心を潤してくれました」と当時を思い起こします。

やがて任務でアラスカを訪れ、その魅力に触れたのが契機となり、航空自衛隊を退官。ブッシュパイロットとして自前のセスナ機で思う存分、極北の空と自然を味わったといいます。それまでの数々の経験から湯口さんが学んだのは「生きることを楽しむ」ということ。やがて、自身と家族が生きる場所として、自然豊かなニセコを選びました。

北海道リンクアップニセコ支店店長湯口公さん
店長の湯口公さんは、航空自衛隊からアラスカのブッシュパイロットに転身した異色の経歴の持ち主
店内にはアラスカの大きな地図。ピンの数が、飛行した場所の多さを物語っている

薪ストーブがつないだ縁

湯口さんにとってニセコは、山登りや沢登り、フライフィッシング、山スキーなど大好きなアウトドアアクティビティのフィールドとして、若い頃から慣れ親しんだ地。今から6年前には地元の知人を介して、羊蹄山を望む田園に500坪もの土地を購入し、終の棲家としました。

その築40年の住まいの主暖房に選んだのが、アラスカで親しんだ薪ストーブです。これが新たな契機となりました。5年前、薪ストーブを買うために北海道リンクアップの札幌店を訪ね、代表の唐牛宏さんに出会います。話は思わぬ方向に流れ「気づいたら自分自身が薪ストーブを売ることになっていました」。どう転ぶか分からない人生「だから面白い」と湯口さんは笑います。

セルフビルドならではのワイルドな空間に、クワドラファイアが良く似合う
セルフビルドならではのワイルドな空間に、クワドラファイアが良く似合う

薪ストーブの炎は、
今を生きる暮らしの灯

お店を営むことになった湯口さんは、2年がかりで大工さんと一緒に自宅を増築しました。「ニセコの移住者は、どこか自分と似た匂い、ライフスタイルを持っています。いわば、田舎暮らしを楽しむ同志のようなものでしょうか」。そんな湯口さんにとって、薪ストーブは、暮らしを温める大切な道具の一つ。薪ストーブの炎は、今を生きる暮らしの灯だといいます。

大事なのは、単にモノを売るのではなく、自身の体験を生かした提案をすること。お店を営む中では、地元の人やお客さんから教えてもらうことも多く、それがまた楽しい。「僕の仕事は、アウトドアの遊びと、炎のある暮らしをより楽しむための道具選びとアドバイス。そういう変わり種のストーブ屋もまた、ニセコらしいと思います。友達を訪ねるように、気軽に立ち寄ってほしいですね」。

野良猫のハナちゃんが住み着いてしまうほど、居心地の良い店内。ここでは今日も、お客さんと湯口さんが、薪ストーブのある暮らしについて熱く語り合っています。

自ら大工さんと一緒に自宅を増築し、2年がかりで仕上げた店舗は、山小屋のような佇まい
あまりの居心地良さに住み着いてしまったハナちゃん(野良出身で年齢不詳)は、ニセコ支店の看板猫。この姿が、薪ストーブの心地よさを物語っている

薪ストーブ日和 ニセコ
北海道リンクアップ ニセコ支店

北海道虻田郡倶知安町豊岡157-5
営業時間/10:00~18:00
定休日/水曜
TEL 090-9759-0973
http://nisekostove.com
※来店の際は、事前にご連絡くださいますようお願いいたします。