地域密着型工務店として、「お客様ファースト」をモットーに48年。岡田工務店では次世代を見据え、アウトドアを取り入れた住まいの提案に力を入れ始めました。建て主との密な関係の中から生まれた「SOMOSH(ソモッシュ)」の活動と、同社の家づくりに迫ります。

現事務所内畳スペース
事務所内には膝を崩して打ち合わせができる畳スペースを完備。来年度には現事務所の隣に、ショールーム兼カフェスペースや、『SOMOSH』のワークショップが開けるフリースペースも開設予定だ

施主の暮らしを第一に 真に心地よい家を追求

青森県の南端に位置する三戸町。森林や原野に囲まれた自然豊かな地に拠を構える岡田工務店は、1970(昭和45)年に現社長の岡田雄一氏によって設立されました。1988(昭和63)年に法人化され、主に県南部を中心に家づくりを行っています。

事務所内の畳スペースで施主OBの松原さん(左)と談笑する岡田大作専務(右)。和気あいあいとした雰囲気が伝わってくる
事務所内の棚に並ぶ建材の見本。大作専務の「木」への愛が感じられる

同社が目指すのは、構造や性能面はもちろん、意匠や使い勝手、住空間の面まで“真に心地よい”住まい。設計力と意匠性を強化するとともに、つくり手のプロである自社大工を抱え、手仕事を大事にした家をつくり続けてきました。

S様邸

構造・性能面では、設計自由度が高い木造在来工法にダブル断熱を採用。夏は暑く、冬の寒さ厳しいこの地でも快適に暮らせる、気候風土に沿った家を提案しています。

T様邸
T様邸(玄関外)
T様邸(玄関内)

高品質な木を使った家づくりにも定評があり、土台には青森ヒバ、構造体には地元産ヒノキと、使う素材も地産地消を推進。2020年の「住宅の省エネ基準義務化」に向け、ZEHの家づくりにも取り組んでいます。

「昔の家は内と外の境界があいまいで、家の中だけでなく庭も生活空間でした。ですから、家づくりの原点もアウトドアにあるのではないかと思ったんです」と語る岡田大作専務

岡田大作専務は、「家づくりにおいて一番大切にしているのは、お客様の暮らしです」と言い切ります。その考えの原点となっているのは、父である雄一社長からの言葉。「社長からは『お客様と密に関わりながら、良い家づくりに徹しなさい』と常々言われています。その信念は今後もしっかりと受け継いでいきたいですね」。建てたら終わりではなく、施主とはアフターフォローも含め末長く付き合いを続けていく—。その姿勢も、雄一社長の教えが根底にあってのことです。


岡田工務店との家づくり

三戸町・松原健彦さん

夜の帳に映える外観。レッドシダーを強調した家づくりも岡田工務店の得意とするところだ

今から3年ほど前に岡田さんに家を建てていただきました。我ながらこだわりの強い施主だったと思いますが、岡田さんはその一つひとつを汲んでプランに反映してくださいました。また、施工中もちょくちょく現場に呼んでいただき、細部の打ち合わせを重ねたので、「一緒に家づくりをしている」という感覚が強かったです。

(左)床にヤマザクラ、柱や梁にはアカマツをあしらったLDK。玄関から続く土間には薪ストーブが/(右)吹き抜けのリビングは開放感抜群。大きな窓から自分の畑が見渡せるのがお気に入りだとか

松原さんご一家

建てた後もお付き合いは続き、『SOMOSH』の話を聞いた時には「ぜひ一緒にやりたい!」とすぐに名乗りを上げました。これからも工務店と施主という関係に留まらず、『SOMOSH』の活動を通して一緒に地域を盛り上げていけたら、と思っています。


アウトドア志向の家を自社の強みと持ち味に

雄一社長から大作専務へ事業継承が進む中で、大作専務が力を入れ始めたのが、自社ブランディングの確立です。特に、自身が大好きな「アウトドア」を家づくりに取り入れ、自社の強みにしていきたいと考えています。

今話題のテントオフィスを導入する計画も。「建設予定地にテントを立てて、その中でお客様との打ち合わせをするんです。外と布一枚で隔てられた空間の中で、日の周りや風の向きなどを感じながら語らうことで、一緒に家をつくり上げていこうという一体感が生まれるのではないかと思っています」(岡田大作専務)

「例えば、庭でテントを張ってバーベキューができる“キャンプサイトのような外構”だったり、土間スペースやボルダリング壁を取り入れた“家の中でもアウトドアを楽しめる室内空間”だったり…。そんな提案を視野に入れています」。

幸いにも三戸町や周辺市町村は、広い土地を持つ建て主が多いエリア。一定の需要が見込めるのでは、と大作専務は期待を寄せています。

施主との密な関係、そしてアウトドア志向。大作専務は、この2つの要素が絡み合って生まれた地域団体「SOMOSH(ソモッシュ)」の中心メンバーとしても活躍中です。

大作専務と施主OB3名、有志2名という三戸町に居住または勤務する6名で2016年に発足した「SOMOSH」は、「三戸町からアーバンアウトドアを」をコンセプトに、アウトドアにちなんだ多彩な活動を展開。単にアウトドアの魅力を発信するのみならず、アウトドアをこの地域ならではの新たな観光資源としてブランディングし、地域活性化を図っていくことが狙いです。

事務所の一角では「SOMOSH」のロゴ入りオリジナル商品を販売

日常にもっとアウトドアを!「SOMOSH」の活動を紹介

● 家づくりで出た端材を使いオリジナル商品を開発

キャンプ等のアウトドアでの使用をイメージし、ククサやプレートなどをメンバーで製作・販売。無垢の木の良さをエンドユーザーに伝えています。なかでも天然無垢国産杉を使ったリンゴ箱「HAGO(はご)」は、リンゴ栽培が盛んな三戸町ならではの一品。リンゴ箱としてだけでなく、横に置けば棚として、ひっくり返せばテーブルとしても使える優れモノです。さらにメンバーの意見を取り入れ、家具などの開発にも挑戦していく予定です。

親子でできる木工体験等のワークショップの開催

これまでいくつかの町内イベントに出店し、「ミニHAGO作り」「ククサ作り」などの親子ワークショップを開催。モノづくりを通して親子の対話を深めてもらうとともに、木に触れることでアウトドアに親しんでもらう機会を提供してきました。今後は「SOMOSH」主催のキャンプイベントでワークショップを開催するのが目標。作った商品を「使う」場も設けることで、さらに子どもたちのモノづくりへの興味を引き出したいと考えています。

町内イベント出店により木工商品やコーヒーを販売

「名久井岳トレイルフェスティバル2018」「川祭りイベント」「椿山クラフトキャンプ」等にてオリジナル木工商品を販売。こうした町内イベントへの出店を通して「SOMOSH」の知名度を高め、活動内容を認知してもらうこと、ひいては「SOMOSH」オリジナル商品を町の観光資源、特産品として育てていくことが狙いです。「AOMORI COFFEE FESTIVAL 2018」では、挽きたてコーヒーの販売を行い、町民との親睦を深めました。

「今後は施主OBでなくても、活動に興味がある人ならウェルカムです」と語る大作専務。「『SOMOSH』を土台に、アウトドア好きのコミュニティを広げていけたらいいですね」。