ミライの断熱は?

これまで、断熱・気密のしっかりした家の探し方をお話ししてきました。ちゃんとした設計者・施工者の間では、技術自体は概ね確立しているといってよいでしょう。後は広く多くの人に普及していくことが肝心です。

とはいえ、この連載はミライの技術がテーマですから、最後に先端の断熱材として、「真空断熱材」と「エアロゲル」、「エコ断熱材」について触れておきましょう。真空断熱材は、熱伝導の原因となる空気を完全に抜いてしまったもので、ラムダ値で0.002程度と通常の断熱材とは桁違いの性能をもっており、冷蔵庫などに多く使われています。ただしコストは高く、真空を保っている袋が破れれば断熱性能がゼロになるという欠点があります。建築分野で通常の断熱材と置き換えるのは難しいかもしれませんが、スペースに余裕がない既築住宅の断熱改修、熱的に弱くなりがちな開口部の断熱建具などに利用できると期待されています(図9・10)。

図9 真空断熱材は既築改修にピッタリ!
図9 真空断熱材は既築改修にピッタリ!
真空断熱材は熱伝導率ラムダ値がとても小さく、薄くても強力な断熱効果を発揮します。そのためスペースに余裕がない既築住宅での断熱強化に特に向いています。写真は筆者の自宅天井に真空断熱材を敷設した様子です。真空断熱により天井での熱移動が4分の1以下になり、エアコン暖気の熱を留めることで、天井の温度が短時間に高くなっている様子が分かります(パナソニック製真空断熱材を使用)。
図10 窓の断熱強化もお忘れなく
図10 窓の断熱強化もお忘れなく
窓の断熱性は急速に改善されていますが、依然として断熱された壁に比べれば熱は逃げやすいものです。建具の中に真空断熱材を仕込んでおくことで、窓からの熱損失を減らすことが可能です(旭ファイバーグラス製真空断熱材を使用。NEDO太陽熱エネルギー活用型住宅の技術開発プロジェクト OMソーラー 北海道伊達市 小松建設)。

「凍った空気」といわれるエアロゲルも、高い断熱性を誇ります。素材がシリカでもろいのが欠点ですが、光を通すので透光断熱材としての活用もありうるでしょう(図11)。

図11 熱は通さず光を通す「凍った空気」と言われるエアロゲル
図11 熱は通さず光を通す「凍った空気」と言われるエアロゲル。高い断熱を持ち光を通す性質があります。脆いので使い方は難しいのですが、ここではポリカーボネートの部材に封入して、障子風に使っています。

断熱・気密住宅に大事なのは設計と施工の現場力。しっかりと話し合って良きパートナーを見つけよう

最後にもう一度、大事なのは設計と施工の現場力。しっかりと話し合って良きパートナーを見つけ、素晴らしい家を見つけましょう!

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※次回のテーマは<断熱・気密はなぜ必要なのか?>です。

【バックナンバー】
vol.001/断熱・気密の次の注目ポイント!蓄熱大研究
vol.002/暖房の歴史と科学
vol.003/太陽エネルギー活用、そのファイナルアンサーは?
vol.004/「湯水のごとく」なんてとんでもない!給湯こそ省エネ・健康のカギ
vol.005/私たちの家のミライ
vol.006/窓の進化
vol.007/断熱・気密はなぜ必要なのか?

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